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危険なこと






胸元で泣きじゃくるアシェを強く抱きしめる。

良かった。本当に。無事で良かった。


何度も、アシェがここにいることを確認する。オレの方が、アシェが危険な目にあっていないか、不安で仕方がなかった。


これほどまでにオレは、いつのまにかアシェのことを――


「ヴァルドさんは、魔物倒して、怪我ない?」


「オレは平気だ。アシェは……」 


涙をぼろぼろと流しているアシェの様子を確認する。しかしアシェの両腕は擦り傷と共に血が滲んでいた。


「?もう、痛くないよ」 


「……治癒魔法をかけよう。1人にしてすまなかった」


「ううん。大丈夫だよ。

ヴァルドさん、怪我なくて良かった!」


アシェはにこりと笑った。

怖かっただろうに。

それでも心配かけないよう健気に振る舞う姿は、なぜだか愛おしく思えた。


しかし――


「アシェ。教会に向かったはずのお前が、どうしてここにいるんだ?」


アシェは涙を拭き、辿々しく説明する。

一緒に行動していた住人と離れたこと。

子供の声が聞こえたので、そちらに1人で無謀に助けに行ったこと。怪しい3人組を見つけたこと。


「…………」


「ヴァルドさん?」


きょとんと首を傾げるアシェ。

言いたいことは山ほどある。全員に。


しかし何もわかっていないんだろうな。

どれだけ危険を冒したのか。


「……アシェは、オレとずっといたいんじゃなかったのか」


「ずっと一緒にいたい……」


俯きながら小さく答える。

そう思っているなら尚のこと――


「だったら、危険なことはしないでくれ!

……心配したんだ」


「ご、ごめんなさい……」


アシェはずっと抱きしめていたんだろう、くたびれたぬいぐるみを小さく抱きしめる。

あの窃盗犯の男に引っ張られ、ぬいぐるみの首の部分が一部裂けて綿が飛び出ていた。


「……ヴァルド・ノイシュタット!

でもアシェは、俺のことを助けにきてくれたんだ。誰も気付いてくれなかったのに……」


初対面の子供にフルネームで呼ばれるとは。

まあいい。

倉庫内で座り込む少年に目を向ける。

上等な服を着ているな。彼の上着に刺繍された紋章。あれは――


「シリル。でも、一緒に行動してた住人の誰かに声をかければ良かった。ごめんなさい……」


助けを求める声を聞いて、放っておけなかったのだろう。

今回は無事で良かったが、自身も大切にすべきたと教えてやりたい。


アシェは義母に大切にされていなかった。

その影響か自身を大切に扱わない。

あの日、義母達に言われた通りに行動し、オレに『殺して欲しい』と懇願した時のように。


そんなことはもう、して欲しくはない。


「……。アシェは、オレにとって――第三騎士団にとっても、大切な存在なんだ。

アシェに何かあったら、皆……悲しむ。

それを、覚えておいてくれ」


「はい……」


静かにこくりと頷くアシェ。

反省しているようだ。


「ぼ、僕がちゃんと見ていなかったから、ご、ごめんなさい……!!魔物を討伐しないと、って思ってしまい……!」


突然謝罪し始めたのは、第二騎士団の男。

ユージンといったか。

目の前で土下座され、思わず眉をひそめる。


「全くだ。新米のようだが、焦りすぎだ!

第二騎士団にきちんと再教育してもらうんだな。

……全員、大きな怪我はないんだろ?」


アシェ、シリル、そしてユージンまでも頷く。


「じゃあいい。

……オレだって、間違えることもある。

今後気を付けろ。

そして、二度と同じ間違いはするな。

ともかく、まだここは危険だ。

教会に移動するぞ」


「はい」


アシェの小さな手を握る。

1人で不安の中、どうすればいいのか考え、行動したのだろうな。


アシェの方をもう一度見る。

ぬいぐるみをしっかり抱えて前を向く姿を見て、人目がなかったらもう一度、抱きしめてしまいそうだった。







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