ラブコメは突然に
「ほんとちゃっかりしてやがんなぁ」
夏希さんは頭をかきながら、ちょこんと座る真冬ちゃんを見下ろす夏希さんは呆れていた。
俺は口元が自然と苦笑いするのを自覚しながら、机の傍の椅子に腰を下ろした。とりあえず問題が一つ解決した。あっさり解決しすぎて肩透かしは喰らったけど。
「まあ、よかったじゃないですか。いや、そんなよくないかもだけど」
「これは当面の生活費と結婚資金として⋯⋯」
「さりげなく何言ってんだ。あとセリフが中学生じゃねえんだよ。あと通帳はしっかりしまっとけよ」
「ちなみにこのぐらい入ってます」
「うわっ⋯⋯やば」
「バッカ、そういうの簡単に見せんじゃ⋯⋯うおっ、何だこれ!?ハイ◯ュウ何個分だよ!」
「何に換算してるんですか⋯⋯」
「しかもアレ、個売りしてないですよね」
「う、うるせえな!好きなんだからいいだろ!」
まさかこのタイミングで夏希さんの好物が一つ知れるとは⋯⋯一応覚えておこう。
真冬ちゃんは「とにかく!」と手を合わせた。小さな手からは意外と大きな音が響き、何か重要な話が始まるのではと俺と夏希さんは身構えた。
「ここでこのラブコメの決着をつけなくてはなりません!」
「⋯⋯⋯⋯は?」
何やらわけのわからない事を言い出した。今に始まったことではないんだけれども。
「確かにそうだな。白黒つけとかなきゃいけねえ」
「え、こっちも?」
夏希さんは神妙な面持ちで頷いている。待って、話飛びすぎじゃない?どうしてこうなった?
すると、真冬ちゃんと夏希さんは示し合わせたように立ち上がり、俺を左右から拘束し、ベッドに放られた。
突然の事に混乱していると、二人が押し倒すような形で乗っかってくる。こんなよくわからないドタバタした状況でも、彼女達の表情は真剣そのもので、俺はごくりと唾を飲み込んだ。
右側には夏希さんが。左側には真冬ちゃんが。
その頬は上気して赤く、瞳は濡れている。
やがてどちらも唇が動いた。
「アタシは」「私は」
どちらも黙り、じっと見つめ合う。いや、睨み合う。
数秒そうしてから、二人は手を振り上げた。
「「最初はグー!ジャンケンポン!」」
一瞬殴り合いを始めるんじゃないかと勘違いするような勢いで、二人はジャンケンを始める。
2回引き分けの後にグーで夏希さんが勝利する。
「うっし!!じゃあ先に言わせてもらうぜ」
「⋯⋯負けは負けですからね。どうぞ」
真冬ちゃんは悔しそうにしているが、特に態勢は変わらないので、こちらは緊張感が減らない。
そんなことお構いなしに夏希さんは俺の目を真っ直ぐに見て告げた。
「直登、アタシはお前が好きだ」




