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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
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第二十二話 怪しい箱と輪ゴム

「なんだよこれ?」


「わかんねぇけど、なんかありそうだよな。」


 二人が見つめる先にある物、それは牢屋の上にある小さな部屋にある、小さな木箱だった。


(怪しすぎる)


「罠じゃないか?こんなに間抜けな箱、普通置かないって。」


 レイは箱の上に貼られた紙に書かれている[禁]の文字をみている。


「そうか?俺はなんかヤバいもんが入ってると思うんだけどな。」


 ミクルはそう言うと箱に近づいた。


「ばか止めろよ、今はそんなことしてる場合じゃないだろ。」


「良いじゃんちょっとぐらい。もしかしたら武器とかが入ってんじゃねぇか。」


「バカ、やめ…。」


 レイが止めようとしたが、ミクルは言うことを聞かず木箱を開けた。


 ・・・。


 何も起こらなかった。

 ミクルは恐る恐る箱を見ると、何かを見つけたようだ。ゆっくりと手を伸ばすとミクルは、箱の底からそれを持ち上げた。


「なんだこれ?」


 ミクルが手に持っている物を見ると、レイの目が変わった。


「ちょっと、これって…。」


 レイは慌ててミクルからそれを奪い取ると、食い入るように見つめた。


「おい、どうしたんだよ。」


「これ、僕のだ…。僕の杖だ。」


 ミクルが箱から取り出したもの、それはレイがずっと使い続けていたあの杖だった。


「え?!これが魔法の杖。嘘だろ?」


「嘘言ってどうするんだよ。

 正真正銘僕の杖だ。この辺の傷とか、覚えてるし。」


 レイはそう言って、ミクルに杖を見せた。


「嘘…。だってこれには…。」


 ミクルが何かを言いかけた、そのとき、さっきまでレイが手をかけていた扉のドアノブが回り、扉が開いた。


「あ~ぁ、セリエーヌ隊長もヒドいよな、こんな時間まで取り調べの手伝いをやらせるなんて。って、お前ら誰だ?」


 部屋に入ってきたのは、スキンヘッドの大男だった。

 怪しむというよりただ単純に疑問に思っているのだろう、その声には敵意が感じられない。


「うわぁぁぁぁああ!!」


 たとえ声に敵意が無くても、レイ達にとって敵であることに変わりはない。

 二人は同時に叫ぶと男と扉の隙間から一目散に外へと逃げ出した。


「おいコラ、待てって。

 お前達さては囚人だろ。逃げるな!待て!」


 スキンヘッドの親兵はやっと気づいたらしく、外へ逃げた二人を追いかけ始めた。


「待てと言われて、誰が待つかよ。

 捕まえれるもんなら捕まえてみろ、ツルツル頭。」


 ミクルは後ろを向くと、ベェと舌を出した。


「おいミクル、ふざけるのもたいがいにしろ。」


 レイは、横を走るミクルを一喝すると周りを見渡した。

 大きな塀で囲まれた場所ではあるが、所々山が見えている。

(これならイケる)

 レイはそう考えると、杖を構えた。


「ミクル、僕の腕に捕まれ。ここから飛ぶぞ。」


「飛ぶってどうやって?」


「メイルを使う。あの山に移動するんだ。」


 レイは、目の動きだけで、ミクルに山の方向を示した。


「魔法を使うって?でもおめぇ、その杖は…。」


「大丈夫だって言ってるだろ、よし飛ぶぞ。」


 ミクルはまだ何か言いたそうだったが、レイはそれを遮って言った。既に準備万端だ。

 すると、誰かに右手を掴まれた。


「貴様、こんな遅くにどこへ行く気だ。」


 レイは慌てて振り返った。

 そこには、レイにとって二度目となる女性の顔があった。


「セ、セリエーヌ。」


 レイは怯えたように言った。

 夕方の対決はレイにとって軽いトラウマになっていた。


「ふんっ、大人しく捕まっていれば良いものを。無用な苦痛を増やすだけだと分からないのか?」


 セリエーヌは、あの冷たいあざ笑うような声で言うと、レイの腕を掴む手に力を入れた。


「くっ、離せ。僕には行かなきゃいけないところがあるんだ。」


「貴様の行くべきところは牢屋だ。他の場所に行く必要はない。」


「おい、おめぇなにもんだ?」


 ミクルは威嚇するように言った。さっきまでの冗談半分のふざけた顔ではなく、真剣な睨み顔だ。

 どうやら、本能的にセリエーヌの脅威を感じ取ったようだ。


「横の貴様は見たことがないな、その汚い身なりからして乞食か何かだろう。

 万引きでもして捕まったか?ふんっ、人間の底辺が、この私に楯突こうというのか?」


「なんだと、おいおめぇ、もう一回言ってみろ。」


 ミクルは、セリエーヌの言葉に激昂すると、あの輪ゴムを構えた。

 左手の親指に輪ゴムをかけ、右手で思いっきり引っ張り、セリエーヌに狙いを定めた。


「おいおいおい、まさかそんなもので私と戦うつもりか?

 そんなもんじゃ虫も殺せんぞ。」


 セリエーヌはそんなミクルの姿をまた冷たく笑った。


「あんまり俺を甘くみないことだな、見てろよ。」


 ミクルはそう言うと、後ろから走ってきたスキンヘッドの親兵に狙いを定めた。

 ミクルは、左手の親指を親兵に向け、右手で輪ゴムを目一杯引っ張ると、優しく放した。

(おい、そんなんじゃ無理だろ…。)

 レイは、セリエーヌに腕を掴まれながら、ミクルの放った輪ゴムの行方を見つめた。

 スキンヘッドの親兵は、ミクルの輪ゴムに気付かないようで、そのまま走ってくる。

 その親兵の左肩にミクルの放った輪ゴムが当たった…。


 その瞬間、親兵の左肩が吹き飛んだ。

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