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渋谷少女A―続編・山倉タクシー  作者: 多谷昇太
第二章 デュランス河のほとりで

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狸穴荘(まみあなそう)

「いやあ、ほんとにすいませんね、山倉さん。夜間の稼ぎ時に邪魔しちゃったみたいだし。今度なんかの折りには電話して使わせてもらいますよ」私は決してあり得ないことを口にした。お礼は確かにしたいのだが当分出来そうもないし、本当は彼の電話番号を聞き出したかったのだ。どこかでまた会って〝隠れた事情〟を聞いてもらいたかった。しかし無理強いは出来ない。何度も必要以上にお辞儀をしては私は車から降りた。ところが山倉は自分も居りて来て車のドアをロックする。

「いいってことですよ、田中さん。それよりさ、家教えてよ。こっから近いんでしょ?一応場所確かめといてまた来るからさ。今は車ほったらかしに出来ないし、上がるなんて云わないからさ」「いやいや、上がってもらっても構わないけど、むさい部屋だし…しかしそう云うんなら…じゃ、ちょっと一緒に」そこからわずか10数メーター離れた、信号を左に曲がって数軒先にある築ン十年という古アパートへと私は彼を案内した。東京23区内によくぞ残ったと云わんばかりの部屋数8つの木造アパート、その2階の奥の部屋を私は指し示す。「た、たぬきあな、荘…?」「狸穴荘まみあなそうと云うんだよ」一応はベランダ式アパートなのだがこちら側の側面に掛かった看板は字が消えかかっていて、それを見づらそうにしながら山倉が聞くのに、その彼の表情を見ながら私はそう答えた。さすがに苦笑いを顔に浮かべながら「いやあ、レトロな雰囲気のアパートだね。2階の奥だし…いいんじゃないの」と何とか誉め言葉を口にしてみせたが顔は閉口を示している。それも無理はない。自慢ではないが鉄製の階段は錆びモルタル造りの外壁はあちこちが崩れ落ちていて、部屋に入れば床はミシミシ鳴るし、天井に何本も走ったさお縁は曲がり天井板は剥がれ落ちそうになっているのが何枚もある。天井裏に上がったなら間違いなく崩れ落ちるだろう。本来間違っても誰も招じ入れたくない、文字通り狸が住んでいそうなオンボロアパートなのだ。はたして彼に入る度胸はあるだろうか。

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