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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第三章 イーストテッド篇 決戦、ペンズ卿
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第五十九話 再び現れし人影

 力の限り、魔力の限り、残りの力のありったけを振り絞り、レイは気を失った。

 レイはメイルにより、ミーテル城の大広間の天井付近に飛び上がっていた。

 そのため、気を失ったレイは、真っ逆さまに床へと落下した。

 先程自らの手で作った大きなクレーターの底へ。


「レイちゃん!」


 ミルネバを看病していたハルが倒れて動かなくなった兄のとへ駆け寄る。

 大好きな兄が死んだように動かないその姿を見て、ハルの目からは止めどなく涙が溢れている。


「レイちゃん!レイちゃんしっかりして。

 勝ったんだよ、レイちゃんは勝ったんだよ。

 せっかく勝ったのにレイちゃんがしんじゃったら意味ないよ。

 お願い、目を開けて。何時もみたいに笑ってよ。」


 ハルはレイを腕に抱えると、その胸に顔を埋めて泣き喚いた。

 顔を、涙と鼻水とでグチャグチャにしながら、ありったけの声でそう叫んだ。

 だが、そんな時、泣き叫ぶハルの後ろで声がした。


「君は何を言っているのかな?

 この私があの程度の攻撃で死んだ?

 レイ・エルバレムがこの私に勝った?

 ……笑わせるな。」


 ペンズ郷の声が。

 レイの放ったダクトにより立ち上っていた煙がはれたクレーターには、傷一つ負っていないペンズ郷の姿があった。


「……な、んで……」


 涙で溢れかえった目を見開き、ハルは信じられないといった顔でペンズ郷を見た。

 その目には、恐怖しか映っていない。


「全く、素直に一カ所から攻撃を仕掛けば良いものを、奇をてらってあの様な攻撃をしたからこうなるのだ。

 もし、全ての魔力をダクトに注いでいたなら、もう少し良い戦いが出来たものを。

 まぁ、そういった甘いところを含め、娘と共に本部で再教育すればよいか。」


 ペンズ郷は、別にハルに話す訳でもなく、ただ独り言を言うような口調でそう言った。

 いや、もしかしたら本当に独り言だったのかもしれない。

 ハルの姿などペンズ郷には映っていなかったのかもしれない。

 ペンズ郷が見ていたのは、始めからミクルとレイだけだった。


「君には用がない。」


 ペンズ郷は驚くほど冷たい声でそう言うと、レイを抱えてうずくまっていたハルを蹴り飛ばした。


「うっ……」


 その衝撃に耐えきれず、ハルは軽々と飛ばされた。

 それはまるで、あの時のレイのように。

 生まれつき体の弱いハルは、その一撃だけで気を失ってしまった。

 しかし、それはある意味でハルの為だったかもしれない。

 もし一撃目を耐えたところで、ダクトもプロウも使えないハルに為すすべなど無かったのだから。

 四人共が気を失い倒れてしまった大広間で、ペンズ郷が誰もいないはずの部屋の奥に話しかけたい。


「さて、私一人にここまでコテンパンにやられるとは、私は過大評価し過ぎていたかな。

 君の教え子だと聞いていたから、少し期待してたんだがな、ダルメア。」


 ペンズ郷がそう声をかけると、先程まで誰もいなかった影から一人の男性が現れた。

 もう眼鏡を掛けてはいなかったが、その顔はつい先日レイたちの故郷イサカ村を襲った張本人のそれと同じだった。


「なに、私がレイに教えたのはあくまで魔法の技術と基本的な体術だけだ。

 私がレイを重要視する理由は、おまえも分かっているだろマルロボ。」


 ダルメアは身に纏った黒いマントをなびかせながら、ペンズ郷に近づく。

 その動きは洗練され、ただ歩いているだけにも関わらず、ある種の恐怖をペンズ郷に与えた。


「それより私が失望したのは君の娘だ。

 確かに勇者の力聖白纏せいはくてんの硬度はなかなかのものだったが、それ以外がまるでなっていないでわないか。」


「まぁそう言うなよダルメア。

 大体、ミクルは単なる予備にすぎん。本命が仕事をしてくれれば何の問題もないではないか。」


 ペンズ郷は自分の娘を貶されても、顔色一つ変えることなく会話を続けている。

 もしこの場に二人以外の誰かがいたとすれば、その人は二人の余りに冷えた心の無いような声に恐怖したことだろう。

 幸いに、いや不幸にもこの場には二人の会話を聞く者はいなかった。


「さぁ、時間もないことだ、そろそろ行こうではないか。」


 そう言ったのはペンズ郷だった。


「ああ、そうだな。

 こんな所に長居をしても、得る物は無さそうだしな。」


 大広間に倒れた四人を見下したダルメアは、興味なさそうにそう言った。


「こんな所とは失礼だな。これでもここは私の城なのだからな。」


「しかしマルロボ、君は領主には向いていないのだろ?

 事実、ここの民たちには相当嫌われているようだが。」


「おいおい、今更何を言っている。それも"計画"の内だろ。」


「あ、そうであったな。忘れていた。」


 二人はそんな会話をしながら大広間の中央へ歩いていった。

 一見和やかに見えるその会話風景も、お互いの声の冷たさが、そうでないことを伝えている。

 二人は、大広間の中央まで来ると歩みを止めた。

 足を止めた二人の足元には、大きな魔法陣が描かれていた。


「よし、それでは。」


 ダルメアは、そう言うと奥で倒れている四人に杖を向けた。

 そして、その杖を一振りすると、二人の元にレイとミクルが現れた。

 ダルメアは足下に転がった二人を見下すと、横のペンズ郷の顔を見た。


「それでは、行こうか。」


 ダルメアがそういい終わらないうちに、四人の姿は大広間から消えていた。





久しぶりの更新です。

待っていて下さった皆さんどうもすいません。

新たな展開へ入るので、構想を練っていました(嘘です)。

本当は新作の方にかかりきりになっていました。

今後はで出来るだけ両立して参ります。

そして、宜しければ新作「こちょこちょは異世界を救う」もよろしくお願いします。


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