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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第三章 イーストテッド篇 決戦、ペンズ卿
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第六十一話 魔王アリス

「あの後、あの場所で何が起こったかは、私の口からは言えません。

 だけど、これだけは伝えておきます。

 信じて頂けますよね?」


 アリスは、レイの顔を覗き込んでそう言った。


(ち、近い!近い!)


 不意に近付いたアリスの顔に、レイの動悸は早くなった。

 アリスは、それに気付いたらしく、ニコッと笑った。


「あれ?もしかしてエルバム様ドキドキされていますか?

 ダメですよ、いくら私が可愛いからってそんなに興奮されては。」


「は、はい……」


 レイは赤い顔をしてそっぽを向いてしまった。といっても、首から上しか動かすことが出来ないので、大した意味はなかった。


「そ、そんなことより、君が魔王っていうのは本当だったんだね。」


 レイは話題を変えようとそう言った。


「そうですよ。あ、もしかして疑っていました?

 この前来られたときに名刺を渡したじゃないですか?」


「名刺?」


「あの名前を書いた小さな紙のことです。」


「ああそうだったね。

 でもさ、君が魔王ってことは、君が悪魔っていうのも、やっぱり本当なんだね?」


「はい。」


 アリスは、淀みのないはっきりとした声で答えた。


「俄には信じられないな。」


 レイは自分の顔の真上にある、アリスの顔を見上げた。

 その顔は、まだ幼さが残っており、ハルと同い年位だと思われる。


「そう言えば、この前エルバム様がいらっしゃった時は、無駄なお話をしたせいで、私達のことは、何も話せていませんでしたね。

 丁度、今回はエルバム様も動けないことですし、少し長めのお話をすると致しましょうか。」


 アリスはそう言うと、レイの額を一度ゆっくりと撫でた。


♦♦♦♦♦


「私達がこの精神の世界に閉じこめられている理由は、覚えていらっしゃいますか?」


 アリスは話の初めにそう訊ねた。


「確か、アリス達悪魔の魂が汚れすぎてて、この精神の世界で洗い流すことが出来ないから。だったかな?」


「はい、合っています。

 それでは、私達の魂が汚れている理由は?」


「審判の決戦の時に、敵味方の魂を強制的に操ったから。」


「正解です。」


「あのさアリス、クイズをしてる訳じゃ無いよね?」


「違いますよ。復習ですよ、復習。

 でも、復習はこれでお終いです。ここからが本題です。」


 アリスはそう言うと、自分を指さした。


「私はどう見えますか?」


「可愛い。」


 アリスの不意の質問に、レイは即答した。


「……あまりにハッキリ言われますと、流石に恥ずかしいです。

 でも、私の言っていることはそう言うことではないんです。

 エルバム様にとって、私は悪魔に見えますか?」


 アリスは一瞬、赤面して顔を逸らしたが、直ぐに真剣な顔に戻った。


「悪魔に見えるか?か……。

 僕は実際に悪魔を見たことが無いんだけど。あ、アリスは悪魔だから見たことはあるのか。

 えっとそうじゃなくて、500年前の審判の決戦や、それ以前の大戦の頃の悪魔は見たことがないんだけど、僕にはアリスが悪魔には見えない。

 だって、君の姿は人間と一緒なんだから。」


 アリスの真剣な問に、レイも誠実に答えた。

 レイは、この前ここへ来たときからアリスが悪魔に見えないと感じていた。

 その思いを、アリスの問の答として返した。

 レイの答を聞き、アリスは一度目を閉じた。

 そして、何かを決意するようにゆっくりと目を開けると、こう言った。


「やっぱり、そうですよね。

 でも、それは当たり前の事なんです。

 だって、悪魔と人間はまったく同じ種族なのですから。」


「えっ……?!」


 レイはアリスの言葉を聞き、困惑した表情を浮かべた。

 首から上しか動かないが、それだけで十分驚いていると分かるリアクションだった。

 だが、アリスが続けて放った言葉は、それ以上の驚きをレイに与えた。


「いえ、この言い方は間違っていますね。

 人間と悪魔だけではありません。

 肉体の力を司ると言われるドラゴンも、私達と同じ種族なのです。」


 アリスはその後、「皆同じなんです」と付け加えた。

 知恵の力を司る人類も、肉体の力を司る悪魔も、そして肉体の力を司るドラゴンも、全て同じ種族なのだと。

 それは、レイにとって大きな衝撃だった。


「アリス、それは冗談だよね?

 だとしたら笑えないよ。」


 レイは目の前ではなく、目の上にあるアリスの顔をじっと見つめそう訊ねた。

 だが、レイがじっと見つめるアリスの目は真剣そのものだった。とても、冗談を言っているようには見えない。

 そして、案の定アリスは首を横に振った。


「500年の平穏の中で、歴史が意図的に曲げられたのです。エルバム様が知っていると思っていた歴史は、改竄された偽物なのです。」


「改竄?一体何のために?」


「それは、内乱を防ぐためです。

 折角一つに成った社会が、崩れることを恐れた昔の人が、自分達の都合の良いように作り替えたのです。」


「内乱……」


 レイはここで、ダルメア率いるアステカがノミシアで反乱を起こしていることを思い出した。

 それは、単に内乱という言葉に反応しただけなのか。それとも、心の奥で何かを感じていたのかは、分からない。

 ただ、この後のアリスの言葉が、レイがここでアステカを思い出したことが、あながち間違っていないことを教えてくれた。


「なぜなら、悪魔族とは魔法使いの、ドラゴンとは勇者の事だったからです。」

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