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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第二十五話 気になる貼り紙

「なぁミクルあれは何だ?」


 レイがそう言ってミクルの肩をたたいたのは、道の外れにある掲示板を見つけたからだ。

 その掲示板は、国王からの政令やニュースなどを市民に伝えるための物だった。そこには指名手配犯の写真なども貼られている。

 レイが見つけた掲示板には。ダルメアとレイとハルの写真が貼ってあった。だが、レイが気になったのはそれではない。その掲示板には四人の写真が貼ってあったのだ。レイ達三人が並んで犯罪者として大袈裟な罪状と共に貼り出されている横に少し雰囲気の違う写真が貼ってあった。

 レイは何故かこの写真から目が離れなかった。言いようのない違和感が、頭からか胸からか分からないが、どこかから溢れ出してくるような感覚に陥っていた。


「うわっ、おめぇ本当に指名手配されてるのかよ。てっきり嘘だとおもってたよ。」


「そうじゃなくてその横の写真だよ。

 あの女の子も指名手配されてるのか?」


「いやそうじゃない、あれは人捜しの貼り紙だな。」


「人捜し?」


「そう、あれはペンズ卿の娘だぜ。なんか数日前に家出したんだってよ。それから大変だぜ、特別指名手配犯と同列扱いだからな。

 それがどうしたんだ?おめぇこの街に来たばっかだからペンズ卿の娘なんて知らないだろ。」


「いやどこかで見たような気がしてさ。」


 レイはそう言うともう一度そのペンズ卿の娘の写真を見た。


「どうした、一目惚れでもしたか?

 やっぱ貴族のお嬢様は可愛いよな。」


「そんなんじゃないよ。なんか乱暴そうだし、髪の毛はオレンジだし正直あんまりタイプじゃないかな。」


「そうなのか…。」


「ん?どうしたんだ。なんでミクルが落ち込むんだよ。」


「別に、何でもないよ。

 それよりも急ごうぜ、こんなとこで道草してる暇ねぇよ。」


「そうだな、行こうか。」



 ミクルはそう言って再度レイを急かした。

 レイも疲れてはいたので素直に従ったが、ミクルの態度に疑問を感じていた。

 写真に対する違和感は、結局分からなかった。


 ミクルは明らかに歩くペースを上げ街中を進んでいく。路地を右へ、左へ、また右へ。

 レイが道順を覚えるのを諦めた頃、ミクルが一軒の家の前で止まった。


「着いたぜ、ここが俺の婆ちゃんの家だ。」


 そう言ってミクルが指差した家は、古びた感じや汚い感じはしないが、どことなく近付くのをはばかられる、そんな雰囲気の建物だった。


「あ~やっと着いたのか。」


 レイは取りあえずちゃんとした家だったことにホッとしたように言った。足が棒のようになり、まぶたにかかる重力が数倍に膨れ上がったようになっている。


「疲労困ぱいって感じだな。おめぇ田舎育ちだって言うのにほんと情けないよな。」


 ミクルはレイをからかうように言うと家の扉の取っ手に手をかけた。すると、ミクルが開ける前に内側から勢い良く扉が開かれた。


「ミクル~あんたこんな時間まで一体どこほっつき歩いてたんだよ。」


 その家から出てきたのは、豪快で恰幅のある元気なおばちゃんだった。


「うげ、婆ちゃんなんでこんな時間まで起きてんだよ。普通寝てるだろこんな時間。」


 ミクルそう言うと驚いて仰け反った。家からお婆さんが出てきたのが、よほど意外なようだ。


「そら起きてるよ、ったくこの子はいつまで経っても心配させるんだから。」


 お婆さんはそう言うと、やれやれといった感じで首を振った。


「こっちも色々だったんだよ。それに、今日の仕事は婆ちゃんの言いつけなんだからそんなに怒るなよ。」


 ミクルはそんなお婆さんに必死の弁明している。だが、このお婆さんはミクルの話を半分も聞いていないようだ。


「偉そうに言うな。どうせしくじってペンズの犬にでも捕まってたんだろ。」


「そうだよ、だから頑張って脱獄してきたんだろ。だから疲労困ぱいの孫に、もっと他に言うことがあるだろ。」


 お婆さんの鋭すぎる指摘に、ミクルは開き直った。お婆さん相手に口先で勝てないことをよく分かっているのだ。


「う~ん、そうだな。」


 ミクルのお婆さんは、悩んだように頭を捻ると右手をグーにしてミクルの頭をポカリと殴った。


「いてぇ~。」


 ミクルは両手で頭を抑えるとうずくまってしまった。

 この返しはミクルにとってもさすがに予想外だったようだ。


「お前にはこれで十分だよ。」


 お婆さんはそう言うと右手を軽く振った。


「この暴力ばばあが。」


「なにか言ったかい?」


 ミクルがボソッと呟いた言葉を目聡く、ではなく耳聡く聞き留めたお婆さんはギロッとミクルをにらむと低い声で言った。

 ミクルはその声を聞くとビクッと一度身体を震えさせゆっくりとお婆さんの顔を見た。


「い、いや何もいってないよ。」


 そう言ったミクルの声は少し震えている気がした。身体も心なしかこわばっている気がする。


「そうかい、それなら良いんだよ。」


 お婆さんはそう言うとガハハハと大口を開けて笑った。動作の一つ一つが豪快な人だなとレイは思った。マリアさんが年をとったらこんな感じになるんじゃないだろうかなとも思いながら見ていると、お婆さんの目がレイに向いた。


「で、このダサい服着たガキは誰だよ?」


 お婆さんは一通り孫と戯れると、やっとレイに向き直って話しかけた。

 レイは疲れていたが、どうしても、どうしても言いたいことがあった。


「長いよ!」


 今からお世話になろうとしている相手に向かって、失礼は百も承知している。しかし、どうしても苦言を呈さないことには腹の気が治まらなかった。


「人のことほっといて二人で話しすぎだよ、普通もっと早く話しかけるでしょ。

 あと、ミクルの服のセンスはあんた譲りか!」


 疲れているはずなのだが驚くほどスラスラと言葉がでた。

 ミクルのお婆さんはそれを聞くと、またガハハハと笑った。


「ミクル、お前面白い友達が出来たな。初対面で私にここまで楯突くのはコイツが初めてだよ。」


「レイって言うんだ、親兵のとこの牢屋で出会ったんだ。」


 ミクルが勝手にレイの紹介してしまった。


「レイか、言い名前だね。

 レイ、うちの孫が迷惑をかけたみたいですまなかったね。こんな子だけど友達を連れてきたのは初めてなんだ、どうかこれからも仲良くしてやってね。」


 ミクルのお婆さんはレイに優しくそう言うと、やっと二人を家の中に招き入れた。


 レイはこの時ある物を見逃してしまっていた。


  [マジックアイテム仲介所]


 そう書かれた看板が建物の横に置いてあったのだ。

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