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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第四十七話 思いがけない再会

 レイは二人の元へ駆け寄った。

 爆風の切れ目に見えた二人の人物。それは、レイにとってどちらも見覚えのある顔だった。


「ミクル!ハル?!」


 先程の爆発で、二人とも顔が血だらけになってはいるがレイにはハッキリと分かった。


「ミクル、どうしたんだよ。なんでハルが君と一緒にいるんだ。」


 レイは呼びかけるがミクルの反応はない。

 それを見て、レイは慌てて杖を取り出し二人に向けた。


「ミーユ」


 レイがそう唱えると、破れた服の合間から見えていた二人の痛々しい傷が、まるで早送りのようなスピードで治っていった。

 二人の傷はあっという間に無くなった。


「ミクル、ハル、大丈夫か?

 お願いだよ、返事してくれ……」


 傷の消えた二人の体を起こして、呼びかけるが反応はない。

 レイの目からはまた涙が溢れてきた。


 すると、ミクルとハルを腕に抱えて泣くレイに誰かが話しかけてきた。


「おや?もう一人仲間が居たのですか。

 これは面倒ですね。またネズミの命を奪わなければならないのだから。」


 ジョンバルトだった。


「誰だお前!

 ミクルとハルをこんなにしたのはお前か!」


 レイは二人をそっと寝かせ、立ち上がってそう叫んだ。

 杖はしっかりとジョンバルトに向けている。


「おや?お前も魔法使いだったのか。

 それは……残念だ。

 私のような才能有る魔法使いと出会ってしまったのだからな。

 私はライムベル親兵魔法騎士隊第15小隊隊長補佐で二芒星の魔法使い、ジョン・ジョンバルト様だ。

 と言っても、ネズミの小さな頭では、私の偉大さは理解できないだろうがね。

 それと、そこの二匹のネズミを駆除したのは、当然私だ。」


 ジョンバルトは、そう言って笑った。

 まるで、杖を向けられていることなど無視するかのごとく。

 だがジョンバルトは知らない。今の言葉でレイの怒りが沸点まで達し、目つきが変わったということを。

 そして、目つきの変わったレイの力は、想像を絶するということを。



 レイはジョンバルトを睨み、杖を左手に持ち替えると小さく呪文を唱えた。


「メイル」


 次の瞬間、レイはジョンバルトの一歩手前に現れた。

 その時のレイの顔は、今までのどの顔よりも怒りに震え、その右手は今までで一番堅く握られていた。

 レイはメイルでジョンバルトに近づくと、逃げる暇を与えずに右手を振り抜いた。


「ぐはっ……」


 ジョンバルトは、体を二つに折って倒れた。

 攻撃自体は魔法を使っていない、正真正銘ただのパンチだ。

 だが、どんな魔法よりもレイの怒りをダイレクトに伝える攻撃だった。

 レイは倒れたジョンバルトを怒りに揺れる目で睨んでいる。


「お前が、お前なんかが、ミクルを倒せるわけが無いだろ。

 どんな卑怯な手を使ったかは知らないけど、お前みたいな奴に負けるミクルじゃないことは、僕が一番よく知っている。」


 レイはそう言うと杖を構えた。

 ジョンバルトを殺さないと、到底レイの怒りは収まらなかった。


「まさか怒ったりしないよね。

 僕はお前がハルとミクルにしたことと、同じことをするだけなんだから。」


 そう言ったレイは、別人のようだった。

 今のレイを例えるなら、そう悪魔のようだった。


 レイは怒りに身を任せ、呪文を唱えようとした。が、その時レイの後ろから声がした。


「止めて、お兄ちゃん。」


 ハルだった。

 弱って掠れた声だったが、確かにハルの声だった。


 その声を聞き、レイは勢いよく振り返った。

 レイが見た先には、立ち上がることは出来ないが、顔だけはしっかりとレイを見据えたハルの姿があった。


「私を、人殺しの妹にする気?

 お願いだからそんなことやめて!

 お願いだからそんな怖い顔しないで!

 私は大丈夫だから。」


 ハルは精一杯の声でレイにそう言った。

 優しいハルの、心からの願いだった。


「だけど、コイツはハルとミクルに酷いことを……」


「だけど!」


 反論しようとしたレイに、ハルがまた声を上げた。


「だけど、その人も生きてるんだよ。

 私達と同じなんだよ!」


 本来は、話すこともままならない程の重傷なのに、ハルは話し続ける。

 自分の命を奪おうとした相手に、何故そこまで優しくできるのか理解しがたい。


 だがつい最近、故郷と家族のように慕っていた人々を失ったハルにとっては当たり前のことだったのかもしれない。


 命は大切


 そんな、当たり前のことをハルは誰よりも強く感じていた。


 それは、レイも同じだった。

 レイは、今度はハルの言葉通り素直に杖を引いた。

 溢れんばかりの怒りは、何故か跡形もなく消えていた。

 レイはハルの元へ駆けて行った。


「ごめんな、ハル。

 僕はどうかしていたよ。ハルを助けられれば、もう言うことなんか無いのに。」


 レイはそう言ってハルの肩を抱いた。

 優しく、だが強く。

 ハルも懐かしい温もりに身を任せた。

 兄妹がまた出会えたことに、幸せを噛みしめていた。



 だが、レイは失念していた。

 ここが敵の本拠地であることを。



 いつの間にか、レイ、ハル、ミクルを取り囲むようにライムベル親兵が立っていた。

 どうやらパトロールに出ていた親兵が騒ぎに気付き帰ってきたようだ。

 

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