カードをくれたあの女性……実は……
カフェに置きたい大きなアメシストのドーム。紫晶はその交渉に再びやってきたけど、店主はあまり乗り気じゃない……。
第26話 天の助け、再び
そこへ、奥からもう一人やってくる。
「あら、お客様? 失礼しました。今お茶を……」
それは前に紫晶にカードをくれた年配の女性だ。紫晶はこの店主の妻なのだろうと思い当たった。
「ああ。こないだ話しただろう? こちらのお嬢さんのカフェの話。今度は年間64万円なんとか儲けるってさ」
「まあ……。ちょっとあなた、どいてくれる?」
女性は夫を椅子からどけて、自分が座った。
「あ、あの。カードをくださったかたですよね? あの時は本当にありがとうございました。私、ずっとカウンセリング、受けているんです!」
紫晶は立ち上がって頭を下げた。
「まあ、そうなんですか? それはよかったわ。……なんだか、ずいぶんと雰囲気も変わりましたね?」
「はい! 心を変えるときれいになれました!」
紫晶は堂々と言った。自分をきれいだと自分で言えるのが嬉しい。
「それはいいわ。どうぞお座りください。この話、私は少し興味を持っているんですのよ」
「えっ、そうなんですか?」
夫の店主は奥に戻っていった。
「あなた、お茶、よろしくね」
と、お願い口調の声で言った。
「お、おう」
(こっちが……本物の店主?)
紫晶は力関係を見る。
店主……と思っていた夫の木村がお茶を持って戻ってくる。
「まあ、前よりもいいだろ?」
と木村は提案書を見ている妻に言う。
「ええ。そうね……」
そして、紫晶のほうを向いた。
「私は、カフェにアメシストを置くっていうのは、とても嬉しい話なのよ。でもね、儲からないと意味がないでしょ? 8つも置いたら、経費が掛かりすぎるわ」
パラパラと女性は提案書を見て、だいたい頭に入れたようだ。
「石田さん……でしたね。私は木村冴子です。よろしくね」
夫から名刺を差し出してもらい、それを紫晶に渡す。
「ここは私たち夫婦が長年やってきた会社なの。私は経営担当。この人は石の目利き担当。
でもね、ふたりとももうシニアになったし、そろそろ事業を縮小しようかと思っていたの。やめるんじゃないのよ。ただ、今どきはオンラインでも仕事ができるし、なにも家賃の高い目黒に店を持つ必要、ないじゃない?」
「ええ、そうですね」
「で、うちの主力はアメシストのカペラ。これは場所取るの。だから、倉庫を厚木あたりにして、目黒の店をどうしようかと思っていたのだけど、あなたのお店がうちのショールームになるのは悪くないわ」
「えっ、そうですか?!」
「でね、このカフェで売るのは水晶のポイントが中心なのよね?
これはうちとしては、余興のような品なのよ。一般客にはカペラはなかなか売れないからね。でも、これがあなたのカフェで売れるなら……。私たちは目黒の店を閉めても、年金のようにお金が入る……」
紫晶はバッと笑顔になった。
「はい!」
冴子はまた提案書をめくる。
「ふうん……。カフェのお客が本当に月に4000人いるかどうかはわからないけど、水晶のポイントは売れると思うわ。うちとしては、ポイントの仕入れを増やすことは簡単なの。カペラほど貴重じゃないからね。だから、積極的に売ってくれたら、うちの利益はもっとあると思うのよ」
「はい!」
「だから、こんなかんじはどうかしら? 展示するカペラは5つ。うちではグレードを大まかに5つに分けているから、その見本を置きたいわ。大きさもバラバラね。
そして、実際にカフェで売るのは水晶のポイント。これは3000円から3万円くらいの範囲ね。そして、売れたら、あなたに2割の手数料を払う」
「えっ、手数料収入をいただけるんですか?!」
「もちろんよ。売ってくれる店員さんはあなたが雇っているのだもの」
「は、はい! ありがとうございます」
「カペラの搬入費も、あなたには請求しないわ。見本を見たいというお客様をうちから紹介するから、そのときはカフェの中に入れてほしいの。
そして、カフェのお客様にポイント水晶が売れたら売価の2割を販売手数料としてあなたに払う。これなら、一所懸命売ってくれるでしょ?」
「はい!」
「商品はあくまでもうちのもの。だから、たとえあなたの店がつぶれても、うちの商品は返してもらうわ。これで良ければ、日を改めて話を詰めて契約しましょ。どう?」
「は、はい! よろしくお願いします!」
(ヤッター!!!)
紫晶は店を出ると、すぐに徹にメールを打つ。
「徹さん! 石の木村商事と契約ができました!! 石を5つタダで置かせてもらえて、ポイント水晶の販売手数料を2割もらえることになりました!」
「おお~! それはすごい。よくやりましたね! 素晴らしいです!」
徹が褒めてくれる。
紫晶は嬉しくて、その文字をずっと眺めながらニタニタと歩いた。
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紫晶、だんだん脳がビジネス脳になってきました!
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