表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第二章 イーストテッド篇 ハル救出作戦
20/66

第十八話 牢屋の少年

 夢を見ていた。

 レイの目に映る世界、全てが真っ赤に燃えていた。

 360°どこを見ても燃えていない場所はない。

 いや、一つ違うものが見える。

 例の女性だ。

 その女性は悲しそうな顔をしてレイを見ている。

 女性が着ていた高級そうなドレスはすすで汚れ、所々が裂けていた。

 女性は泣きそうな顔でレイを見つめると、燃え盛る建物の方へと走っていった。

 レイは、女性の背中に右手をのばした。



 「待って、行くな。」


 「誰に言ってんだ、おめぇ。」



 レイの呼びかけに応えた声は、女性のものではなかった。

 レイは、全身にくる激痛に顔をしかめながら目を開けた。

 どうやら堅い地面か何かの上で寝ているようだ。右手が空をさまよっている。


「おめぇ、ここに連れてこられてからずっと呻いてたぞ。

 なんか悪い夢でも見たのか?」


 レイにそう話しかけてきたのは、さっきの声だ。

 激痛の走る首をゆっくりと曲げるとそこには、目を覆うようなボサボサの髪に、汚れた服を着た少年が立っていた。清潔感の対極にいるような人間だった。

 レイはもう一度顔をしかめた。これは体の痛みのせいではない。


「いや、そうじゃないけど。

 それより、君はだれ?ここは一体どこなんだ?」


 レイはそう言いながらゆっくりと起き上がった。

 出来れば話したくなかったが、見たところここにはこの少年以外居ないようだったので、レイは仕方なく話し返した。


「俺か?俺はミクルだ。よろしくな。」


 出来ればよろしくしたくない。


「ここは牢屋だ。ライムベル親兵の基地の中にある。

 っていうか、おめぇ捕まったら牢屋に入れられるに決まってるだろ。」


 ミクルは、なに言ってんだコイツ?と呟いた。レイには聞こえていないと思っているのだろうが、残念ハッキリと聞こえた。

 だが、レイはそのことについて何も言わなかった。あの時の悔しさがまたこみ上げてきていたのだ。


「それにしてもおめぇ、変なかっこしてんな。」


 ミクルはお構いなしに話を進めていく。

 レイは、その言葉を聞いて自分の姿を確認した。黒いコートを着たいつもの姿だった。

 別に変な所はない。少なくともミクルの汚れた格好よりマシだ。

 レイは、ミクルの言ったことにカチンときて口を開いた。


「君よりはマシだと思うけどな。

 この黒いコートは、僕が師匠から教わった正装なんだ。あんまり、悪く言わないでくれるかな。」


「ふ~ん、そうなんだ。ごめんな、そんな事情知らなかったからさ。」


 ミクルは、小さく頭を下げた。


「いいよ別に、そんなに怒ってないから。」


 ミクルが素直に謝ったので、レイもそれ以上怒りはしなかった。


「それで、おめぇはなんて言う名だ?」


「僕はレイっていうんだ、…よ、よろしく。」


 レイは少しつまりながら、ぎこちなく挨拶を返した。この少年と話すのは気分が乗らなかった。


「おめぇ女みてぇな名前だな。」


 ミクルは、レイの名前を聞いて笑い転げた。

(ミクルも十分女っぽい名前だろ。)

 レイはまたイラっとしたが今度は胸にとどめた。言っても無駄なだけだ。

 ミクルはずっと笑っているので、レイは無視して辺りを見回した。


 レイのいる部屋は4畳半ほどの広さだった。

 左右に一つづつ鉄で出来たようなベットがある。一つはレイが寝ているもの、もう一つはミクルのものだろう。どちらのベットにも申し訳程度の薄い毛布が敷いてあった。

 部屋の隅には薄汚れたトイレがあった。壁など、トイレを使うときに隠してくれるようなものはない。あれを使うのは相当度胸がいりそうだ。

 部屋の入り口には鉄の扉が閉まっている。見るからに頑丈そうだ。

 そしてその反対側の壁には小さな窓があった。当然窓には鉄格子がはまっている。


「はぁ~。」

(本当に牢屋なんだ…。)


 レイは部屋を見回すと大きなため息をついた。

 自分の置かれた状況を改めて実感していた。


「ところでレイ、お前何で捕まったんだ?

 泥棒か?スリか?もしかして覗きとかか?」


 さっきまで笑い転げていたミクルが、思い出したように言った。

 失礼なことを気にすることなく言っている。


「そんなことしてないよ!…、俺にもよく分からないんだ。

 この街に着いたらいきなり指名手配されてるって言われて、セリエーヌとかいう親兵にやられて、気がついたらここにいたんだ。」


 レイはミクルの言ったことを否定してから、今までのいきさつを簡単に伝えた。

 ここ最近は、自分でも分からないことだらけだ。


「うへぇ、おめぇ指名手配されてんのか?

 大物犯罪者じゃねぇか。」


 ミクルは、ひぃっと言って壁際まで下がった。


「そんなんじゃない、僕は本当に捕まるようなことはしてないんだ。何かの間違いだよ。」


「冗談だよ、おめぇはそんなすげぇことが出来るようなタマには見えないぜ。」


 そう言うとミクルは、笑いながら座り直した。レイにとっては調子が狂う相手だ。


「それにしても、間違いで捕まるなんて災難だな、おめぇ。

 今こうして捕まってるのも不本意なんだろ?」


 ミクルは意味ありげな表情をし、レイに顔を近づけた。

 レイは思わず後ずさりした。ミクルの迫力に圧倒されたのだ。


 ミクルは、そんなレイと鼻がぶつかるくらい近づくと、にやっと笑って口を開いた。


「俺と一緒に脱獄しようぜ。」


 レイは目を見開くとミクルの目をマジマジとみた。

 (こいつは何を言ってんだ?)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ