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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第四十八話 指名手配の真実

「随分と好き勝手に暴れてくれたな。」


 親兵の輪から一人の女性が出てきた。

 凛々しい顔立ちをしたその女性を見て、レイとハルの顔色が変わった。

 (ミクルは未だに気絶しているので、何の反応もない)


「セリエーヌ!」


 二人は同時に叫んだ。

 忘れようにも忘れられない、その事件の引き金を引いた張本人が目の前に現れ、困惑していた。


「まったく、脱走犯を見つけるために街中を探し回っていたのが馬鹿みたいだ。

 当の貴様らは、ここに戻ってきていたんだからな。」


 セリエーヌは剣を鞘から抜き取った。

 その刃はすでに白い光が纏っている。


「レイちゃんどうするの?」


 レイの腕にしがみつき、ハルは心配そうにレイを見上げた。


「大丈夫だよ。後はもう逃げるだけだ。

 何の心配もしなくていいよ。」


 そう、いくらセリエーヌが現れたところで、後は逃げるだけなのだ。

 三人が一カ所に集まっているため、レイが二人を抱えてメイルを使えば、一瞬にしてこの基地から逃げることが出来る。


 だが、セリエーヌは余裕そうに笑った。


「ふんっ、貴様は阿呆か?

 私が昨日貴様を逃がしてからなんの策も講じていないと、本気でそう思うのか?

 もしそうなら随分羨ましい頭をしているのだな。」


「どういうことだ?」


「こういうことだよ。」


 セリエーヌはそう言うと剣を地面に突き立てた。

 すると、剣を纏っていた光が波紋状に広がり始めた。まるで、一枚の大きなガラスに石をぶつけたように、蜘蛛の巣状の光の変が広がっていった。

 その光はあっという間にレイ達の足元にまで広がった。

 光の進行を見てハルが「ひっ。」飛び上がったが、別段影響は無かった。


「安心しろ、と言うのは少し違うかな。

 だが、初めにこれだけは言っておく、この光は貴様らへの攻撃ではない。

 退路を断つための包囲網だ。」


 セリエーヌの言葉を聞いて、レイの顔に焦りが広がった。


「ハル、ミクルを掴め!

 今すぐここから飛ぶぞ。」


 レイはそう叫ぶとすぐさま杖を構えた。

 ……が、時すでに遅しだった。


 基地を囲む塀に達した光は、その波紋を塀にまで伸ばした。そして、塀を侵食し終えると、光の線は基地全体をドーム状に覆ったのだった。


魔牆壁ましょうへき


 セリエーヌは一言そう言った。

 その言葉が何を指しているのか、それが分からないほどレイとハルは無知ではなかった。

 だが、セリエーヌは話し続けた。まるで、とっておきの玩具をひけらかす子供のように。


「アステカの侵攻以降、王国議会はライムベル親兵基地や国王軍施設の警備システムを強化していてね、これもその一つだ。」


 セリエーヌはそう言って空を指さした。いや、この場合指さしたのは、あの光のドームなのだろう。


「魔牆壁というプロウのマジックアイテムだそうだ。

 この基地の塀に、私が力を注ぐことで発動する。

 能力は、魔法の不可侵化だ。外からは勿論、中からもな。」


 レイは愕然とした。

 予想以上に、魔牆壁の能力が強すぎる。

 魔法の不可侵化ということはつまり、完全な瞬間移動でも使わない限り、このドームから逃げ出すことは出来ないということなのである。


 メイル(移動魔法)には、基本的に二つの種類が存在している。

 一つは点と点を結ぶ直線上を、高速移動するタイプ。

 もう一つは、時空を曲げることで点と点を結ぶタイプだ。

 レイのメイルは前者だ。自分が居る点と、目視で確認できる範囲の点とを高速に移動する魔法。

 そのため、術者以外は強烈なスピードに酔ってしまったりする。


 魔法の通過を妨げる魔牆壁は、レイの魔法にかなり有効なマジックアイテムだった。


「貴様の調べはついているんだよ、レイ・エルバレム。

 五芒星の力を持つ魔法使いだったというのには、流石に驚かされたがな。」


 セリエーヌは左手を腰に当て反対側のてで剣を抜きながらそう言った。

 その口調から、嫌味や馬鹿にした様子は感じられない。どうやら本当に驚いているようだ。

 だが、驚いているのはセリエーヌだけではない。レイもまた、聞き慣れない言葉に首を捻った。


「五芒星?なんだそれ!」


「とぼけるのも大概にしろ!調べは既についているんだよ。

 昨日、私は貴様と闘って、そして一つの疑問を持った。

 貴様が何故、膨大な軍力を有するアステカに必要とされているのか。何故、王国議会が仰々しく特別指名手配などを掛けたのか。

 確かに貴様には、それなりの戦闘力があった。だが、この私には手も足も出なかった。その程度の力だ。」


 セリエーヌはそこで一瞬語気を強め、言葉を一旦切り、そしてまた話し出した。


「だがその謎も、すぐに解けた。

 五芒星の魔法使いだったのだからな。

 一人で、基本五系統の魔法をすべて使う人間など、私は聞いたことも見たことも無かった。

 数々の戦闘と死線を乗り越えてきたこの私でもな。

 王国議会がどんな手段を使ってでも殺したいわけだ。」


 そこでまた言葉を切り、セリエーヌは剣をレイに向けた。


「一つ良いことを教えてやろう。貴様にかけられたスパイの容疑、あれは嘘だ。

 本当の容疑は、もしかしたらアステカに利用されるかもしれない危険因子、というものだ。」

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