お守り
第二騎士団のユージンは別の隊員を呼び、窃盗団は全員再度拘束され、連行された。
アイツらが街に張り巡らされた魔石の一部を壊し、結界に穴を開けた。
そして魔物を街に入れ、混乱に乗じて金品を盗もうと画策していたようだ。
本来魔石は、そう簡単に壊れるものではない。
密売された特殊な器具で魔石を傷つけたようだ。その器具も今は没収され、密売ルートの出所を探ることになりそうだ。
しかしあとは第ニ騎士団の管轄だ。
あいつらは、然るべき罰は受けるだろう。
「ユージンくん!あの指名手配中の窃盗団を、魔物騒動に惑わされずに捕まえるとは……!入隊したばかりにも関わらず、君の判断力、見事でしたよ」
「い、いや……ええと……」
ユージンは、第ニ騎士団のオスカー団長に称賛され、何故か助けを求めるような視線をこちらに送っていた。
「し、しかし、住人の方々を危険に晒してしまいましたし、評価して頂くなんて」
「何をいう。大手柄だ。
それに魔物騒動も素早い判断のおかげで、街の被害はほとんどない。素晴らしい成果だよ」
「そ、それは……僕では……僕ではありません!
第三騎士団ヴァルド・ノイシュタット騎士団長です。彼が迅速な判断で、住人を危険から守って下さいました!」
「……」
オスカー団長がこちらを振り向く。
本来、互いの管轄には踏み込むべきではない。
「……貴方のおかげで、被害は最小限に抑えられました。感謝します。本来なら、第二騎士団が迅速に対応すべきところでした。貴方の功績は称賛に値します。そして、第二騎士団の失態についても、責任をもって報告させていただきます」
オスカー団長は軍帽を外し、一礼した。
ユージンも慌てて同じく軍帽を外して、一礼していた。
「オレは今日、非番だった。
第三騎士団かどうかは関係ない。
護りたいものがあったから、剣を振るった。それだけだ」
オレの後ろにいるアシェもなぜか、小さくお辞儀を返していた。
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街にいた魔物は無事全て討伐され、安全が確認できたので、防御結界が再度展開されたようだ。一部破損箇所があるが、すぐにいつも通りに戻るだろう。
教会にいた人々は徐々に街へと戻って行く。
「あ、アシェくん!ヴァルドさん!
無事で良かった!」
教会から出てきたのはアシェにぬいぐるみを売った店主だ。
「グラッツさん!」
アシェと話をしている。
いつの間にか、仲良くなったようだ。
アシェには人を引き寄せる何かがあるのかもしれないな。第三騎士団の希望の、癒し担当だ。
「ヴァルドさん。そういえば、どうしてぼくの場所がわかったの?」
「あぁ」
アシェのぬいぐるみに括り付けてある、お守り袋をそっと手に取る。
「お守り袋にオレの魔力を入れておいたんだ。
それの気配を追ったんだ」
「そうだったんだね」
アシェは嬉しそうにお守り袋を見ていた。
また抱きしめそうになるが、ここには店主がいる。頭を撫でるに留めておく。
「良かったよ。アシェくんが無事で……!魔除けのお守りのおかげだね。そうだ!このぬいぐるみが、あのヴァルド・ノイシュタット騎士団長の大切な子の命を救ったということにして、宣伝すれば大繁盛……」
「商売魂がたくましいのはいいが、過度な宣伝はやめておけ」
「わ、わかっていますよ」
困惑するグラッツを横目に、アシェは大事そうに抱きしめた。やはりうさぎが似合うな。
「あ、あのね。ヴァルドさん。……ほんとうはあの時、渡したかったんだけど」
アシェはポシェットの紙袋からお守り袋を取り出した。
「ヴァルドさんに魔除けのお守り。
あの時、ぼくのセリカで、買ったんだ」
「……ありがとう。アシェ」
お守りを受け取る。アシェも購入してくれていたんだな。お守りには、金糸がきらりと光っていた。魔力など宿ってはいない。だがアシェの想いがこもっている――それだけで十分だった。




