お金を借りるって難しい……地獄の面接訓練
カフェの候補物件が決まって、いよいよお金を借りる申請をするところ……。
第22話 徹のスパルタ特訓
紫晶は事業計画をせっせと書いていた。
方眼紙に間取りを書き、椅子やテーブルの配置を書いてみる。
「この間取り図だと、席の数は全部で35、これを4回で回せば140。客単価が……」
ぶつぶつ言いながら書き込む。
「メニューはメインがシチュー。それからサンドイッチと……。あの場所ならスパゲティーもあったほうがいいな……」
スパゲティーはいくらでもカフェ用の商品があるので、簡単に出せるのだ。
ときどきスマホを開いて、徹の写真を見る。
(ううん。これは、絶対に私がやって見せる。タダで教えてもらっているんだもん。これ以上頼ったら、それはビジネスじゃない)
そう決意して、せっせと何度も書き直す。
「ええと……日本政策金融公庫の申請書の書き方は……」
カフェ開業マニュアルを読む。
「そうか。この書類に書き込めばいいのね。
ええと……。公庫に申請して、それから渋谷区の制度融資を申し込むのか……」
「はあ……」
慣れないことをするから、頭が疲れてしまう。
(こういう時はケーキだわ)
そう思って、立ち上がり、カウンターでチーズケーキを頼む。
(うん、うちの店にも甘いものを置こう。チーズケーキ……と)
そしてまた、損益計算書に取り組む。
これが一番難しい。
(数字はうそをつかない……)
非現実的な数字を書けば、実務経験を疑われる。
「やる気だけじゃスタートできないってよくわかったわ……」
一心不乱にせっせと書く。
いつもは、「こんなとき、徹さんが来てくれたら」と思いながらやっていた。
(完全に依存してるじゃない! ダメ!)
フンと鼻息を荒くする。「そんなことで事業をひとりでやれるもんですか!」と息巻く。
(絶対に自分で書き上げるんだから。徹さん、今は来なくていいから!)
と思い、真剣な顔で書いている。
「紫晶さん!」
「ギャッ」と飛び跳ねて驚いた。
徹がそばに立っている。
さっと事業計画を手で隠す。
「どうしたんですか? そんなに驚かせましたか?」
「あ、いえ……」
(心の中で思っていたこと、ばれたかと思った……)
「ああ、事業計画、立てているんですね。じゃましませんよ」
クスッと徹は笑う。
「え……」
(自分で書きたがっていることがばれた……)
そう言われると、逆にちょっと見てほしくなる。
「書けたら教えてください。融資の面談の特訓をしてあげますよ」
「えっ、本当ですか?!」
「ええ。担当者がどこを突くか、よく知っていますので」
「へぇ……?」
(もしかして、徹さんは銀行とかの融資担当者なのかな?)
と思ったが、すぐに打ち消す。
(いやいや。ただの銀行の融資担当者が、昼間っからカフェに来て、あんなタワーマンションに住んでいるわけないわ)
「だいたい書けてるようですね。うちのラウンジ、来ませんか? ここじゃ迷惑になるし」
徹はまだ注文前だった。
「わ、わかりました! お願いします!」
徹が秘密基地だと言うタワーマンションのラウンジに座る。
「さあ、僕を担当者だと思って、事業を説明してください」
「は、はい。作りたいのは、水晶のおいてある癒し効果のあるカフェです。月商500万円を想定しています。……」
徹の目がだんだん厳しくなる。
「なぜ月商500万円なんですか。その根拠を30秒で説明してください」
「えっ、30秒? 35席ですので、平均客単価1,500円、平日130人、休日160人とすると――」
「待って。その客数はどこから出しましたか?」
「えっ?!」
だんだんパニックになる。
(そんなの、答えられないよ~!)と叫びたい。
「『代官山だから一日130人くらい来ると思います』では計画じゃありません。店の前を何人通るんですか? 調べましたか? そのうち何%が入るんですか? SNSから何人呼ぶんですか? リピーターは何人ですか? それを積み上げて130人になるんですよ。わかってます?」
徹が真剣に追及する。
(ギャ~!!)
心の中の3歳の自分が「よくもあたしのやる気をそいだな~!!」とわめいている。
大人の自分が「よしよし……」となだめているが、大人の自分も汗だくだ。
徹の尋問はさらに続く。
「客単価はいくらですか。その単価になる根拠は?」
「あなたの店を選ぶ理由は何ですか? 近隣のカフェとの違いは?」
「内装費、甘くないですか?」
「売上が計画の7割しかなかった場合でも返済できますか?」
「自己資金600万円はどうやって用意しましたか?」
ビシビシと容赦なく徹の質問が飛ぶ。
紫晶の心の中の3歳の自分は、魂が抜けたようにシナシナだ。
(……絶対この人、融資関係の人だわ……)
答えられなくなると、徹が書き直す。
「ここはこう直して……。で、答えるときはこう……」
「ハイ……」
(学校の先生みたい……)
「はい、もう一度やり直して!」
「は、はい!」
(ス、スパルタ……)
曖昧じゃ成功しない! 細かいところまで詰めること!
ポイント評価してくださると嬉しいです(T^T)
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