告白の答え
そんなことになっているなんて思ってもいない理美は普通に授業を受けている。
美空達のお陰で現在は1人なる事はなくなった。
半分窮屈とも言えるが、実際あの騒動で終わったのはこのクラスだけ。
他はまだ終わっていないのだ。
お昼休みこんな話から始まった。
「そういえば、来月だっけっか、美空のお父さんの誕生日」
「そうなんだよ、別に上げなくてもいいような気もするんだけど」
「反抗期真っ盛りですか?」
美空が違う違うと軽く言っている間に理美は思い出す、自身の兄、才斗の誕生日。
「あっ……5月3日」
流石、雇っている会社と言わんばかりの口ぶりのまま美空は言う。
「うん、結構有名人でもあるからいつもお客さんからファンまで贈られて、たまにお母さんがぶっつんして」
聞いてた桜夜が突っ込んだ。
「色々ダメじゃん!」
過去に明らかなラブレターやいかがわしい物まで贈ってきた不届き者がいたらしく、それを誤って開けてしまった才斗がひと悶着起きたのだ。
それ以降は一度会社が預かると言う形で渡す前に確認もしている。
たまたま友吉から聞いてたのを理美は思い出し血の気が引く。
「プライバシー保護で会社に送ってくるファン多くて、一度中確認するのなんでって聞いたらそれだったの思い出した」
「安全でも今は半分以上恵まれない子供達に送ってるからねぇ、後危なそうなのは神社かお寺でお祓い後処分してもらってるそうだし」
「おっかねぇよそれ!」
「そういえば、フィン先輩達来なくなったよね?」
ぎくりとなる理美だったが、一応話しておくべきだと考えた。
「実は――」
「理美ちゃん居る?」
ゼフォウがやってきたのだ。
しかも1人、冬美也が寄越したのかと思っていたので、理美は気軽に返事をする。
「いるよ、どうしたの? 冬美也から何か?」
「冬美也は関係ない、俺が来たくて来た」
その瞬間、理美は固まった。
「んっ?」
「理美ちゃん、借りるねぇ」
「うっす理解した」
桜夜達は久しぶりに呼ばれたんだなとしか思っていない。
廊下か何処かだと感じたが、着いたのは人気の無い空き教室だ。
何かされる?
とまで考えちょっと距離を置く。
下手にまがい物の影響を受けていれば怖い。
ゼフォウは言う。
「そう怖がらなくて良いよ。本当なら冬美也ととっくに付き合ってたなら、別に返事聞く気もなかったから……出会った頃から好きだった、付き合って下さい」
ここで思い出す。
またあの時の答えを言ってない。
言わなくては、とても失礼だ。
「……ごめん、好きな人がいるから無理です」
ゼフォウは振られる覚悟もあったのだろう。
「うん、分かってた……でも、ホッとした。俺は今は日陰どころか闇にいる。それだけじゃない、俺、汚れてるから」
どうしてそう言うのか、理美には分からない。
だから汚れているようには見えなかった。
「汚れてないよ、ゼフォウはゼフォウだもん、だから汚れてない」
ゼフォウはきっと手が汚れているとかそっちを想像していると感じた。
「いや汚れてる、理美ちゃんは知らないだけ皆には言わないだけで汚れている」
「どういう意味か分からない」
「……抱かれてたから、色んな男に、だから汚れてる」
小さい頃はまだ冬美也や親身になってくれる人にしか言わなかった言葉だが、理解してくれなくても良い。
拒否られた方がまだ良かった。
理美はそっとゼフォウの手を握りしめる。
「そいつらが汚れているだけで、ゼフォウ自身は汚れてない、大丈夫大丈夫だから」
この瞬間、感情的になっても拒否っても良かったのに、何故かホッとしたのと悔しいのが入り混じる。
ゼフォウから涙が溢れた。
同時にアダムがやって来てしまった。
「何をしているんだお前達」
「あっ」
「あっ」
呆然となってしまう2人をよそに、アダムは何かに気が付く。
「フィン君……いやゼフォウ、お前一体何を隠しているんだ?」
「げっ、それじゃまた」
「あっ、うん」
「ダメに決まってるだろう」
結局捕まって2人仲良く、理事長室へと行った。
アダムは管理者について一通りの説明をゼフォウにすれば、ゼフォウはボスであるセェロから管理者に関する話を聞いていたので、なんとなく察していたのをしり絶句。
頭を抱えたままアダムがゼフォウに聞く。
「――お前、これはまがい物だろう。なんで持ってるんだ」
テーブルには小さな小瓶に入った砂粒のまがい物がある。
さっきと打って変わって平常心と言うか、心を無にしてゼフォウが訳を話す。
「お守りです。組織の敵だけじゃなくて、たまに俺だって分かる元上客が狙って来ないのと、他のまがい物から弾く為に使っているんです」
今度はアダムが聞こうにも、多分あの微妙な気配だ。
理美のアースに聞いた方が早い。
「理美、お前は気付いて……アースは?」
「悪い事に使っていないし、そんな険悪な雰囲気を作ってる訳じゃ無いから放置してたわ、言って壊したらきっと彼が大変な目に遭いそうだから」
「との事です」
理美が付け加えで言うが、ゼフォウにはアースが見えなければ聞こえない。
「俺にはなんにも聞こえないのですが?」
「私が分かれば良い、それならこっちの管理者達の組織があるんだからそっちで」
そう、あの時連れて行かれていなければ、絶対に自分達の知り合いにしっかりとした組織が存在し、そこで保護を受けていれば良かったのだと思っていたが、当のゼフォウは面倒くさがって嫌がった。
「無理、やだ、面倒」
「おい」
怒って突っ込むアダムをよそに理美は別の心配をする。
「でも、また変な噂や雰囲気がおかしくなりそう」
確かにゼフォウが理美を人気の無い場所へ連れて行ったのだから、それを目撃した人間がいれば余計な尾鰭が付いてもっと悪くなってしまう可能性があった。
ゼフォウは優しく綺麗な目で理美に言う。
「大丈夫だよ、勘付かれても、俺だけがぶっ殺されるだけだから」
「そんな綺麗な目で言わないで、冬美也を人殺しにしないで」
突っ込んでいる間に気配を確認するも、感覚的にはやはりゼフォウが持っているまがい物だ。
「理美、これの気配が分かるか? まがい物の使用する気配が」
ツンツンされていると言うべきか、何かひしひしと当たる何かを感じる感覚に何か見覚えがある。
そして漸く分かった。
「……あっコレか‼︎ 会社にあった気配」
社長室前の秘書室から漂う気配と一緒だ。
アダムがゼフォウに言う。
「お前会社に」
「行くわけないでしょ! 大体もし弱み握ってもそんな気配なんて漂わせないし」
ゼフォウだって理美の会社に迷惑なんて掛けたくないし、嫌われるような事だってしたくない。
「何かあったのか、理美の方で」
言うべきか一瞬迷ったが下手に言ったら余計な話が管理者中で広まってしまう。
「いや、特に気配があっただけ」
とりあえず、流す事にした。
「気を付けた方が良いな、後で琴に言いなさい、もしかするとスパイとかでもそういうの使っていると言う話は良く聞く管理者の間では」
「それ使うのって3流位だよねぇ」
和やかなのは良いが、1番の心配があり、理美はゼフォウに言う。
「で、1番聞きたかったんだけど、冬美也は? 1人で大丈夫なの?」
またかと一瞬嫌な顔をする。
仕方がない事、先程告白して玉砕しての好きな相手は自分の友、それじゃあ理不尽過ぎて嫌になるだろう。
「大丈夫な筈だけど、一応皆居る教室だし、俺だってずっと見てられる程じゃないし、何より……」
「嵌められてない犯人に?」
今の現状利用されてないかと心配になるが、ゼフォウ曰くそれはないらしい。
「それはない筈、こっちにもまがい物あれば、反発し合うから返って俺や周囲には当たらない筈」
アダムは意を決して言う。
「悪いがそれ回収させてくれ」
「ダメ‼︎ 俺これ無くすと本当に変な奴が寄って来るんだよ!」
この反応、困った人間が寄ってたかってくると言うことは本当のようだ。
理美のアースがじっとその小瓶を見て言う。
「良いんじゃない、この小瓶、特殊みたいで宿主として襲う事はまず無さそうだし」
「そうは言ってもなぁ」
アダムは実際長期間持っていたら、どのみち使っていた人間は宿主となるのが心配でたまらない。
何を話しているのかわからないゼフォウがアダムに聞く。
「誰と話してるの?」
「アース」
「私のアースだよ」
どの辺にいるか見当がつかずとりあえず適当な方を見てゼフォウは言う。
「聞いてはいるけど、本当、なんも見えないの幽霊とはまた違うって聞くけどそうなの?」
「よく分からない」
理美は正直に言い過ぎて、アースが少し落ち込み、アダムが軽く突っ込んだ。
「分かって」
「分かってくれ理美」
話はもういいかなと思ってゼフォウが立ち上がる。
「とりあえず、もう帰るわ、失恋した気持ちが御呼ばれのせいでどっか消えたし」
「あっ……本当にごめん蔑ろにして」
理美からすれば、ゼフォウが言っていたの言葉は本当だ。
ちゃんとしっかり見てくれていたのに、全然気づいてあげれなかった。
だからこそ気持ちを蔑ろにしたと感じてしまう理美に、ゼフォウは理美の頭を撫でながら言う。
「別にいつかは言っておかないと、踏ん切りっていうの割り切りっていうか、とにかく前に進みたいからねぇ」
先に理事長室を出て行った。
「私も行きます、アダム神父……理事長」
「どっちでも構わん好きに呼びなさい」
「アダム神父、では」
「うむ、気を付けて」
理美が出た後で、別の扉から誰かが入ってくる。
「アダム理事長」
バートンだ。
何かを察したアダムが言う。
「大丈夫、彼は犯人ではない、そんな事をしたら1番傷つけるのを分かっているからね」
「そうですね」
少し白々しい態度を見て、何かを感じたのかアダムは疑った。
「お前、何かやらかしただろう?」
「なんのことでしょうか? 自分もこれから授業ですので」
「あぁ」
バートンが再度別の扉へと戻っていく。
絶対何かしたなとしか思っていないアダムは深いため息をついた。
放課後、冬美也はゼフォウに言う。
「オレ、今日帰るわ」
普段通りにゼフォウが振る舞うも冬美也は目すら合わせようとしない。
「どったの? なら――」
「良い、オレ少し1人で考え事したい」
その態度にゼフォウも対応を変える。
「お前、部活は部長?」
「……今日休む」
そう言って冬美也は先に教室へと出ていく。
実はゼフォウが理美に告白しているのを見てしまっている。
勿論、理美が断っているのも見てホッとしてしまったが、実際なんとなくゼフォウと一緒にいるのも息が詰まっていた。
この気持ちのわだかまりを取ってからでは面と向かって話せない。
「ちくしょう……なんでこんな」
本当ならいつものように接しようとしていたのに、なんでこう上手くいかないのか。
そんな時だ。
「あら? 神崎君、ここにいたのね」
『げっ! よりによって藤浦!』
すぐ無視して行こうとした時、何かが胸を締め付ける。
同時に頭の中から声が掛けてきた。
「逃げろ! 早く! 出ないとお前の意識が持っていかれるぞ」
分かっているのに動けない、息がしづらい。
倒れそうになる。
藤浦は笑う。
「なかなか、上手くいかなくて焦りました。あの娘もアイツら同様どっかに行くよう仕向けようとしても全然効かないから、仕方がないので、手荒なことをしたのに結局どっか行かないし、もう1人もこっちに差し出すように仕向けようとしたのにこっちもこっちで効果ないし、これ本当に効いているのか心配になっていましたが、少しずつ加えていけば良かったみたいですね」
そうか、行方不明者もあの陰湿ないじめも全てこいつがやったのかと、理解するも話すどころか、言葉を出すので精一杯だ。
「おま……がり、み、を?」
「もう考えないでください、一緒にずうっといましょ」
近づく手を振り払おうにも息をするのがやっとでどんどん意識が遠のいて行く。
急にネズミが飛び出した。
驚いた藤浦が転けてしまう。
「なんでネズミが!?」
空にはカラスや雀、果てはムクドリ、壁の上には猫、道路には野生のタヌキや外来種のアライグマまでが集まっている。
不気味がり辺りを見渡せば、動物達はある人物に集まっていた。
「やっぱりお前か!! 藤浦愛弓!!」
完璧にキレた理美の姿がそこにあった。




