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徹の地獄の特訓の成果は? 一番重要な質問とは……

物件をみつけ、その契約のためには、公庫から融資を受けなければならない! その特訓を受けて、いざ本番!

第23話 本番の戦い



 そして、5日後、石田紫晶(いしだしあき)は公庫の本番の面談に臨む。


 担当官の山田がさまざまな質問をする。


「この自己資金はどのように用意なさったのですか?」

「はい、私の4年間の給料から300万円、そして、親から300万円を支援してもらいました」

「ほう……。親御さんも応援していらっしゃるんですね」

「はい。昔からカフェを開業したいと思っていたのを親は知っていますので、協力してくれました」


「ふむ……。では次はここですが……」


 だいたい徹(とおる)が突いてきたところを質問されたので、すらすらと答えられた。


 一通り質問した後、担当官の山田は紫晶を正面から見つめて、最後の質問をする。


「石田さん。もし、この店がうまくいかなかったら、どうされますか?」

 紫晶は一瞬、止まる。


(昔の私だったら、「絶対に成功します!」と言うところ。……でも、今は違う)


「はい。撤退基準を決めています」

 そして、真剣な顔ではっきりと言った。


 これは徹に言われたのだ。

「どんなことも、絶対にうまくいくということはありえない。だから、撤退基準を自分で決めておくこと」


 紫晶は担当官にしっかりと答える。

「売上が計画の70%を3か月連続で下回った場合は、営業時間と人員配置を見直して人件費を削減します。それでも改善せず、営業赤字が8か月続いた場合は撤退します。


 撤退時には設備や什器を売却して残債を圧縮します。それでも残った借入については、これまでの飲食業の経験を生かして再就職し、返済を続けます」


 担当官は、

「……そこまできちんと考えていらっしゃるんですね」と大きく頷いた。


「わかりました。本日はこれで結構です。結果は後日ご連絡いたします」

「はい! よろしくお願いいたします!」


 そう言って、部屋を出る。

(終わった……)

 特訓のおかげで、かなりしっかりと返答できたと思う。



 返事は1~2週間後になるという。

(大丈夫かな……)

 と不安になるが、

(徹さんにあんなに特訓してもらったんだもん! 大丈夫!)

 と気持ちを落ち着かせる。


「その間にできることは……」

 メニューをしっかりと作れるようになることだ。

 それから、石屋に相談に行かなければならない。その提案書を書く。


 そして、10日後、紫晶のスマホに電話がかかる。

「石田様、日本政策金融公庫の山田です。先日お申し込みいただきました融資の件ですが――」

 紫晶が息を止める。

「ご希望の1500万円で、ご融資させていただくことになりました」

「あ、ありがとうございます!!」



「やった~~!!」

 さっそく徹に連絡し、お礼を言った。

「融資、通りました! ありがとうございました!」


「おめでとうございます」

 徹からはそんなメッセージが送られてきた。


 その数秒後、もう一言送られてきた。

「当然です。僕が指導したんですから」


「ムフッ」と得意そうに笑う徹の顔を思い出す。

 紫晶は写真を開いて、お台場で撮った写真の中に、その顔を見た。

(そうそう。今頃、こんな顔をしている……)


 数日前の徹の指導を思い出す。


「もし、この店がうまくいかなかったら、どうしますか?」

 紫晶はひどい質問だと思った。

「大丈夫です。絶対にやり遂げます!」

 それが答えだと思っていた。


「それじゃダメです。子供の答えですね」

 と徹に一蹴される。


「店を作る前から、潰すときのことまで考えるんですか?!」

 と紫晶は不満顔だ。


「当たり前でしょう。投資家……いや、融資するほうは当然それを考えますよ。その危険があるから、貸すか貸さないか、審査するんでしょう?」

「はあ……」


「自分で撤退条件を決めてください」

「ええと……何か月赤字になったら撤退する……とか?」


「撤退するっていうのは、店を閉めることだけじゃありませんよ。そのとき、何がいくらで売れて、借金がいくら残るのか。撤退した後にも返せるか。そこまでが撤退計画です。

『失敗したから、もう返せません』なんて無責任でしょう? 貸した人を馬鹿にしています。『絶対成功させます』なんていう覚悟より、担当官は本当に貸したお金が返るのかどうかを見るんです」


 彼はそう言った。

 あの質問にしっかり答えられたのも、徹の指導のおかげだった。


「ありがとう……。徹さんのおかげです」

 メッセージを返してから、写真に向かって、深々とお辞儀をしておいた。


(徹様、お師匠様……)

 紫晶の心の中では、徹はジェダイマスターのごとく格上げされた。



(次は渋谷区の融資500万円だわ!)


一番大切なのは、アメシストカペラを置くこと。さあ、いよいよ交渉へ……。

少なくてもいいので、ポイント評価していただけますと、嬉しいです!


こちらも連載中。ぜひ訪問してください!

MBA令嬢の異世界改革――― 交易と流通で王国を侵略から守ります ――

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