水晶の契約はできた……けど、徹の突っ込みが!
なんとか自分の力で、高価なアメシストのドームを置けることになって、紫晶はるんるん。
第27話 内装でワクワク
後日、紫晶は徹に会って報告する。
「まずはコーヒーで乾杯! よくやりましたね!」
「はい、ありがとうございます!」
「で、どんな条件なんですか?」
「はい。こんなふうになりました。これで契約する予定なんですが……」
「ふ~む……」
徹はじっとその内容を読み込む。
「なるほど……」
また突っ込まれないかと紫晶はドキドキだ。
(突っ込まない……?)
徹がバッと顔を上げた。その顔は真剣な顔だ。
「紫晶さん、破損した場合の条件は?」
「え?」
「クリスタルは壊れやすいですよ。それから、盗難が生じたどうします?」
「うっ……」
「商品の棚卸しは誰がするんです?」
「…………」
「売上の締め日は? 入金日は?」
「………………」
「次回、契約する前に、こういうところを詰めてくださいね」
「は、はい! ありがとうございます!」
(はあ~……。まだまだ突っ込み力が足りないわ……)
「まあ、いいでしょう。素晴らしい成果ですよ」
「はい。ありがとうございます」
心の中の3歳の自分は、徹に褒められると嬉しいのだ。
(いやいや、人に褒められるためにやっているんじゃないの。私は自分の夢を叶えるためにやっているんだから……)
それはわかっているのだが、やはり徹が褒めてくれると嬉しい。
「たまたまご夫婦がシニアだということで、縮小を検討しているというのが、うまくマッチしました。天の助けです!」
「うん。天は自らを助くる者を助く、ですよ」
「はい。ほんとですね! 最初断られたときは、すごく落ち込みましたけど……」
一人芝居で徹ごっこをしているのは内緒だ。
「そろそろ公庫の融資が入金されるでしょう。そしたら、物件を契約して、設備をだいたい決めて、内装の相談に行くといいですね」
「はい! わかりました!」
その数日後、渋谷区の制度融資についても、信用金庫から連絡があった。希望していた500万円の融資が決まった。
これで自己資金600万円、公庫から1500万円、制度融資500万円。紫晶が用意できる資金は、合計2600万円になった。
紫晶は無事、代官山の物件を契約した。保証金額が結構な額になるから、今まで自分がしてきたどの買い物よりも大きな額だ。
鍵をもらって、建物に入ってみる。
「うふふふふ……」
すごく幸せな気分になる。生まれて初めての興奮だ。
(お母さん、私、カフェ、もうすぐ開業するわよ……)
300万円貸してくれた母に感謝だ。
持ってきたメジャーで、半日かけて、サイズを測り、隅々まで写真を撮り、上に行ったり、下に戻ったり、外に出て、外から眺めてみたりする。
(うん、隣の家に挨拶にいかなきゃ……)
そして、内装に思いをはせる。
「ここをこうして、アメシストは5つだから、こことここにおいて……」
それから、設備をだいたい決める。メニューが決まったので、必要な設備が見えてきた。コーヒーマシンと製氷機と食洗器は新品にして、あとは中古にした。
ここまで決まったら、あとは内装だ。
いろいろと考えてはみるが、どこに頼んだらいいのか全然わからない。
カフェ開業マニュアルには業者の選び方は書いてない。
「う~ん……。徹さんに聞きたいな……」
あまり頼ってだめだと思うけど、つい思い出してしまう。
「あ、そうだ。不動産屋さんに聞いてみよう」
帰りに不動産屋に寄り、店舗専門の業者を3社、紹介してくれた。
「相みつ、取るといいですよ」
女性営業員が教えてくれる。
「アイミツ?」
「見積もりを3社から出してもらうんです。どういう内装にしたいのか、資料にして、ちゃんと理解してもらって、見積もりを出してもらって、納得いくところにお願いするんです。
ご紹介したのは、このあたりの店舗の内装を手掛けているところですから、手掛けたお店を回ると、だいたいのテイストもわかりますよ」
「はい、ありがとうございます!」
まず、3社に挨拶をして、このあたりの作品を紹介してもらった。それらを毎日のように見に行く。それから、物件のあたりをうろうろして、周りに何があるか確かめる。おしゃれな店には入ってみる。そして、内装のヒントにする。それは一番ワクワクするときだ。
自分でできるだけ図面を書いて、素材のイメージなどもネットから拾い、できるだけ齟齬のないようにしなければならない。
気が付くと、もう1週間以上も徹に会っていなかった。
自分もあまり、いつもの目黒のカフェにいっていない。
(メールもしてないなぁ……)
「元気ですか?」とメールしてみる。
すると、半日後に「元気ですが、忙しいので寝ています」とメールが来た。
「忙しいので寝ている?」
変な内容だったが、あまり気にしなかった。
大切なカフェの内装。自分で頑張る紫晶。そのころ徹は……。
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