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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第三章 イーストテッド篇 決戦、ペンズ卿
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第五十八話 レイの怒り 渾身のダクト

 何もかもが一瞬の内に起き、レイとハルは困惑していた。

 消えた狼、倒れたミルネバ、突然現れたペンズ郷、そのペンズ郷に殴られて倒れたミクル。

 あまりに目まぐるしく変わる状況に、レイは付いていけないで居た。

 だが、そんな状況においても一つだけ分かることがあった。


 目の前に居る男を許してはいけない!


 そのただ一つの確信を得たレイの目は、いつもの鋭い物になっていた。それは獲物を見つけた肉食獣と言うよりも、天敵と対峙した草食獣という感じがした。


「お仕置き……だと?ふざけるな!

 お前は一体何をした!僕の大事な人達に何をしたんだ!」


 レイは、杖を構え目をギラつかせそう叫んだ。

 ミネルバを必死に看病しているハルが心配そうにレイを見つめていた。


「何をした?か……愚問だな。

 私は我が城に入り込んだおかし格好をしたネズミを駆除したまでのこと。そんな目くじらを立てて怒るような事ではない。」


 倒れたミクルとミネルバを見下して話すペンズ郷の言葉は嘘には聞こえなかった。

 その事がレイを余計に怒らせた。


「ネズミだと?駆除だと?

 ふざけるな!この人はお前の母親だぞ!その子はお前の娘だぞ!

 お前にはこの二人と同じ血が流れているはずなのに、どうしてそんな事が言えるんだ!

 そんな酷い言葉、二度と口に出来なくしてやる!」


 レイはそう叫ぶといきなり飛び出した。


「ダクト!」


 これまでの怒りと憎しみが黒魔煙としてレイの杖から溢れ出た。

 レイの放った光の玉はこれまでで一番大きな物だった。

 しかし、ペンズ郷の胸目掛けて一直線に飛んでいったその光は、ペンズ郷に当たると同時に辺りへ弾き飛んだ。


「なっ………」


 渾身の一撃がペンズ郷に掠り傷一つ負わせられなかったことに、レイは驚愕した。

 ペンズ郷は、そんな驚いたレイを嘲笑った。


「君には学習能力が無いのかい?

 君は先ほど私が、ミクルの攻撃を何もせずに受け止めたのを見ていなかったのかい?

 もし見ていた上での行動だとすると、私は君し失望するよ。

 私は彼よりも君を高く評価していたのに。」


 ペンズ郷は、大袈裟にうなだれるポーズをとった。


「何を言っているんだ?

 彼?それは誰だ。」


「おっとっと、これ以上は話せない。

 もし、どうしても聞きたいと言うのなら、私を倒して拷問でもするのだね。」


 小馬鹿にしたようなペンズ郷の態度に腹が立ったレイが尋ねると、ペンズ郷はそう言って黙ってしまった。


「そうか、それならお言葉に甘えてそうされてもらうよ。」


 レイはそう言うと、一度目を閉じた。

 この時、レイは一つの決心をしていた。


 次の攻撃で決める


 これからレイがやろうとしている攻撃は、大量の魔力を使う。下手をすれば黒魔煙が枯渇するかもしれないほどの大業だ。

 もう、レイにはそれしか方法は無かった。

 レイはゆっくりと目を開けると、大きく叫んだ。


「チート」


 次の瞬間、レイはペンズ郷よ背中に回り込んでいた。


「ダクト!」


 チートの移動が済むと、レイはすかさずダクトを放った。そして手を休めることなく杖を構えた。


「チート」


 レイは一つ目のダクトがペンズ郷に到達するよりも早く、ペンズ郷の左へ飛んだ。


「ダクト!」


 一つ目のダクトがぶつかり、大きな爆音と煙に包まれるペンズ郷に、レイはさらに攻撃を仕掛ける。

 そしてまた、ダクトを放つとすぐにチートでほかの場所へ飛んだ。

 この組み合わせ技を連続して用いる事による"一人全方位攻撃"。それこそがレイの思惑だった。


 ミクルの攻撃がどうして防がれたのかは分からない。自分の攻撃がなぜだか通用しなかったのかは分からない。

 ただ、さっきの一発目で、最大の攻撃は利かないということは分かった。

 それなら今度は最多の攻撃を仕掛けてみるだけだ。

 一カ所から何発も打つのではなく、チートと併用する事により多角的な攻撃を。

 それが、レイの思いついた秘策だった。

 しかし、この攻撃には最大の難点があった。

 それは、レイの魔力がいつまで保つかと言うものだ。

 レイが初めてセリエーヌと戦った際、レイはその魔力の消費の多さからチートを多用することが出来なかった。

 ミルネバの特訓のおかげで黒魔煙が見えるようになり、魔力の消費を押さえれるように成ってからはそれなりに多用できていた。

 が、それも移動の度に時間を開け休息をとったからこそ出来たもの。

 今のように間髪入れず、しかもダクトと併用するなど普通に考えて無理だった。

 必ず、限界が来る。



「早く倒れろ!」


 レイがそう叫んだのは、攻撃と移動の回数が三桁に近づいた時だった。

 既にチートによる高速移動の衝撃で、術者本人であるレイですら耐えることが難しくなっていた。

 しかし、レイはまだ攻撃の手を緩めるわけにはいかなかった。

 何故なら、幾ら攻撃を仕掛けてもペンズ郷が倒れないからだ。

 数え切れない数の攻撃により、ペンズ郷は光と煙に閉ざされ、目視出来ない状況だった。

 だが、その状況においても煙の合間から見える輪郭により、ペンズ郷が未だ立ち続けていることが分かった。

 疲労と衝撃に耐えながらレイはそれを確認した。

 そして次の移動先として天井に目を向けた。

 横からの攻撃がダメなら、今度は上から。

 レイは目測を定めると、一瞬にして飛び上がった。そして、ペンズ郷目掛け最後の力を振り絞った。


「ダクト、ダクト!ダクト!!ダクトォ!!!」


 レイの放った四つの光の玉は、ミーテル城の大広間に大きなクレーターを作った。

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