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渋谷少女A―続編・山倉タクシー  作者: 多谷昇太
第二章 デュランス河のほとりで

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茂平、逃げの一手

だいぶ私のつまらない身の上のことで寄り道が過ぎたようだ。山倉の問いに答えねばならない。車は白髭橋西詰の交差点にかかろうとしていた。

「いやあ、山倉さんの出世話聞かされたあとじゃあ答え憎いなあ、ハハハ」

「おいおい、止せよ茂平氏。俺は出世なんかしちゃいないよ。ご覧の通りただの雲助だ。だいたいさ、川崎からなんで南千住くんだりまで出張って来たのよ。え?」

 もっともな疑問だったろう。往時以後の経歴をまともに述べれば優に1時間はかかる。私はいとも簡単にリプライした。

「うん、それはさ、この近くの運送会社に住込みで入ったあと近くに安アパートを借りてさ、そこに今も住んでいるのよ。もう1年になるかな…」

「へえー、で、今もその運送会社で働いている分け?」

「いや、半年前で止めた。今は無職…ところがそこに来てこのコロナ騒ぎだろう。年だし、てんで仕事が見つからなくって、ハハハ」

「ほんとかや。なんかやばそうな感じじゃんよ。大丈夫なのかい?生活の方…」

 聞くまでもなくハナの始めっからこの私の風体を見れば、彼には私の今の境遇が容易に察しがついただろう。普通のタクシーの運転手だったら挙手されても敬遠するような風体なのだ。それに今さらながら思うのは、よく20年も前の同僚に気づいたものである。私はコロナ流行下の老人だからマスクをしていたし、第一彼がマスクを下げて顔を見せた時でさえ本人が山倉名を云い、私との過去を伝えなかったらば決して彼を思い出せなかっただろう。それを正したい気もするが今は私の不本意な状況を聞かれてそちらに気が行っている。生活保護申請をするような今の身上を伝えねば納得されないのだろうがさすがに憚られるし、結局私はさきほど同様適当に逃げを打つしかなかった。

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