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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第三章 イーストテッド篇 決戦、ペンズ卿
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第五十三話 レイ、起きる

 奴の女房、つまりミクルの母親を、殺したんだよ。あのドラ息子は。

 これは後で分かったことなんじゃが、どうやら、若いおなごに誑かされていたそうじゃ。

 そこから奴の狂気は、更に酷くなっていった。

 ミクルの母親を手にかけた次の日、奴は中央にいる頃からの臣下を十人、打ち首にしたんじゃ。

 理由は、臣下の一人が妻を殺したことを非難したから、だそうじゃ。

 私はそれを聞いて言葉も出んかった。

 その後、私は直ぐに総帥の座を辞してこの街へ来たんじゃ。

 そして、つい先日ミクルも城を抜け出してこの家へ避難してきたんじゃ。

 男の子の変装は、街中で目を光らせておる親兵に見つからないための物だったんじゃ。


 そして一昨日、私らは行動を開始したんじゃ。

 あのドラ息子が城の中に隠しているある巻物を盗み出すためにの。

 その時城に侵入したのは、ミクルじゃった。ミクルの方が私より城の内部を熟知しておったからな。

 しかし、失敗じゃった。

 ミクルは、城の周りをパトロールしていた親兵に捕まってしもうたんじゃ。

 だが、幸運なことに監獄でお前さんの兄、レイと出会ったんじゃ。

 二人は、監獄を脱走して、私の家へ帰ってきた。

 そして、今朝、お前さんを助けにレイとミルクが親兵の基地へ乗り込んでいったんじゃ。



「私は、その混乱に乗じてコレを手に入れた。」


 ミルネバは、そう言って一巻きの巻物を取り出し机の上に置いた。


「これは、一体何なんですか?」


 ハルは得体の知れない巻物を細目で見ながらそう言った。

 その声には、まだ疑いの色が残っている。

 そんな、ハルの問に答えたのはミクルだった。


「ハルちゃんこれはね、私のお父さんがど~~しても隠しておきたい物なの。」


「隠しておきたい物?」


「そう、これさえあればお父さんは貴族でいられなくなっちゃうような、そんな物なの。」


「そうなんだ。

 でもミクルちゃん、そんなすごい巻物を盗んでどうするつもりなの?」


「それはね……」


 ミクルが答えようとしたその時、三人の後ろの扉が勢いよく開いた。

 タイミングがいいのか、悪いのか、いや間が悪いのだろう。

 そこには、全身包帯巻きで白いローブを着たレイが立っていた。

 レイは扉を開けると、まくし立ててしゃべり出した。


「ど、ど、ど、どうなってるんだ?

 いきなりメイルが使えなくなって、セリエーヌに負けて、死んだと思ったらミクルのお婆さんの家で寝てたんだけど。

 寝てたと言うより、棺桶みたいな箱に押し込まれてたんだけど。なんなの?もう死んだと思ってたの?

 生きてるよ!僕はこうして生きてるよ!

 というか、ハルとミクルは?なにがどうなってるの?

 って、ハル!本当にハルなのか?なんでここにいるんだ?

 傷は?傷はもういいのか?

 っていうか、なんでホットミルク飲んでくつろいじゃってるの?命が危なかったんじゃないの?

 あ、お婆さん!何があったのか教えて下さいよ。あの後、僕が斬られた後何があったんですか?

 そう言えばミクルの姿がないんですけど、ミクルは無事なんですか?

 一体全体何がどうなって今の状況に繋がってるんですか!」


「うるさい」「うるさいね」「うるさいよ!」


 混乱しているレイに、三人が冷たく言い放った。初めがミクル、その次がミルネバ、そして最後がハルだ。

 三人に一斉に非難の目を向けられ、レイは口ごもってしまった。そんなレイを尻目にミルネバはゆっくりと立ち上がった。


「やれやれ、騒がしいのが出てきたね。」


 ミルネバは、そう言って杖を取りだすとレイに向けて一振りした。

 すると、今の今までまくし立てて話していたレイが、ストンと尻餅を付いた。

 レイは膝かっくんでもされたかのように膝が折れ、脱力している。


「う~ん、興奮剤の量を間違えたかね?

 まぁ元気になったのは良いことじゃな。」


「レイちゃんは一体どうしたの?

 こんなキャラじゃ無かった気がするんだけど……。」


 ハルが、恐る恐るミルネバに尋ねた。

 さっきは勢いでうるさい、と言ってしまったが冷静になって考えてみるとさっきのレイの様子は明らかにおかしかった。

 ミルネバは脱力したレイを椅子に座らせながら応えた。


「治療の副作用のようなものさ。

 さっきの戦いで魔力を使い果たしてしまって、精も魂も尽き果てたレイに無理やり元気を取り戻させる薬を投与してたんじゃよ。

 どうやら、分量を間違えて元気になりすぎてしまったみたいじゃがね。」


 ミルネバは、はっはっはと笑ってそう言った。


(笑い事じゃないと思うんだけど……)


 二人の少女は心の中でそう呟いた。

 危うく主人公のキャラ設定が根底から覆されるところだった。


「ま、そんなことはさて置いて、話の続きをしようか。

 レイも起きてきたとこじゃしの。」


 そう言ったミルネバの顔には、いたずらっ子の笑みが浮かんでいた。

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