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リミックスⅠ  作者: E..
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30/33

酒屋

 どこかの酒屋、一に促されるまま入って行くと、既に何人か居た。

「来たわね! さあ、酒を飲むわよ!」

 坂本と日向だ。

「自分は今日、コイツの面倒見るからウーロン茶で、冬美也、お前は?」

「な、なんでもいいです、ジュースで」

 そういうとジルがパッドですぐ注文を入力する。

 日向は冬美也を見てすぐに言う。

「本当に何やらかしてるんだお前」

 ジュリアから聞かされたんだろう、これは面倒だ。

 しかし冬美也には言わなくてはいけない事がある。

「日向さん、あんたジュリアになんて恐ろしいお話してるんですか!」

「事実だから知らん」

「日向がしか知らない情報でも鵜吞みにしたらあかん、で何話してた?」

「織田信長がネコ」

「猫?」

 その瞬間、日向は一が純粋側であると諭し言う。

「一はそのままでいてくれ」

 本当に何の話か分からない一は聞き返そうとするも、これは聞いてはいけない分類と坂本も悟って慌てて輪に入る。

「ちょっと私無視しないで!」

 そこへ丁度ジルと琴が入って来た。

「ちーっす、俺も来たけど、なんで冬美也が? 普通、理美じゃね?」

「理美様は今日も会議です」

「そうなのか、大変だな社長って」

「お飾りであろうがなかろうが、実技を備えておけば後々楽なんですよ企業を起こすにしても」

「そういうもんか?」

「そういうものです」

「なぁ、お前ら猫って分かるか?」

「猫?」

 そっと、坂本が2人に経緯を教えると琴が言い方を変えて言ってみた。

「タチが攻め、ネコが受けって分かります?」

「なんの話なんそれ?」

 本当に知らないと分かった琴はタブレットを借りて言う。

「分かりました、それでは飲みましょう」

「いやだからなんなん!?」

 分からないまま放置されてしまった。

 ジルに至ってはこれは知らない方が幸せと悟る。

 坂本が、改めて聞く。

「で、なんで冬美也君が居るの?」

「知り合い経由でやらかし含め反省会」

 一の言い分には坂本も突っ込んだ。

「懺悔場所を飲み会にすんなし」

 冬美也からすれば不安いっぱい。

「と言うか、誰経由でバレた!?」

「分かるぞ、アイツらの情報網おかしいから」

 まず疑うのはジュリア経由だ。

「ジュリア経由?」

 真面目に日向の殺気がひしひしと伝わる。

「ジュリアじゃないな、多分知った所で大人だけの飲みにガキを連れて来ないぞ」

「怖っ……」

「まぁ、許して貰えるよう、大人の自分らも協力するし」

『もしかしても、理美が誰かに相談したのか? この中の誰かに』

 冬美也は疑うが、相談相手はアダムだとは知らない。

「私、えびちゃんに聞きましたが、一を呼ぶ事はないです」

 一は琴の崩壊具合につい言ってしまうが、意外とお茶目な所があるんだと改めて思った。

「生ビール1杯でキャラ崩壊するな」

「まだそこまで飲んで無いですよ? 元々拾って来た後、適当な名前で呼んでたんで、じゃあ私もとえびちゃんって呼ぶようになっただけで」

「意外とお茶目なんだ」

「お茶目です」

 琴の威圧に、一がビビる。

「はぃ!」

 ジルはなんで一が冬美也をと思ったが、そういえばアダムと一は結構細かく連絡のやり取りするのを思い出す。

「でも、どうして一が……あっ、なんか察した」

「察するな! なんか悲しくなるから察するな!」

 アダムに頼まれたのもあり、帰り際までずっと立っていたなんて知られてくない。

「理美の件なら、オレで」

 説明するならと思っていたが、日向の方もゼフォウの失恋を知っていた。

「お前、ゼフォウ怒らせたんだろ? やめとけ、諦めろ、謝罪はしただろうがあっちだって失恋の傷まだ癒えてないんだぞ」

 仲介役が居ない状態で話し合いをしたいのに、拒否を受けて漸く事の重大さに立った今、全てが空振り、オマケに美空のせいで余計溝が深まっている。

「それはそうなんだけど、話したいけどかなり怒ってて」

 琴は理美の機嫌の悪さを自然現象の1つとしてふんわりオブラートに包んで言うも、そのまま坂本が言ってしまう。

「もうすぐ女の子の日なんでそれでじゃないんですか?」

「あーあるある、生理痛いよね」

「折角男どもがなんとなく分かるニュアンスにしたのに」

「ごめんってば、でもそれだけじゃないでしょ?」

 坂本に促され、琴が生ビールを飲み干してから言った言葉に突き刺さる。

「本気泣きしてたらしいです」

「ぐぅ……!」

 一は見ていたかのように言った。

「ほらぁ、ゼフォウも付いてくるって思って途中で撒かれたんだろ?」

「……い、いや、桜夜とジュリアに気付いたゼフォウが別行動を」

 坂本も冷めた目で梅割りを飲みながら言う。

「はい、そりゃ離れますね、嫌がらせもしますよ普通にお前はアホかって」

「酔っ払いのツマミにされたくねぇよ」

 冬美也もちょっと酔っ払いのカモになりたくないが、一だって冬美也に気を遣ってファミレスで飲み会したら、こっちが出禁になってしまうと諭す。

「ファミレスでデカい大人達がどんちゃんしてみぃ、全員もれなく出禁やぞ?」

 琴も同意だ。

「それはそう」

「話したくない理由あるんでしょ?」

 冬美也は言いたくはなかったが、本音を言わなければいけなくなり酔っ払いに言う羽目となった。

「バートンが何かと理美に気を遣って、理美が飛び出した時も、バートンがすんでで止めてたり、オレが藤浦からまがい物の影響で動けなくて、その時も理美が守って、でも最終的にはバートンが割り込んで守ってくれてて」

「余計それを言わないと」

「ゼフォウにも言われた!」

「あらら、なら尚更会って話さないと」

「でも許さないって言われてませんでしたっけ?」

「……無理だ! もう、実家に帰るしかない!」

「お前、両親に我儘言って来たんだろ? 無理だろ最低何年で留学したんだよ」

「高校卒業するまで」

「ほぼ四年間は在籍せんとダメだろう」

 酔っ払いではあるが、普通に相談乗ってくるので少々息苦しく感じる。

 日向はサイドメニューを頼んでは、ソフトドリンクも追加で頼んで、冬美也に渡す。

「あっどうも、でも結局オレあいつに殴られて気が付いたら寮にいたし、もう踏んだり蹴ったりで――」

 ジルがそれとなく言う。

「あの……あの時、俺も居たんですが?」

 ここでジルで思い出した坂本が事件の話に変えてしまう。

「あんたはオマケ、てか、まだ進展ないの?」

「今度は、死体が青森の山中に見つかった。夜勤帰りのキャバ嬢がその日の内に殺害、最後に見たのは上がって帰るキャバ嬢に軽い挨拶をした黒服スタッフ、その後の足取りも目撃者も無し」

 チューハイも飲み干した琴は先程のグロイ話を一切無視して牛のレバ刺しを探すがメニューに載っていないのが分かってガッカリする。

「レバ刺し無いのか、やはり生肉は無理ですね」

「お前、少し自重しよ?」

 一が自重を促すもジルは仕事終わりはこんなもんって感じで言い出す。

「何言ってんだ、仕事終わりのドンチャンなんて普通じゃね?」

 流石に冬美也も狭間のバーで話してた時のだと分かって言う。

「まだ逮捕されてないんですね?」

 琴がメニューを決めた後、思い出したように横領の話を始めた。

「そだ、私の会社で横領騒ぎあって、犯人見つけたら殺そうと思います。証拠隠滅でデータ一部まだ戻って無いんです、しかもまがい物の気配がありました」

「ほんまか? 理美……ちゃんにはまだそこまでの力量は無いかぁ」

「あったとしても、社長室に用が無いと基本あの子来ませんよ? しかも、本社階の社長室なんてもっても他です」

 冬美也が気になった言葉を繰り返す。

「本社階?」

「はい、一応本社としてビルがあるのです、同時に様々な部門が集合しているので、下の階は殆ど部門で区分けされ、半分上から本社となっております。まぁ他の会社もそうなっている場合もあれば部門ごとに全て別ビルってのもあります」

 本社じゃないなら何部門だ?

「なら、理美がいつも忙しいって言っていたのって本社じゃなく、部門?」

「そうです、飲食部門です、元々カフェ経営に興味あったんですが、現在はファミレス系の店が殆どですね、お飾り社長と言ってますが、やらせる時はきっちりさせるんで、学校終わり、土日返上なんてざらでしたし」

 昔は習い事もしていたりしていただろうから、養子になってからかなりハードだったに違いない。

 でも、琴がいれば大丈夫と思ってたら違った。

「うげぇぇ、でも琴さんいるから大丈夫なの?」

「残念、私は本社の秘書として雇われてます。もちろん、飲食部門にも秘書がおります、彼女は非常に優秀ですし、他の方々も優秀ですから、理美様、誰か下剋上してくれる人いるかなとワクワクしてますね」

「普通逆じゃね?」

 日向的にそこまで意気揚々と待っていれば狙う気なんて起きないだろうと口にする。

「それだけ寛容なら狙わんだろ上を」

 ジルは横領の話を戻す。

「でも横領するってどんな姑息な事してんだか」

「最初は少しずつ、最近大胆になってた。よくある横領の麻痺っぷりですが、バレたのが分かったらしくまがい物で身を隠した可能性も、こちらで見つけ次第始末しようと思います」

 見つけたら多分、琴が犯人を物理的に消しそうだ。

 冬美也はもう調べているだろうと、つい聞いてしまうが、まだだった。

「例えば、誰か入ってからおかしくなったとかないか?」

「誰か……あっ」

「ん?」

 なんとなく誰かだと分かるが、まずは証拠を探す事にした。

「もう少しデータ集めして絞り出せるかも」

 ここに来てふと冬美也は思った事を口にする。

「まがい物のって感情コントロールさせるだけなのか? てっきり物理的な何かを生み出すとか思ってたけど」

「あるで、基本的にそれだから」

「なら、金にしたり、宝石を出したり、なんなら、不老不死に」

 人間の願望も叶えられる。

 しかし、物質を変化させるのは容易ではなかった。

「出来る、だが、物質の変化は感情コントロールの支配するより難しい」

 藤浦の件でよく分かる、まがい物を使用した事でほぼ殆どの人の感情を操っていたのだからちょっと考えただけで簡単に操作出来てしまう。

 でもどうして物質を変化するのが難しいのか。

「どういう?」

「アイツらまがい物は物質の変化は非常に骨が折れるようでな、気が付いた時には、小箱が満杯になる金銀財宝を作った使用者が苗床になっていたなんてざらにある。奴らは使用者に一通り使わせたら苗床にして生成をする。ゼフォウは上手く使ってるっぽいが、後で回収した方が良いだろう」

「苗床ってゼフォウに聞いたけど、苗床になったらどうなるんだ?」

 ジルがおどろおどろしく教える。

「ただただ生きたいってだけの感情でずっと飲まず食わず、病院にいる介護老人のようなただただぼうっと息するだけの」

 容易に想像出来てしまい、鳥肌が止まらない。

「もういいです! 怖いわ! 絶対なりたくないわ!」

 日向はその様子を見て少し安心した顔をしながら、頼んでいた焼酎を呑む。

「いいぞ、それで興味本位で手を出したらろくな事ならんからな」

 話していてある疑問が湧く。

 まがい物は何処から生成されるのかだ。

 普通の石とは違うのだからきっと意図的に出ているとも考えづらい。

「でも、どこからそんな危険な物質が生成されるんですか?」

 冬美也はもし生成条件が揃っている場所さえ分かれば近づかずに済むと考えたが、意外な答えに呆然となった。

「アースが生成された時の残りカス」

「残りカス?」

「或いは生成失敗したとも言えるな」

「残りカスor失敗作?」

「それでいいぞ、アース、天然の賢者の石は濾過される際に出た不純物がまがい物であり、その過程に失敗した時にも出る。でもたまにその辺にも出てくる時あるから油断ならんがな」

「ちなみに濾過失敗した方が高水準で裏社会じゃかなりの額で取引されるらしいで?」

「じゃぁゼフォウが使っているのって」

「多分高水準のまがい物じゃないかな? あとは定期的に誰かが交換しているか」

 そういえばゼフォウはたまに仕事でも無いのに出掛けたと思ったらすぐ戻って来た時が度々ある。

 きっとその時交換しているのだろう。

 しかし使用済みはどうするのか?

 浄化なんて出来ないし、苗床って事はそこから生成して取り出す事も可能だと考えると裏社会の闇の1つをたった今知ってしまった気がする。

 この瞬間、冬美也は恐ろしさよりもいっそ清々しい顔でちょっと昔テレビであった和風をテーマにした番組のナレーションのテンションで言い出した。

「……裏社会って凄いなぁ」

「声が懐かしき何処かの和風番組のナレーションになってるぞ!」

 一が突っ込んでしまう程、少々気になる状態になってしまったのだろう。

 それを見ていた日向はゼフォウを何としてでも裏社会から縁を切らせたいと考える。

「まぁ、関わらん方が身のためだ。だが、ゼフォウには辞めてもらった方がいいし支援だってする」

「でも、アイツは嫌がるぜ? 自分で決めて、身寄りの無い仲間も連れて行ったし」

 もし連れ出すにしても相手はマフィアでそう簡単に全員を無償で返すとは思えない。

 まぁ上手くのらりくらりと躱し、最終的には掌で踊らされるなんてありそうだ。

 多分、ゼフォウもその点そっくりになっている気がする。

 ふと、その話を聞いていた坂本が慌ててカバンから紙を取り出し冬美也に渡す。

「連れてで思い出した。これ、アイムのloin連絡」

「アイム元気してます?」

 本当に久しぶりに聞く名だ。

 嬉しく感じる中、坂本は話を続ける。

「元気元気、多少皆名前変わっちゃってるけど、他の子も能力が安定してるから今は学校に通えてるし」

「そっか良かった」

 多少名が変わるのは仕方がない気もしたが、皆無事で安心して学校にも通えているのが分かるとホッと胸を撫で下ろした。

 同時に、分かっているからこそ、冬美也は付け足すように言う。

「でも、ゼフォウはそっちに行かないと思う」

 坂本としては来て欲しそうだ。

「え〜来て欲しい」

 なんか、戦力的何かとして期待している気がする中、冬美也は伝える。

「ゼフォウだって分かっているからあえて断ってあっちに入った訳ですから」

 覚悟の上でゼフォウは行っているのだから、安全だとしても行く事は絶対に無い。

 残念がる坂本を見て、琴が言う。

「そっかぁ……」

「いや、どっちに居ても変わらないじゃないですか、利用するなら」

「それはそうだけど、金だって出すし、安全の保証だって」

「無いでしょそれは、各国でも表に出してないだけで、皆喉から手が出る程欲しがっているんです。しかも今回はセェロが率いるマフィアだけが独占した状態で、他は国の監視下、いつ襲撃して拉致るか分からないんですよ?」

 琴は裏も知っているからこその言葉、調べによる確信に、坂本は唸るしかない。

「……そうだけどもぉぉぉ‼︎」

 唸った後に店員がやって来て、ビールは誰と尋ねると皆一斉に坂本を差し、渡せばいきなり一気飲みだ。

 危険と言われているのに好きだなと呆れる。

 話を聞いていた日向は無効化を推す。

「私としては、どうやったらそれを無効化するべきかって言うのを調べるべきじゃないのか? ゼフォウは攻撃型だろ完全に」

 その話を聞いた直後、冬美也はゼフォウの今状態はあのウィルスのお陰でもある為下手に消してはいけない気がした。

「ゼフォウは無効化するべきじゃないです、アイツ、来た時には治らない病気を患ってたから来たと言っていたので」

 それに理美のアースが言っていた、付き合い方によっては強い味方だ。

 ただやはりそれでも諦めきれない日向は言う。

「治らない病気、ね。もし治せるなら治した方が良いんじゃないのか?」

「……」

 治せるなら治したいと思うのは普通だ。

 でもよくよく考えると自分も例外ではなかった。

 坂本に言われて気が付いてしまう。

「まぁ冬美也君も体弱かったのにそのせいで頑丈通り越して鉄壁じゃんねぇ」

「それはそう」

「お前は大丈夫なのか?」

 一応、なあなあに返すが本気でゼフォウと一緒であのウィルスの影響なのではと考えてしまう。

「オレは元々体弱いけど、成長したお陰で落ち着いたのか、な?」

 ジルも悩まないでほしいと言ってしまうほどだ。

「今更言われて如何なんだろうって顔するな」

「理美位だろう、お前の体見ても平気だったの。怖いとか気色悪いとか無ければ付き合いは長くした方が良い」

 日向としては平気な人間なら尚の事大事にした方がいいという考えなのだが、日本の裏切りの大名手と言えば、本能寺の変を起こした明智光秀、坂本がからかい交じりに言うのだが、言われた本人しか分からない事情の表情に皆騒然。

「長くした結果、あんたは裏切ったんじゃないの?」

「あれは、あっちから反故されたんであって、裏切られたんだからノーカンだろ?」

「えぇぇぇぇぇ……」

 歴史では明かされない闇を感じた。

 もう元々冬美也を連れて来たのだって、どうせ恋愛関係の縺れなんだし、早めに切り上げる気で話を日向が戻すも、自身の話になってしまう。

「そもそも理美はまだ子供なんだから、恋愛関係はまだ早いんじゃないのか?」

「日向だって恋愛とかしたのかよ?」

「許嫁いたけど、替え玉とかあったんでしょ?」

 こっちに話を振られてもすぐさま日向は返す。

「そもそも、そっくりですらなかったぞ? 分け目もそうだし、微妙な仕草に声のトーン全てが」

 多分言わないだけでもっと事細かな話が出てきそうだ。

 冬美也は言う。

「実は愛妻家?」

 

 結局、話はまたグダグダになってはの繰り返しで、時間も良い頃合いなのが分かると一は冬美也を連れて帰す事に。

「んじゃ、帰るか」

「ありがとうございます」

 このまま席を外すと日向が言う。

「たまに呼ぶ、息抜きはいるだろお互い」

 やっぱりいい人だなと感じる。

「す、すいません」

「たまに思うやろ、なんでこの人、裏切ったんだろって」

 一の疑問も様子を見ていれば察しが付く。

「でもなんか原因はパワハラっぽいのだけは伝わって来てます」

「諸説あるが、なんとなくそれっぽいもんな」

 本当に怒らせてはいけない人間を怒らしたのだから怒らないと踏んでやり過ぎたのだ織田信長と言う男は。

 一が自分のと冬美也の分を日向に渡して席を立つ。

 大分暖かくなった春であっても、夜はよく冷える。

「さっぶ!」

「寒いのは我慢なぁ、でも気晴らしにはなったろ?」

 冬美也は確かになりはしたが、服に付いた酒の匂いが気になって仕方がない。

「なりましたよ、でも匂い付いたかも酒臭っ!」

「あははは、ほれ、携帯用の消臭剤持ってるから消せ消せ」

 一が携帯用の服専用消臭スプレーを渡す。

「あっどうも、でも結局答えも何もなかったですね」

「まぁ一応大人の集会の飲みだったんだけど」

 吹きかけながら、一応まだ中学生なので酒屋ではなくもう少し別の場所の時に呼んでほしかったと口にするが、どうやらカラオケでは気晴らしなど出来ない惨状があるらしい。

「奢ってもらったからいいですけど、呼ぶならもうちょっと場所選んで」

「カラオケだと面倒になるから無理」

『何があったんだよカラオケで』

 一は咳払いをし改めて言う。

「俺から言えるのは、まずは理美と仲直りだな」

「はい……でも、許されないならもう」

「こらこら、まだやまだ、あっちだって言い訳として捉えてはないやろ、多分」

「多分じゃ無理ぃぃ」

 後の祭りに訳も言い訳も通じないのだから本当に止めてもらいたい。

「ならせめて、ゼフォウとは仲直りせぇ」

「……全部オレのせいだからもう無理かも」

「泣くな泣くな、大丈夫だから、ほらもう少しで寮に着く」

「あっ思い出した、女子学校で働いてたじゃないですか? 少し乙女心とか分かりますか?」

 本気で言っている冬美也に対して何も言えなくなる。

「……お前なぁ」

 少し呆れた。

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