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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第三十七話 修行の真意

「・・・・・。」


 レイはキョトンとした顔で座っている。

 今の状況が全く理解できていなかった。


(たしか…、ジャングルで目を閉じて光が目の前に…。)


 記憶もとても曖昧だ。

 ジャングルでさまよっていた時間も曖昧だ。一瞬だったような気もするし、数日間迷っていた気もする。

 とにかく、頭の中にもやが立ちこめ、上手く回っていない。


「何が何だか分かってない様子だね。

 それじゃ説明してやろうかね。」


 お婆さんはそう言って、レイの疑問を解消するような話をしだした。


「まず、お前さんに言っていた事だが、あれは嘘じゃ。」


 お婆さんは唐突にそう言った。


「僕に言っていたこと?」


「あれだよ、今回の修行が肉体を鍛えるものだと言うことさ。」


 レイはその言葉を聞いて納得した。意識を失う前に、レイの考えていたことは正しかったのだ。


「それどころか、この修行に肉体は一切使ってさえいないんだから。」


「へ?いやそんなことはないですよ。だって僕はずっとジャングルを歩き回ってたんですよ!

 肉体はむしろ酷使しましたよ!」


 お婆さんが言ったことに、レイは激しく講義した。

 お婆さんはその姿を見てハッハッハと笑った。


「お前さんはそこから間違ってるよ。

 お前さんは元々ジャングルになんて行ってないんだから。」


 レイはもう、何が何だか分からなくなっていた。


「行ってますよね…?」


「行ってないよ。」


 沈黙が流れた。

 するとお婆さんは、ベットの横に置いてある引き出しから何かを取り出した。それを見た瞬間、レイの表情は固まった。


「なんで僕の杖が?」


 そう、お婆さんが取り出したのは、紛れもなくレイの杖だった。


(僕の杖は、修行が始まる前にお婆さんに折られたはず…。それじゃあアレは何だ?)


 あの時、お婆さんはレイの杖を作り直すと言っていた。しかし、お婆さんが持っているそれは作り直されたものなどではなく、正真正銘レイの杖だった。レイはその事を直感で感じ取っていた。


「これがここにある意味が理解できるか?」


 お婆さんはそう言って杖をひょいとレイに投げた。

 レイは杖を受け取り、しげしげとそれを見つめた。やはりレイの杖で間違いない。


「お婆さんはあの時杖を折るふりをしたんですか?」


「残念、外れだ。」


「それじゃあ、折っていたのは別の物だったとか?」


「それも外れだよ。」


 お婆さんは、レイに考えさせて面白がっているようだ。


「それじゃあ、なんでなんですか?」


 すると、お婆さんは、またハッハッハと笑ってこう言った。


「あれは全てお前さんの"夢"さ。」


「夢?」


「そうさ、お前さんは、あの部屋に入ってジャングルを歩き回ったつもりなんだろうが、それは違う。

 お前さんは、あの部屋に入った時点で眠りについたのさ。それ以降のことは全てお前さんの夢さ。」


 お婆さんの言うことは突拍子の無いことだ。しかし、不思議とレイは素直に受け入れられた。なぜなら、あれが夢だったとしたら全てに説明が付くからだ。

 ぼんやりとした頭、疲れの全くない体、ジャングルを歩き回ったとは到底思えないきれいなままの服、そして、折られることなくレイの手の中にある杖。

 そのすべてを、あれは夢だったと言うことで説明できるのだ。


「でも、何で?」


 聞きたいことが多すぎて、とてもアバウトなレイの質問に、お婆さんはちゃんと応えた。


「お前さんを眠らせて魂だけをある場所に飛ばす為さ。」


「ある場所?」


「それはな、精神の世界さ。」


「精神の世界?」


 レイはお婆さんの言葉に引っかかった。


(どこかで聞いたような…。)


 だが、レイが何かを思い出す前に、お婆さんが話し出した。


「精神の世界、まぁこの世界の外側の世界。とでも言った所かね。

 そこに私の転移魔法で、お前さんの魂を送ったのさ。」


 レイが戸惑うのをお構いなしにお婆さんは話し続ける。


「なぜ精神の世界にお前さんの魂を送ったかというと、そこでなら魔力を鍛えることが出来るからな。」


「え?」


 レイは、この日何度目かの疑問を呈した。


「確か魔力を鍛えることは出来ないって…。もしかしてそれも嘘だったんですか?」


「おしい、半分正解だよ。

 まず、基本的な事を教えよう。人は全員魔力を持って生まれる。その量が特別多い人間が、私やお前さんのような人間だ。そして、この世界にいる限り魔力が増えることはない。」


 そこまでお婆さんが話した後、レイが反論しようとした。しかし、お婆さんはそれを制した。


「少し黙って聞いてくれるかね。」


 どうやら質問は最後に、と言うことらしい。


「魔法を勉強していると自分の魔力が強くなったと感じる事がある。しかし、それは扱いがうまくなった訳で魔力自体が増えたわけではない。

 例えば魔力を100生まれ持ったとする。でも、はじめのうちに使いこなせるのはせいぜい1/10が良いところだ。それが練習するうちに1/7になり、1/5になっていく。今のお前さんは自分の力の1/2程を使いこなせている。

 だが、それは魔法を使って、使って、使って、使って、使って、使ってやっと上達するもので、一朝一夕に上達するものでは無いんだよ。

 だから、精神の世界だ。

 詳しいことは私も知らないが、精神の世界で訓練すると魔力を上げる事が出来る。」

 

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