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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第三章 イーストテッド篇 決戦、ペンズ卿
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第五十四話 成り行きで

「え?この女の子がミクル?それでもってペンズ卿の娘?

 お婆さんは魔法騎士隊の総帥??!」


 レイがそんなすっとんきょな声を上げたのは、あれから少し経ってのことだった。

 ミルネバとミクルの素性を聞いて目が点になっている。

 興奮剤の効果が切れ、ミルネバの弛緩魔法も解かれた普通の状態のレイにしては大きめのリアクションだ。

 レイは身体中に巻かれていた包帯をはずし、白いローブも脱いでいた。今はあの黒いコートに着替えている。


「そうだよビックリしたでしょ。」


 ミクルは面白がってレイの顔をのぞきこんだ。

 その顔はレイの知っているボサボサ髪の少年ではなく、綺麗なオレンジ色の髪の毛をした女の子だ。


(これがあのミクルなのか?)


 レイは到底信じられなかった。

 じろじろとミクルの顔を見つめているとふいに目と目が合ってしまい、レイは顔を赤らめて目を逸らした。

 そんなレイの表情の変化を目敏く見つけ、ミクルが更にレイをからかう。


「あれ~、どうしたのかな?

 私の本当の姿を見て惚れちゃった?まぁ仕方ないよね、男の子ってお嬢様に弱いんだもんね。」


「べ、別にそんなんじゃないよ。

 ただ、昨日のことを思い出して……。」


「昨日のこと?」


「あ、あれだよ。お風呂場の前で……。」


 レイがそこまで言いかけたのを、ミクルはレイの口を手で塞ぐという方法で防いだ。

 その顔は一瞬にしてレイの数倍紅くなっている。


「ば、バカ。お婆ちゃんとハルがいる前で何言ってんのよ。」


 ミクルは、焦った小さな声でレイにだけ聞こえるようにそう言った。


「どうしたのミクルちゃん、レイちゃんの口なんて押さえて。」


 いきなりレイの口を押さえたミクルを見て、ハルが戸惑いながら尋ねた。

 ミルネバは、何も言わずに小さく笑っている。


「あ、いや、レイの口元に虫が見えたから思わず叩いちゃったの。

 ごめんねビックリさせちゃって。」


 ミクルの言い訳は明らかに怪しかったが、ハルは疑うことなくすんなりと信じた。

 レイはミクルの手を口からひき剥がすとはぁと溜め息をついた。


(この自分勝手な感じはミクルだ……)


「そ、それよりさ、この巻物の話を再開しようよ。ね?」


 旗色が悪くなって焦ったのか、ミクルは急に話題を変えた。


「この巻物が、私のお父さんにとって大切な物だって事はさっきも説明したよね?

 実は、私とお婆ちゃんはこれを使ってお父さんと交渉するつもりなの。」


「交渉?」


 そう聞き返したのはハルだった。

 


「そう交渉。

 私とお婆ちゃんはこの巻物と引き換えに、このイーストテッドの統治権を取り返すつもりなのよ。」


「「え?」」


 ミクルの一言に、兄妹が同時に首を傾げた。

 二人には、今テーブルの上に置かれている巻物がそれほど重要な物には見えなかった。少なくとも、このイーストテッドの自治権と同じ天秤にかけることは出来なかった。

 そのため、二人にとってミクルの言葉は冗談のように聞こえた。

 そんな二人の心の内を察してか、今まで黙っていたミルネバが語りかけてきた。


「随分戸惑っておるようじゃな。まぁ無理もない。いきなりこんな話をして、直ぐに信じろと言うのは横暴というものじゃ。

 そこで提案なんじゃが、お前さんらも立ち合わんか?これから行う交渉に。」


「え、交渉というのは、この巻物とイーストテッドの統治権との交換の交渉ですよね?

 僕達みたいな部外者が立ち合っても良いんですか?」


 レイは、次々に飛躍する話を必死に理解しながらそう聞き返した。

 ハルに至っては、ミクルとミルネバの話を上手く咀嚼出来ずに、頭がショート寸前になっている。


「そりゃいいとも、なんせお前さんらはもう当事者じゃからの。

 現に、ハルちゃんは私のドラ息子の被害に遭っとるからの。」


 そう言われてしまうと、もうレイとハルには頷くしか選択肢がなくなってしまった。











 ここまでのミクルとミルネバの素性まとめ

・ミクルは、イーストテッドの統治貴族ペンズ卿の娘・親兵から逃れるために異装いしょうというマジックアイテムで男の子なっていた


・ミルネバは、元魔法騎士隊総帥・息子であるペンズ卿の暴走を聞きつけイーストテッドまでやってきた


・二人は城に隠されていた巻物を盗み出し、それと引き換えにイーストテッドの統治権をペンズ卿から奪おうとしている


・レイとハルは成り行きで、その交渉に付いて行くことになった

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