第二十話 脱獄計画!
「まずは、お互いに何ができるか確認しておかねぇとな。」
ミクルはそう言うと毛布の下に手を入れて何かを取り出し。
「俺に出来るのはこれだ。」
「なんた?輪ゴム?」
そう、ミクルが取り出したのは大量の輪ゴムだった。
ミクルが輪ゴムで出来ることとは一体なんだ。
「それで何するんだ?物を縛るの?」
「ふっふふふ、普通の輪ゴムの使い方はそうだよな。でも俺の使い方は違う。ここでは見せれないけどこいつを使った俺は強いぜ。」
ミクルは自信満々だ。
その自信が本物であることを祈る。
重要な場面で「俺の最終兵器はゴム鉄砲だ。」なんて言い出さないだろうか。いや、ミクルがあれだけ自信を持っているのだ、何か思いも寄らないすごいことをやってくれるだろう。
「分かった期待しておくよ。」
「へへへ、期待しててくれよ。
それで、おめぇは何ができるんだ。」
ミクルは大量の輪ゴムを器用にしまうとレイを見た。
「僕は、一応魔法使いなんだけど…。」
「え?おめぇ魔法使いだったのか。
とてもそうは見えないけどな。」
余計なお世話だ。
ミクルはレイの体をゆっくりと見回しそう言った。
「魔法使いならさここから抜け出すのも訳ねぇんじゃないかよ。
初めっから言ってくれりゃあ良かったのに。」
「それがそうもいかないんだ。」
レイはそう言って左胸に手を当てた。いつもならそこにあるはずの杖の感触が無かったのだ。
「ここに入れられる前に杖を取り上げられたみたいなんだ。
杖が無いことにはどうしようもないよ。」
「ちぇ、期待させておいてそれかよ。魔法使いってのは杖が無いとなにも出来ないのか?」
「分からない、杖なしで魔法を使うとどうなるかなんて教わってないし、やったこともないから。」
レイは、うなだれてそう言った。
「じゃあ、おめぇは何が出来るんだ?」
「少しは戦えると思うけど、魔法が使えないとどれくらい戦えるか、分からないな。」
「そうか、まぁ初めからそんなに期待してなかったからな。気にするな。」
その言い方は少しヒドいと思ったが言い返せなかった。
魔法を使えないとこんなにも弱く心細くなるんだと、レイは初めて知った。
「じゃあ脱獄の計画たてるか。」
「それはいいんだけど、まずどうやってこの牢屋から抜け出すんだ。」
「それも全部まとめて説明するから、慌てるなって。」
そう言うと、ミクルは大切な宝物を披露するのように計画を話し出した。
まず、この忌々しい牢から抜け出す方法だ。
まず、この牢について説明しておく。この牢は半分以上が地下に埋まってるんだ。
あそこにある光取りの窓がちょうど地面すれすれにある。だから、外側の壁を壊して逃げることは出来ねぇんだ。
つまりだ、この牢屋から抜け出すには、あの鉄の扉を開けなきゃならねぇんだ。
この牢には、日に数回扉が開く瞬間がある。三回の食事を運ぶときと、週一回のシャワーの時だ。それ以外で扉が開くことはほぼない。
それで、俺たちが狙うのは、夕食が運ばれてきたときだ。
普通は給仕婦と親兵の二人がやってくる。その二人さえ何とかすればこの牢からは脱出できる。
後は、この建物を出来るだけ早く抜け出して、全速力で走る。
そこまで一気に話すとミクルは、どうだと言いたいような顔をしてレイを見た。
「その計画って、結局はこの牢から抜け出す以外未定ってことだろ。
そんなのでよく脱獄なんか考えたね。」
レイはあきれてしまっていた。
確かに夜なら警備は薄いだろうが、それでも出し抜くのは容易ではないだろう。
第一、この建物の構造がよく分からない以上、下手に動けば簡単に捕まってしまう。
「うるせぇな、時間がないんだから仕方ねぇだろ。
俺はどうしても明日までに脱獄しないといけねぇんだよ。」
「明日だって?ずいぶん急な話だな。
それなら今日脱獄しないとダメなんじゃないか。」
レイは驚いて言った。
てっきり、もう少し様子を探ってから脱獄するものだと思っていたのだ。
「ああ、明日までに脱獄する。
でなきゃ大変なことになっちまう。」
ミクルは頭を抱えてしまった。
「なぁ頼むよ、俺と一緒に脱獄してくれよ。
仲間がいれば成功する可能性もあがるんだよ。」
ミクルはレイにすがりつくように、頼んだ。
心なしか、ミクルの髪の毛がオレンジ色に変わっているような気がする。
(困ったら髪の毛の色が変わるのか?変な奴だな)
「おんなじ部屋になったよしみで助けてくれよ。」
なんだか、はじめに会ったときとは印象が違っていた。それほど困っているということなんだろう。
「分かったよ、どうせ断っても君一人で脱獄しようとするだろうからな。
同じ部屋になった時点で僕に拒否権はなかったよ。」
「ほんとにほんとう?ありがとう、レイ。
絶対に抜け出そうね。」
言葉遣いが決定的におかしな気がしたが、喜んではしゃぐミクルを抑えるのに必死で、レイは深く考えなかった。
今大切なことはそんなことじゃない。
大切なのは、今日の夕食が運ばれてきたときに、脱獄するということだ。
だが、この脱獄が後にどんな影響を及ぼすのか、今のレイには知るよしもなかった。




