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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第二十四話 牢屋を抜け出して

 二人は、暗い山道を麓へ向け下っていた。

 レイがメイル(移動魔法)を使うと申し出たがミクルが断った。

 レイの魔法が怖いらしいのだ。

 だから今二人は、魔法で近道することなく歩きにくい山道をゆっくりと下っているのだ。


「レイ、お前どうして旅をしてるんだ?

 やらなきゃいけないことってなんなんだよ。」


 ミクルはレイの先を歩きながら、後ろを振り返ることなく話し出した。

 レイの事情は牢で簡単に伝えていたが、ダルメアのことは伏せて話していたのだ。

 指名手配のことも誤魔化していた。


「あんまり人に話すようなことじゃないんだけどな。」


 レイはそれだけ言うと少し黙った。まだ、ミクルを完全に信用出来ていない自分が居ることにレイは気付いていたのだ。

 いくら自分で悪役ではないと言っていても、ミクルが犯罪を犯して捕まっていた事に変わりはない。

 本当のことを話していいのか計りかねていた。


「大切な人を助けに行くんだよ。」


 レイは、散々迷ったあげくこれだけ言った。

 ミクルは、


「そっか。」


 と呟くと黙ってしまった。レイの迷いに気付いているのかもしれない。が、ミクルはずっと前を向いて歩いているのでどんな表情をしているのか、レイの位置からは知ることが出来ない。


「ミクルもやらないといけないことがあるんだろ、それはなんなんだ?」


 話題を自分から逸らし、ミクルのことを聞いた。脱獄の計画を提案されてからずっと気になっていたことだが聞けずにいたのだった。


「俺は…。」


 ミクルは話し出そうとして口をつぐんだ。レイと同じ葛藤があるのだろうか、ミクルにしては歯切れが悪い。


「今は話せない。だけど、婆ちゃんの家に着いて落ち着いたら話すよ。」


 お婆さんの家に何があるのか分からないが、そこでなら話せるということだろうか。


「分かったよ。僕も話せるようになったら絶対話すからさ。」


 レイはそう言うと黙ってしまった。ミクルも牢屋での賑やかな感じが嘘であるかのように静かになってしまった。時折、足元の注意を促すくらいだ。

 気まずい空気が流れる中、二人は黙々と山を下っていった。

 徐々に空が明るくなり始めていた。レイは黙って歩きながら、夕方に別れた妹のことを思った。


(ちゃんと逃げれたのかな…。)


 ハルは細かい繊細さを必要とする魔法ならレイよりもうまい。しかし、戦闘だけに注目すればからっきしだ。

 気弱で臆病な性格はレイよりも頼りない。泣き虫で弱虫、そんな妹が親兵からちゃんと逃げれたのか不安しかない。

 チート(探知魔法)を使えば見つけられないことも無いのだが、大量の魔力を消費するためそう簡単には使えない。魔力を回復できる状態になってから探そうと心に決めていた。



 そんな風に考えているとミクルが急に振り返った。


「山を出たぞ。」


 ミクルはそう言って後ろを指差した。

 さっきまで木に隠れて見えなかったイーストテッドの街並みが広がっていた。


 朝日が山と空との狭間から街に射し輝いて見えた。


「すごっ…。」


 レイはそれを見て言葉を失った。夕方は街に入るなりセリエーヌ率いるライムベル親兵遊撃隊に襲われたのでしっかりとイーストテッドを見る隙がなかった。だからレイがイーストテッドの街並みを見るのは初めてだと言っていい。


「これが俺の街だ、スゴいだろ。」


「あぁ…スゴいよ。こんなに大きくて、家もいっぱいあって、道には石が敷いてあるし、イサカ村とは大違いだよ。」


 レイは、初めての都市に呆然として言った。口がだらしなく開いている。


「まぁ、そんじょそこらの田舎とは比べ物にならねぇよ。なんたって、東部最大の都市だからな。

 それはそうと早く行こうぜ、夜が明けたら人が多くなって面倒だ。」


 ミクルは、呆然としたレイの肩をたたいてそう言うと歩き出した。


「あ、うん。そうだね急ごう。」


 レイはミクルの呼びかけに、はっとしたような顔になって答えミクルを追いかけて歩き出した。

 ずっと、道があるのか無いのか分からないような山道を歩いていたので、舗装された道路は二人にとって快適なものだった。

 歩きやすいからなのか、夜明けが近づいて焦っているのか、ミクルの足取りはかなり速いものになっていた。

 レイは、今日の二回の戦闘で使った魔法の疲労と山道を下る疲労、それに一睡も出来ていないことで疲れ果てていた。

 街に入ってからは足元に気をつける必要が無くなったので、レイは半分寝ているような状態で歩いていた。


「おいおめぇ大丈夫か?」


 ミクルは、後ろを歩くレイの様子に気付くとビックリして肩を揺すった。


「あ、うん大丈夫だと思う。少し疲れただけだから。」


「なんだよ情けないな。婆ちゃんちに着いたらゆっくり休めるからそれまで我慢しろ。」


「うん、分かった。」


 レイは、ミクルに声をかけてもらったおかげで少し目が覚めたようだ。しっかりと目を開けて歩き出した。

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