まさか⋯⋯
「さすが夏希お姉さんの妹ですね。底知れないものを感じます。お兄さんは何か選びましたか?」
「あー、俺は⋯⋯これとかどうでしょうか?」
「あ、それいいかもですね」
真冬ちゃんに感心されながら俺が夏希さんに見せたのは、人気商品の棚に陳列されていたおままごとセットだ。まあ、これなら興味を持ってもらえるだろう。人気商品らしいし。
すると、夏希さんは再び目を閉じ、ゆっくりと頭を振った。
「千花は⋯⋯おままごとが大嫌いなんだ」
「あの子が!?マジで!?」
どこにでもいる普通の幼児にしか見えなかったのだが⋯⋯そりゃまあ個人差はあるんだろうけど!
真冬ちゃんはまだ千花ちゃんに会ったことがないから、どんな子かは知らないが、口をポカンと開けていた。さすがに予想外だったらしい。
「あの、お姉さん⋯⋯千花ちゃんってどんな子なんですか?」
「ん?まあ、やんちゃだな。男子達ど泥団子を投げ合ったりして優勝したこともあるぞ」
「「優勝!?」」
なんなんだ、優勝って。どんなルールがあるんだ。そもそも何を競い合っているんだ。
夏希さんはオモチャ売り場にいるとは思えないような神妙な面持ちで口を開いた。
「先生から聞いた話によると、遊ぶ時間が終わって最後に砂場に立っていたのは千花だけだったらしい」
「「⋯⋯⋯⋯」」
隣にいる真冬ちゃんの表情からして何を言いたいのかがすぐわかった。おそらく俺と同じだろう。
いや、先生止めろよ。
どうやら千花ちゃんが通う幼稚園はかなり自由な教育方針らしい。良いことだ。知らんけど。
「ちなみに、お姉さんは何がいいと思うんですか?」
「そうだな⋯⋯うーん⋯⋯」
「「⋯⋯⋯⋯」」
沈思黙考。
そんな四字熟語がピッタリ似合う時間が流れて、いつの間にか目を閉じていた夏希さんは目をカッと見開いた。
「⋯⋯スポーツ用具売り場行くか」
「いや、この時間何だったんですか」
ふとそこで俺はある事に思い至った。
「あの⋯⋯もしかしてなんですけど⋯⋯夏希さん、自分がオモチャ売り場見たかったとかですか?」
「っ!!???はあっ?ちょっ、お、お前、何バカな事言ってんだ!ぶっ飛ばすぞ!!」
「あぁ、これは図星ですね。間違いなく。お兄さん、100ポイント差し上げます」
「何だよ、ポイントって何に使うやつだ!?」
「10000ポイント貯まったら私かお姉さんの胸を触れます」
「勝手に決めんな!」
「と、とりあえず、一旦夏希さんが買いたい物買って、それから千花ちゃんのプレゼント選びましょう!!」
結局俺達は1時間オモチャ売り場に滞在してしまった。




