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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第三十五話 ジャ、ジャングル?!

「それじゃあお前さんの杖を出しな。」


 お婆さんがそう言ったのは三人がジャングルに入った後だった。

 扉を閉めるとそこは南国のジャングルそのものだった。


「はい、どうぞ。」


 決意が固まっていたレイは迷うことなく杖を差し出した。


「はいよ。」


 そう言って杖を受け取ったお婆さんは、それを二つに折った

 折った!


「え?え~~?!」


 レイはそう言うとしばらく固まってしまった。


「なんだ情けない声を上げて。

 まるで自分にとって最も大切なものを壊されたかのような声を上げて。」


「たった今目の前でそれをされたんだよ!」


 レイの嘆き声はジャングルに吸い込まれた。


「いきなりなにしてくれてるんてすか。

 それが何なのか分からない訳じゃないでしょ。」


「ただの棒だよね。」


「魔法の杖ですよ。

 それがないと、僕は魔法すら使うことが出来ないんですよ。分かってるんですか?」


「いや、これはただの棒だよ。

 お前さんは何を言ってるんだい?

 それよりふざけてないで杖を出しなさい。そうしないと修行が始まらない。」


「だから、それが杖なんですって。」


「馬鹿言うんじゃないよ。こんなものが魔法の杖なわけあるかい。」


 お婆さんはそう言うと二つに別れた杖をポイと投げ捨てた。


「ばぁちゃレイの言ってることが本当だ。

 それがレイの魔法の杖だよ。俺はレイがそれで魔法を使うところを確かに見た。」


 そう言ったのは二人の様子を見かねていたミクルだった。


「なに、それじゃあ昨日言っていたことは本当だったのかね。

 これは驚いた、まさかそうだったとはな。」


 お婆さんは一人で驚いて、一人で納得してしまった。

 レイとミクルは置いてけぼりである。


「それは予想していなかった。てっきりミクルの勘違いだと思っていたんだがね。

 そうなると本当にめんど…、いや、案外都合がいいかもしれんな。」


 お婆さんはそんなことを呟いていた。


「都合がいいって、そんな訳ないでしょ。

 杖がないと僕は魔法が使えないんですよ。それがないと修行もできないし、ハルを助けに行くことも…。」


「そう怒りなさんな。杖なら私が作り直してやるよ、こんなのよりも、もっとすごいのをね。」


「え?お婆さん杖作れるんですか?」


「なに言ってるんだ、作れるに決まってるだろ。魔法の杖もマジックアイテムの一種なんだからね。」


「そ、そうなんですか。」


 初めて知った。

 レイはジンに渡された杖をずっと使い続けていたので、杖の作り方など全然知らなかった。


「まぁそれなりに時間はかかるけどね。

 それよりも今は修行だよ。」


「いや、あの聞いてました?

 杖がないと魔法の修行なんて出来ないんですけど。」


「それなら心配ない、元々魔法を強化するつもりはなかったからね。魔法の強さなんて魔力の量とそれを伝える杖の性能によって変わるだけで、訓練したところで対した進歩は願えないからね。」


「じゃあなにを鍛えるんですか。」


 レイは首をかしげた。お婆さんの目的が全く見えてこない。


「そんなの決まってる、肉体だよ。」


 それに続いてお婆さんは、レイが何度となく聞いた言葉と、似たようなことを言った。


「最近の若い魔法使いは、魔法が使えると過信し慢心する。そして本来の力を鍛えることを疎かにしてしまっている。

 魔法とは本来肉弾戦と併用することで本来の力を発揮する。肉体を鍛えることは魔法を鍛えることと同義なんだよ。」


 確かにそうかもしれない。レイも肉体を鍛える重要さはよく知っていた。


「分かりました、やります。

 それで、僕は何をすれば。」


「簡単なことだよ。捜し物をすればいい。ただそれだけだ。」


「捜し物?なにを探せば。」


「お前さんに探してもらうのはこれだよ。」


 そう言ってお婆さんが取り出したのは金色の箱のような物だった。


「今からこの箱をミクルが隠してくる。

 お前さんはこのジャングルの中でこの箱を探しながら猛獣達と闘えばいい。簡単だろ?」


 お婆さんはそう言うと金色の箱をミクルに投げた。


「行くんだよ。」


「分かった。

 レイ、おめぇなら大丈夫だ、頑張れよ。」


 そう言うとミクルはジャングルへ走っていった。

 レイはその様子をぽかんと眺めていた。


「え?いや、ちょっとした待ってくださいよ。何なんですかその条件!無理に決まってるでしょ。」


 こんな広い、どこまで続くか分からないようなジャングルで、あんな小さな物を探し出せる訳がない。


「大丈夫だよ。お前さんなら大丈夫さ、頑張るんだよ。

 そうそう、目で探そうとしても見つからないよ。お前さんにはもっとすごい力があるんだ、探し物にそれを使わない手はないよ。」


 そう言うと足早に扉を開けて家に帰ってしまった。

 お婆さんが扉を閉めると、扉は跡形もなく消え去った。


「え?え~~?!

 ちょっと、まだ何も分かってないんですけど。お婆さん?お婆さん!お婆さ~~ん!」


 レイの声は猛獣達の叫び声やうめき声にかき消され、誰にも届かない。

 お婆さんからの返事も、当然ない。


「どうすればいいんだよ。」


 途方に暮れる、という言葉を説明するのなら、今のレイよりもピッタリな人はいないだろう。

 ジャングルに閉じこめられて、レイは途方に暮れていた。 

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