記念?
「お兄さん、こんなんで気絶しちゃダメです!起きてください!」
「そうだぞ、落ち着け!ていうか、変な妄想してんなよ!」
「お、おう⋯⋯」
何とか踏み止まる。くっ、なんだ?見せる気なのか?見せてくれるのか?どっちなんだ?
「お兄さん、それどっちも見せてます!」
「このドスケベが!」
「心を読まないで!」
「あら、どこかから聞き覚えのある声が聞こえてくるわ」
「「「っ!!」」」
さすがに騒ぎすぎたようだ。
慌てて口を閉ざすと、店員さんが真冬ちゃんのお母さんに笑いながら応えていた。
「ふふっ、じゃあ隣のお客様の確認してきますのでく少々お待ちくださいませ〜」
その言葉に皆ヒソヒソ話し合った。
「おい、やべえ。こっちに来るんじゃねえか!?」
「か、かくなる上は⋯⋯お兄さん、後ろ向いててください!」
「わ、わかった!」
言われたとおりに後ろを向くと、バサバサと音が聞こえ、何かが頭や肩に被せられた。
「お客様、どうかされましたか〜?」
「な、何でもありません⋯⋯」
「⋯⋯大丈夫、です」
「あら、お友達同士で入られてたんですね〜」
「はい、見せ合いっこをしていたもので」
「あら、そうなんですね。そちらの大きな荷物は?」
「ああ、これは⋯⋯楽器です」
「そうそう。よく鳴るんすよ、これが!!」
まさかの楽器扱い。まあバレるより百倍マシだろう。
ていうか、今どんな状態なんだ?
目を開けて鏡越しに確認すると、二人のほぼ剥き出しになった肌色の背中が見えた。
「っ!」
俺は慌てて目を逸らす。
い、今、間違いなく下着以外何も身につけていなかったよな?
ていうことは、今俺の身を隠している物は、二人が身につけていた洋服だろう。
まさか、ここまで大胆な真似を思いつくだけでなく、実行するとは思わなかった。
「ふぅ⋯⋯何とか誤魔化せたな。よし、そろそろ着替えるか」
「まだ早いですよ。お母さんがこの建物の敷地を出てからにしないと」
「なげぇよ!ていうか、んなのわかるかよ!」
「じゃああと少しだけ、ここで見せ合いっこしときますか。お兄さんには申し訳ないですけど」
「直登、もし見たら記憶なくすまでぶん殴るからな」
「⋯⋯はい」
すいません、さっき一瞬だけ背中見ちゃいました。とは冗談でも言えない圧を感じる。
何だ、この生殺しの状態は⋯⋯理性との戦いってこんな大変だったっけ?
数分後、燃え尽きて真っ白な灰になりかけたところで、二人は着替え始めた。
「⋯⋯私、これ買います。記念に」
「⋯⋯私も買おうかな。記念に」




