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渋谷少女A―続編・山倉タクシー  作者: 多谷昇太
第二章 デュランス河のほとりで

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白髭橋西詰

ここで切々と身の逼迫を述べれば、役所で引導を渡された時にせっかく踏ん切りをつけた心がまた萎えてしまいそうな気もしたからである。車は白髭橋西詰の交差点に差しかかっていた。

「あ、次の信号左、それから1つ目の信号を右折してくれますか」

「おいおい、いいよ、ます言葉なんか」

「ハハハ、そうか。つい気が引けてさ。うーん、今の話だけどさ、仕事さえ選ばなければ何とかなるよ。便所掃除だって何だってやるつもりだから大丈夫大丈夫。ハハハ」

車は橋の赤信号で止まった。

「便所掃除かあ…それもいいけどさ、もし何だったら無理しないで、生活保護とか受けた方がいいんじゃないの?なんか…裏に隠れた事情がありそうな気もするし」私は思わず「そうなんだよ!」と口にしそうになる。得たり賢しどころの騒ぎではない、誰にも聞いてもらえない、また云っても信用されない、この霊視ストーカーの現実を、長年続く地獄のような災禍を彼に聞いてもらいたかった。だがそれは無賃サービス享受中の身で、また久しき再会の今でしかないこの時に、口にすべきではないと思われるし、余りに虫が良すぎるようにも思われる。

「隠れた事情か…まあそれを云えば1時間かかりそうだし、今は止めとくよ」白髭橋西詰の信号を左折して次の清川2丁目の信号を車は右折した。東京ガスの巨大なガスタンクを右に見ながらJR貨物隅田川駅方向へと向かって行く。

「JRの突き当りまで行っちゃうの?」

「いや、そのひとつ手前の路地を右に曲がってもらって、最初の信号の手前あたりなんだが」

「OK」いくばくもなく路地に差しかかり馴れたハンドルさばきで車を右折させる。その先300メーターほど行った信号の手前で左に車を寄せて停車した。

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