第十六話 レイVSセリエーヌ
「ふんっ、少しは戦えるようだな。
だがこんな下っ端をいくら倒そうと、貴様の運命は変わらない。
ここに私がいる限りな。」
セリエーヌは、そう言うとやっと自分の武器を抜いた。
他の親兵とは違い、セリエーヌの武器は剣だった。
セリエーヌは、自分の部下がやられたことに全く気にしていないようだ。
「仲間がやられたら、もう少し動揺とかするもんじゃないんですか、普通は。」
レイは、少し息が上がっていた。
それでも、これだけの親兵を無傷で倒したのは上出来だろう。
「ふんっ、使えない駒がやられたくらいで悲しんでやるほど私は優しくないんだよ。」
セリエーヌの声には優しさが全く感じられない。
「そんなことを言う奴がこの国の治安を守ってるなんて、全然安心できないな。」
「罪人にそんなことを言われるとはな。」
レイが冷たく言い放つと、セリエーヌはこう言って、はっははと、せせら笑った。
「だから、僕はそんなことしていない。
確かにジンは僕とハルの師匠だ。でも、スパイなんかしてない。むしろ僕達はジンを止めるために旅に出たんです。」
どうせダメだろうと思ったが、レイはもう一度弁明してみた。
「ふんっ、貴様らがスパイかどうかを判断するのは裁判所だ。貴様らではない。」
予想通り、セリエーヌは聞く耳を持たない。
「じゃあ、実力行使で分かってもらうしかダメみたいだな。」
レイは、一つ大きな深呼吸をするとセリエーヌに向かって走り出した。
二人の距離はおよそ50メートル。
レイは真ん中の親兵の山を飛び越え、セリエーヌに杖を向けた。
「ダクト」
レイが空中で放った光の玉をセリエーヌは持っていた剣ではじいた。
はじかれた光は、セリエーヌの後ろの地面を削った。
レイは、ダクト(攻撃魔法)を弾かれたことに戸惑うことなく足が地面に着くと二歩でセリエーヌのところまで行き右足を蹴り抜いた。
「甘い。」
セリエーヌはそれを左腕で防ぐと剣をレイの体目掛けて突き出した。
レイはそれをかわす為に上体を後ろに反らせ、そのまま後ろに宙返りし、セリエーヌと距離をとった。
「はぁはぁはぁ。」
レイは、肩で息をしだした。右頬にある大きな傷の下に、赤い線が浮き出た。その傷から血が一筋すぅと落ちた。
「ふんっ、貴様こんなもので私に勝つつもりか?こんな攻撃では、私に傷一つつけられんぞ。」
セリエーヌは余裕に笑い、剣についた血を払った。
レイは頬の血を静かに拭った。
「まだまだっ。」
レイはそういうとセリエーヌに飛びかかった。
セリエーヌはそのレイ目掛けてもう一度剣を突き出した。しかし、今度はレイに当たることなく空を切った。
レイは飛び上がった瞬間にメイル(移動魔法)でセリエーヌの背中に回り込んでいた。
「ダクト」
レイは無防備なったセリエーヌの背中に渾身のダクトを放った。
杖から放たれた光の玉はセリエーヌの背中の真ん中を捉え、セリエーヌを他の親兵達の山の方へ吹き飛ばした。
セリエーヌは、真ん中の親兵達に当たり止まった。
セリエーヌのクッションになった親兵達ははじき出され、道に転がった。
「はぁはぁはぁ、どうだ。」
レイは苦しそうに息をしている。
レイのメイルは相当の魔力を消耗する。戦闘での多用はまだ難しかった。
「前言は撤回しよう。確かにそこそこの腕はあるようだな。
だが、もう息も上がってふらふらではないか、その様子を見ると、もう貴様に勝機はなさそうだな。」
セリエーヌはゆっくりと立ち上がり振り返って言った。
傷は負っているが、その足取りは確かで疲れを感じさせない。
「このままでも楽に勝てるだろうが、また逃げ出そうなどという思いにならぬよう、ここで絶対的な力の差を見せておくとするかな。」
そう言うと、セリエーヌは剣の先をレイに向けた。
「目を凝らしてみるのだぞ、私の本当の力を。」
セリエーヌが突き出した剣は、銀色の輝きからだんだん白い光へと変わっていった。
そして数秒後、真っ白な大きな光が剣から放たれていた。
「もしかして、あんた…。」
大きな光に目を細めながらレイはその剣を見ていた。
ジンから話だけは聞いていたが実物を見るのは初めてだった。
「あぁ、私は初代勇者の末裔だ。」
セリエーヌは、レイが言い切るのを待たずに言い放った。




