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渋谷少女A―続編・山倉タクシー  作者: 多谷昇太
第三章 夢の絆

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開闢(かいびゃく)の思い(1)

「いいですよ、いいですよ。トイレに行かなくても。これでしてください」そう云って看護婦が尿瓶を差し出した。「いや…」と云ってトイレに行きたいのだがもう漏れそうだ。私は尿瓶を布団の中に入れてあてがい用を足した。そんな行為に呆れ顔の看護婦だったが尿瓶を始末したあとで戻って来、体温計を私の脇の下にあてがい、手首を取って脈を取った。

「うん。体温も平熱で脈も正常です。このあと先生が往診に来ますからね。このまま起きててくださいね。じゃちょっと…」と断ってから濡れたタオルで私の顔やら手やらを清拭してくれる。私は「あの、不整脈があるでしょ?」と抗議したかったが止めておく。聴診器でなければ恐らく判らないのだろうと思ったからだ。それよりこういう若い女性と口を利いたり況や身体に触れてもらえるなどということは、若い女性どころか、普段殆ど誰とも没交渉な私であったからまさに稀有のことである。10年ほど前にクズどもによる苛みが嵩じた結果ガンとなり、長期入院したと前述したがその時以来のことだろう。今回は文字通り怪我の功名なのだが(自嘲)…まあそれは冗談として、瞠目すべきはあの栄子とビアクという、何やらA子とB子を彷彿とさせるような女性たちと出会うことが出来たということだ。それで…ここで自問したいのは『これは、今回のこの一連の出来事は、果して偶然なのだろうか?』ということである。先程の悪夢中における魔王アスラ―の「殺すぞ!」なる脅しと云い、古希間近となって人生の終末に至った私にとっては、これは恐らく…現実における最終的な〝証し〟を求められているのではないだろうか?

今から20年前、車上生活に追い込まれた際に見た、決して忘れることのできないあの夢!

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