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渋谷少女A―続編・山倉タクシー  作者: 多谷昇太
第二章 デュランス河のほとりで

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これは正夢…たいへんだ!

アパートを出た時からそうだったが河畔まで来てみると何とあの悪夢でのシチュエーション同様に濃い靄があたり一面にかかっていて文字通り五里霧中といった感じである。土手堤の向こう側からこちらもやはり夢中同様に何事か人の云い争う声が聞こえて来る。男女複数のようだ。

「ちょっと、あなた。いま何をしていたんですか?!」

「何をって…何だ。誰だ?お前」

「いまこの女の子を川に投げようとしていただろ?!」

「バカ云うな。そんな事をする分けが…」

何だってえ…?女の子を川に投げ入れるだってえ?尋常ではない会話に総毛立つ。これではあの悪夢の再現、正夢ではないか。しかしこれは、今は、夢などではない現実のことなのだ。もしその女の子が件のあの女の子なら…私は血相を変えて堤を駆け登り河畔のプロムナードを凝視する。靄の中に黒い人影が数人浮かび上がってそこから尚も云い争う緊迫した声が伝わってくる。

「うるさいな。まったく…もういいよ。この気違い。放っとけよ。俺はもう行くぜ。おい明美(女の子の名前だろうがこの名前は驚くことに、直前の悪夢の中で聞いていた!)、こっちだ。行こう」

「いや」これはその幼い女の子の声だ。

「待ちなさい!行っちゃダメ!事情を説明して。こんな遅い時間にこんな所でいったい何をしていたの?!」

「うるさい!警察を呼ぶぞ」

「呼べよ。ほら。どうした?何だったらこっちが呼んでやるよ」どうやら男を問い詰めている女性は2人のようだ。私はもうこれ以上黙視できない。我が身のプータロー然とした境遇も何も打ち忘れ人影に向かって大声を発した。「おい!そこで何をしている?!」人影がいっせいにこちらをふり向く。次の瞬間「ちっ!」と吐き捨てるように舌打ちしたあとで男が白髭橋に上がる土手の小道を一目散に駆け上がって行く。女の子を置いて行ったようだ。

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