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渋谷少女A―続編・山倉タクシー  作者: 多谷昇太
第三章 夢の絆

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有島一郎に似た山倉の苦み走った笑い

「だからさ田中さん、遠からずその栄子さんが見舞いに来ると思うよ。ビアクを連れて。その時にまた色々と話を聞けばいいよ。俺はさ、このあと予約客が一件入っていてもうそろそろ行かなきゃならないんだ。ここらで失敬させてもらうよ」

「ああ、どうも…長居させてしまって申し訳ない。あ、あの、前にも云ったけどホントにご迷惑お掛けしてしまって…いつか必ずお礼させてもらいますから。だから、そ、その…あんたの名刺を俺にも一枚もらえないだろうか?」

「無理、無理、無理。そんな身体で、失業中でさ。お礼だなんて…あんた、気にしなくていいよ」苦笑いしながら山倉はそう云ってくれ、胸ポケットから名刺を一枚取り出して床頭台しょうとうだいの上に置いてくれた。見送りの為にベッドから立とうとする私を制してさらに「あ、そうだ。それとさ、田中さん。たぶんお廻りも来ると思うぜ。事情聴衆にな」と云い、了解した私にもう一言、病室のドアノブに手を掛けながら余計なことを云ってくれた。「あ、そうだ…田中さんよ、入院とかでもしコレ(人差し指と親指で丸を作って見せた)が足らなきゃ云ってくれよな。俺が都合するからさ」と。有難いがしかし私にはとんでもないことだ。これ以上間違っても彼に迷惑を掛けるつもりはない。もう罰が当たる!私は大仰に手を振って大丈夫、大丈夫を連呼して見せた。再度、山崎努に似た苦み走った笑い顔を残して彼は病室を出て行った。俳優で云えば有島一郎に似た、しかし苦み走った笑い顔を再度残して彼は病室を出て行った。


 病室の窓から東京下町の風景が見える。夕日に浮かんだゴタゴタした街並みはどこか秋の寂しさを醸し出している。古希真近となった私の毎日は悠々と云うには程遠い。それどころか件のストーカーどもに引っ付かれて以来この方、金も稼げず、眠れず、悲惨な限りだ。


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