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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第1章 はじまり
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第十話 無くなったバック

 二人が買い物を終えたのは、太陽が沈みかけた夕時だった。市場は夕食の材料を買いにきたおばさん達で賑わっている。

 衣服は一通り揃っていたので、旅に必要そうな、地図、ランプ、ナイフ、調理器具や、魔法の勉強のための書物などを買った。


 歩いての旅には多すぎる量に思えたが、それらの荷物は二人がそれぞれに持っているショルダーバックにどんどん納められていった。実はこのバック買い物前にハルが空間魔法で収納スペースを広げていたのだ。


 昼過ぎから買い物を始め市場をあちこち見て回り安い物を買い揃えたおかげで、お金はまだいくらか残っていた。


「レイちゃん、疲れた。おんぶしてよ。」


 レイの後ろを歩いていたハルが疲れたように、レイのコートを引っ張った。

 魔法で、荷物はほとんど重さを感じないのだが体の弱いハルにとっては市場を散策しただけでかなりの疲労が溜まっているようだ。

 そんなハルのお願いを、過保護なレイが断るはずもなく一旦しゃがんで背中にハルを乗せてあげた。

 12歳のハルを15歳のレイがおんぶしている。十代の子供がおんぶされているのだが、ハルが小柄なせいかあまり不自然には見えない。

 微笑ましい兄妹の姿がそこにあった。


 今レイ達が歩いているのは市場のメインストリート。レイとハルが泊まっている宿はこの道の先にある。

 宿まで一本道ということはメイル(移動魔法)が使えるということだ。

 レイはハルを背負っているので窮屈そうに杖を取り出した。そして短い呪文を唱えようとした、その時。


「邪魔だよ。」


 八歳くらいの男の子がいきなりぶつかってきた。


「なんだよ危ないな、もっと前をよく見て歩け。」


 レイはぶつかってきた男の子に怒りの声を上げた。

 子供にぶつかられてこけるような、ヤワな鍛え方はしていないのでハルを落とすことなく、少しよろけただけでふみとどまった。

 男の子はふてぶてしい眼差しをレイに向けると謝りもせず走り去った。


「なんなんだ、あのガキ。

 ハル大丈夫だったか?」


 レイは、ハルを背負いなおしている。さっきの衝突でハルが手を離してしまったようだ。


「うん、大丈夫だよ。

 ちょっとびっくりしちゃっただけ。」


 ハルはレイの首に巻き付き直しながらそう言った。

 レイはその返事を聞いて安心し、今度こそしっかりと呪文を唱えた。


 ハルが異変に気付いたのは、レイと別れ自分の部屋に戻ったときだった。



  バックが無い



 今日半日がかりで買った旅行用具を入れたカバンが無くなっていたのだ。

 慌ててレイに報告しようとしたがドアノブに手をかけたところで踏みとどまった。

 バックが無くなったことをレイに報告しても、レイはハルを責めないだろう。そして、全力でバックを探してくれるだろう。なら、今すぐレイに報告すべきだ。でもハルはそうしなかった。

 兄に頼り過ぎていることに後ろめたさがあったのだ。


 レイはハルに対して過剰なほどの過保護の精神を持っている。

 いつ、いかなる時でもレイはハルを助けてくれる。だがそれは、ハルにとって重荷になっていた。

 今、ハルの頭の中はレイに迷惑をかけたくない、それのみだった。


 ハルは、この事を一人で解決する事にした。レイに迷惑をかけないために。


「まず、どこで無くしたかを思い出さなきゃ。」


 ハルはそう呟くと、今日の午後の足取りを思い出し始めた。


 買い物中は、当然まだあった。全部の買い物が終わった時も持っていた。

 レイにおんぶをねだったときも、肩にはちゃんとバックがかかっていた。

 と、ここでハルの記憶は曖昧になった。

 買い物の疲れと、兄の背中の温もりとが合わさり、何ともいえない眠気に襲われたのである。

 そして、宿につき眠気から解放された時にはバックは既に無くなっていた。


 レイにおんぶされてから、宿に着くまでに起こったことを曖昧な記憶から思い出そうと、ハルは頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。


「なにか、なにかがあったんだ、それを思い出さなきゃ。」


 ハルの頭から湯気が立ち上るのが見えるくらい、頭を捻っていた。

 すると突然立ち上がり、なにか閃いたという顔でこう呟いた。


「あの男の子だ。」


 レイにぶつかり、謝りもせずに立ち去った男の子。今から思い返してみれば凄く怪しい。

 多分、あの男の子にバックをすられたのだろう。


「あー、よりにもよって盗まれるなんて、私のバカバカバカバカ。」


 ハルはまたしゃがみ込み、今度は自分の頭をポカポカと殴りだした。

 落としただけなら一人で解決するのも簡単だが、盗まれたとなるとかなり厄介なことになる。


 しかし、この件は自分一人で対処すると決めている。今更兄の手を借りれば、女が廃る。

 ハルはどうしても兄に迷惑をかけたくなかった。



 ハルは、意を決したように杖を取り出した。杖はレイのよりも少し短い。


「チート」


 ハルは目を閉じてそう唱えた。


 自分の周辺の魔法を感知する魔法。

 それがハルの得意とするチート(探知魔法)だ。


 ハルは、レイのように基本五系統全てを使えるわけではない。

 ハルが使えるのは、基本五系統のうちチートと、ミーユ(治癒魔法)だけだ。

 その代わりこの二つに限れば、ハルはレイよりも強力な魔法を使うことができる。

 今、ハルが使っているチート、この探索範囲はタカネ村全域にまで及ぶ。

 こんな広範囲を一度に探索するのは、レイには不能だ。


 ハルは、目を閉じて魔法に集中している。

 タカネ村をくまなく見渡して魔法を探す。


「見つけた。」


 しばらくして、ハルはそう言い目を開けた。

 ハルが探知した魔法は三つあった。

 一つは病院のだ。多分あの老婆がミーユを使っているのだろう。

 そして、残る二つの魔法これはハル自身がバックにかけた空間魔法だ。

 一つはハルのいる部屋のすぐとなり、レイの部屋にある。無くなったもう一つのバックは村はずれの小屋にあった。

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