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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第二十八話 夢の中で

 夢を見ていた。

 レイは何もない荒野に立っていた。

 いや、何もなくなってしまったといった方が正しいだろう。

 所々に家屋の跡らしき物が残っている。木々が立ち枯れている。

 何かとんでもない天災に襲われたような様相だ。その景色が見渡す限りずっと続いている。

 だがその周辺には人の気配が全くない。

 今まで皆勤賞で登場していた女の子の姿も見えない。

 すると突然、レイの周りの景色が変わった。

 変わったというより、消えたと言った方が正確だ。

 それが夢なのかさえ定かではない、真っ暗な景色へと変わってしまった。

 いや真っ暗ではなかった。

 白い光がゆっくりと近づいてくる。

 いや、光が近づいてくるのではない。

 白い光を放つランタンを持った誰かが近づいてくるのだ。

 その数はだんだんと増え続けて、一番先頭がレイの目の前に来たときには千を越えていたと思われる。

 光の明るさに目が慣れ始めた頃、レイは光を持った者の正体に気づいた。

 黒い体、尖った耳、獣のような顔、背中には翼が生えている。

 この姿は、悪魔そのものだった。



 ……。



「あれ?」


 レイは首を捻った、いつもならここで何かしらの邪魔が入り夢が終わるはずだ。だが、今日はそんな兆しがない。

 夢の雰囲気もいつもとは違うような…。


「心配しなくても良いですよ。

 話しさえ終わればあなたは目覚めます。」


 レイがそんなことを考えていると、悪魔が話しかけてきた。

 驚いたことにその声は女性のものだった。

 悪魔に人間と同じ性別があるかは不明だが。


「お前、何者なんだ?

 僕に何をしよっていうんだ。」


 悪魔の反応はない。

 悪魔はランタンを静かに置くとおもむろに、頭に両手を添えた。


「なんだ、何をする気だ。」


 いくらこれが夢で、相手が女性の声だとしても悪魔であることが、レイにとってどうしようもない恐怖になっていた。


 だが状況はそんな緊迫したものにはならなかった。


 悪魔が「よいしょ。」といって頭を持ち上げたのだった。


「え?それって取れたの?。」


「さすが、ナイスツッコミです。」


「驚いただけだよ、別にツッコんでなんかないよ。」


 レイはあまりの衝撃に、悪魔と普通に会話していた。

 いや、もはや相手が悪魔かどうかも怪しい。なぜなら悪魔の顔をした仮面(被り物?)を外したその顔はどう見ても人間のそれだったのだ。


「しかし、これを被っていると髪の毛が蒸れて大変です。」


 そう言うと女性は、短め髪の毛を小さく振った。女性と呼ぶには幼げなボーイッシュな感じの女の子だった。レイはその顔に見覚えがあった。


「君、夢に出てきたお姫様だよね?」


「そんな、美しくて麗しいお姫様だなんて、お上手ですね。」


「いやそんなこと言ってないから。」


 レイは勝手に自己評価を高めた女の子に怒りを覚えたが、ふと我に返った。


「そういえばこれって俺の夢なんだよな。

 自分の夢の登場人物に怒ることもないか。」


「それは少し違いますよ。」


 レイは独り言のつもりだったのだが、女の子はレイの考えをやんわりと否定した。


「少し違うってどういうことだ?もっと怒れっていうのか。」


「そっちじゃありません。ここがあなたの夢だというところです。」


「なんだって?」


 そんなはずはない。確かにこれは夢のはずだ。その証拠に…レイは目の前にいる女の子の頬を両手で引っ張った。


「いやーー。

 い、いきなり何するんですか。」


 女の子はレイの手を振り払い、赤くなった頬を優しく撫でた。


「痛いの?」


「とってもです。」


「それはごめんなさい。謝罪します。」


「いいですよ。あなたがここに来てくれただけで私は嬉しいので、このことは不問とします。」


 女の子の子は満面の笑みを浮かべてそう言った。


「それはどうも。

 あの、それでここが僕の夢じゃないってどういうことなんだ。ここが僕の夢じゃないとすると、ここは一体どこなんだよ。」


「ここは精神の世界です。」


「精神の、世界?」


「はい、そうです。」


 女の子はもう一度笑顔でそう言った。


「魂の世界、心の世界、輪廻転生の狭間の世界。

 さまざまな呼び名がありますが、私達の組織では精神の世界と読んでいます。」


「君たちの組織?」


「はい、私達はスラヴェルという組織に所属しています。」


「スラヴェル?なんだよそれ。君たちは一体何者なんだよ。」


「あら、そう言えば自己紹介がまだでしたね。」


 女の子はそう言うと懐からなにか小さな紙を取り出してレイに渡した。


「私はアリスと申します。

 スラヴェルのリーダーで、悪魔族の長をしております。以後お見知りおきを。」


 アリスと名乗った女の子に渡された紙には、可愛らしい字で先ほどの肩書きが書かれていた。

 そして、その裏には大きく魔王という二文字が書かれていた。


「ま、ま、ま、魔王?!」


「はい、魔王です。」


 そう言って笑ったアリスは、とても魔王には見えなかった。

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