第十四話 イーステッド市
この世界にライムズ王国より大きな国は存在しない。
そんなライムズ王国で反乱が起きたとなると世界に与える影響は計り知れない。
事実、周辺の国々ではこれを機にライムズ王国へ攻め込もうとする動きがちらほらと見て取れる。
それでも、本格的に動き出す国が無いのはそれだけライムズ王国の力が莫大だからだ。
ここではレイ達の話しを一旦休み、ライムズ王国について話そうと思う。
ライムズ王国
レイ達の暮らしている国。
魔法使いと勇者が初めて現れたとされる国。
ドラゴンと悪魔との戦争で人類のリーダーだった、ライムベル一世により建国された。
国土は左右に空豆のような形に広がっている。領土には二つの山脈がそれぞれ南北にそびえている。
その山脈により、ライムズ王国は三つに分断されている。
レイ達の暮らすのは主に農業が盛んな東部。
今ダルメアが反乱を起こしているのは西部最大の都市ノミシア市。西部は主に工業が盛んだ。
そして、二つの山脈に挟まれた中央部に首都ライムズ市がある。国王や貴族などが暮らす政治の中心だ。王国のほぼ中央にあるため物流の中心として、人や物が集中している。
ライムズ王国に王国軍という王国議会直属の軍隊が存在する。
王国軍の役割は、主に国防と他国への抑止力だ。
実は、ライムズ王国にはもう一つ戦闘部隊が存在する。
ライムベル親兵
国内の犯罪者や事件を取り締まる組織だ。
ライムベル一世の側近兵士が元で、国王直属の部隊だ。
ライムベル親兵は各主要都市に拠点を置き、どこかで事件が起きればそこに一番近い拠点から親兵隊が派遣される。
ライムベル親兵のおかげでライムズ王国は広大な領土の隅々まで目を届かせることが出来ている。
実際の戦闘実績で言えば、国王軍よりもライムベル親兵の方が上だ。
ライムズ王国の二大戦闘部隊、国王軍とライムベル親兵。
この戦力がライムズ王国繁栄を支えてきた。
とりあえず今はこれだけ説明しておく。
ここから話しはまた、レイとハルの旅へと戻っていく。
レイとハルは早朝にタカネ村を出発してからほとんど休むことなく山道を歩き続けていた。
二人ともジンに鍛えられているうえ、昨日は十分な睡眠をとっていたので難無く歩いている。
それでも、ハルはだいぶ疲れているようだ。
二人が目指している目的地は、中央部と東部を隔てる山脈、ハロー山脈の麓の街、東部最大の都市イーステッド市だ。
タカネ村からイーステッド市までの道のりはそれほど厳しくなく、レイ達が街の入り口へ着いたときは、まだ太陽が見えていた。
「あ~、やっと着いた。」
疲労感の漂う声でそう言ったのはハルだった。
ハルはそう言うと入り口の門のところで座り込んでしまった。
「おい、ハルこんな所で休むなよ。
今から宿探さないといけないんだから。休むのは宿のベットでだ。」
「いや、お前達の今日の寝床は堅い監獄のベットだ。」
ハルを起こそうとしていたレイに、聞き慣れない女性の声が聞こえた。
驚いて顔を上げると、そこには真っ赤な制服を着た、凛々しい顔の女性が立っていた。
いや、女性だけではない。いつの間にか女性と同じ赤の制服を着た人達がレイ達を取り囲んでいた。
レイとハルは完全に包囲されていた。
「何なんですか、あなた達は。」
レイはいかぶし気に、周りを取り囲んだ制服の人達を見回した。
「私か?私はセリエーヌ高等親兵。
ライムベル親兵イーステッド支部遊撃隊隊長だ。」
リーダーらしき女性はセリエーヌと名乗った。
「やたら長い肩書きですね。
で、そのライムベル親兵さんが僕達に何のようですか?
さっき、監獄がどうとか言ってましたよね。」
レイは絶対にセリエーヌから目を話さないようにしながらハルを立たせた。
ハルもなにがなんだかさっぱり分かっていないようで困惑している。
「あぁ、そうだ。
お前達は、今日の宿を探す必要がない。今ここで私が逮捕するからな。」
セリエーヌはそういうとニヤリと笑った。
顔は綺麗な方だが、笑うとどことなく残忍な雰囲気がある。
「逮捕?どういうことよ。私達、逮捕されなきゃいけないことなんてしてないよ。」
そう言うハルの声には、恐怖の色が強く現れてる。
いきなり現れた人達に怯えているのだ。
「カッ、罪人は全員そう言うんだよ。
私はなにもやってない、私は悪くない、私が逮捕されるなんて間違ってる、ってな。」
セリエーヌはイライラしたようにまくし立てた。
「そんなに信じられないんなら、見せてやるよ。これがお前達の逮捕状だ。」
そう言ってセリエーヌが出した紙には、レイとハルの名前の下にこう書かれていた。
〈罪名〉
特別指名手配犯ダルメアのスパイ容疑
「レイ・エルバレム及びハル・エルバレム。貴様らをスパイ容疑で逮捕する。」
セリエーヌがそう宣言すると、レイ達を包囲していた部下が一斉に飛びかかってきた。




