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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第五十一話 魔法使い、ミルネバ

魔牆壁ましょうへきをどうやってすり抜けたんだ……などと、聞く必要もないな。

 転身魔法、は貴様の最も得意な、特異な魔法だからな。」


 セリエーヌは苦虫を潰したような顔でミルネバを睨んだ。

 だが、ミルネバはそんな視線を軽く流してゆっくりと歩いている。


「いやいや、私の転身魔法は純粋なメイル(移動魔法)とは違うからね。魔牆壁なんていう高度なマジックアイテムを破るなんて無理じゃよ。

 私はただ、魔牆壁の魂をこれに移しただけさ。」


 ミルネバはそう言って小さな牛のぬいぐるみを取り出した。

 牛のぬいぐるみは、ミルネバの手の中で暴れている。


「それは、デイル?

 と言うことは。」


 セリエーヌはそう叫ぶと慌てて空を見上げた。

 その目線の先には雲一つない青空が広がっていた。いつも通りの空だった。

 そこには、先程セリエーヌが発動させた筈の魔牆壁の光が消えていた。


「全ての魔法を防ぐマジックアイテム、魔牆壁。

 確かに恐ろしい能力じゃ。だが、全てのマジックアイテムに共通する弱点がある。それが転身魔法じゃ。

 魔牆壁の魂は今ここ居おる。」


 そう言ってミルネバは、また牛のぬいぐるみを突き出した。

 セリエーヌの顔が怒りと悔しさでさらに歪む。


「貴様のそう言うところが昔から気に食わなかったんだよ。」


 セリエーヌはレイの首に添えていた剣を持ち上げ、構え直した。


「ライムベル親兵の元幹部と言っても、基地への無断侵入と基地施設の破壊なら現行犯で逮捕するには十分だろ。」


 セリエーヌはそう言って走り出した。

 その言葉と顔からは、怒りが溢れている。

 セリエーヌは、ミルネバの三メートル程手前で飛び上がり斬りかかった。


「なんじゃ、らしくないの。

 この私に勝てると思っているのかい?」


 ミルネバは、やれやれと言った様に杖を構えた。

 ……次の瞬間、周りを取り囲む親兵達は衝撃的な光景を目にすることになる。

 セリエーヌが剣を振り下ろそうとした瞬間、千人以上の目の前から忽然と姿を消したのだった。

 いや、消したのではない、消されたのだ。

 誰に?そんなの決まっている、ミルネバにだ。


 それに気付いた瞬間、周りを取り囲んでいた親兵が一斉にサーベルを抜いた。そして、ミルネバ目掛けて斬りかかった。

 だが、誰もミルネバに触れることすら出来なかった。

 先程のセリエーヌ同様、一瞬にして消えてしまったからだ。

 千人が同時に、まるで蒸発するかの如く跡形もなく姿を消したのだ。



 ライムベル親兵基地には血だらけで倒れたレイと無傷のミルネバの二人だけが残った。


 いや、違った


 二人の様子を本部の陰に隠れて見つめる二人の少女の姿があった。

 一人はボロボロになった服を着たハル。そしてもう一人は背中に大きな穴のあいた服を着ている、オレンジ髪の女の子。

 その二人を見つけると、ミルネバはにっこりと笑った。


「おやミクル無事だったのか。そちらの可愛いお嬢ちゃんはハルちゃんだね。初めましてお前さんも無事で何よりじゃ。

 ミクル、お前さんはかなり苦戦したようだがね。」


「これは、その、仕方なかったのよ。

 後ろからいきなり攻撃されて、逃げるのが精一杯だったの。

 異装いしょうもついさっき使い物にならなくなっちゃって……。」


 そう答えたのはオレンジ髪の女の子だった。

 ミルネバに苦戦だと言われて少し言い訳口調になっている。


「そうかい。そう言えばさっき此処へ侵入した時ジョン・ジョンバルトの魔力を感じたよ。多分お前さんを攻撃したのはその子だよ。

 どうやらレイが倒してくれたみたいじゃがね。」


 ミルネバはそう言ってレイに近づいた。

 レイはうつ伏せに倒れている。ついさっきセリエーヌの剣を防いだ光はもう消えていていて、今は地面に広がった血が日光を反射させ、生々しく鈍く光っていた。

 ミルネバは静かにレイの首筋に手を当てて目を閉じた。脈をはかっているようだ。

 すると、今までオレンジ髪の女の子の背中に隠れていたハルが恐る恐る聞いた。


「あ、あの、レイちゃんは大丈夫なんですか?」


「ああ、なんとかね。

 私の家に戻ってきちんと治療すれば、問題ないよ。

 しかし、この子の体は傷だらけだね。

 顔の傷は目立つけど、服で隠れていた部分は知らなかったよ。

 この若さで意外と苦労してるんだね。」


 ミルネバはそう言ってレイの頬を撫でた。右頬の傷を。

 ハルは、ミルネバの言葉を聞いて安堵の息を漏らした。レイが大丈夫だと聞いてひとまず安心したのだった。

 安心したら、今度はハルに疑問の渦が押し寄せてきた。


「あの、聞きたいことが山ほどあるんですけど。

 なんで、私とレイちゃんを助けてくれたの?

 どうしてそんなに強いの?

 あの親兵さん達はどこに行ったの?

 お婆さんは何者なの?」


「ストップ、ストップ!

 そんなにまくし立てられても答えられないよ。

 それに、ここに何時までも居るのは危険じゃ。直に援軍が来る。

 話は私の家に帰ってからでいいかな?」


「あ、はい、すいません。

 でも、一つだけ聞いても良いですか?

 なんで男の子だったこの人がいきなり女の子に変わっちゃったの?」

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