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リミックスⅠ  作者: E..
23/23

不正

 それから数日が経った――。

 相変わらず、だがあの一件以来、誰もしなくなった。

 何より思いの外アダムの幻覚に愛されし者の力のお陰で、攻撃的なイジメに遭う事が無い。

 一方冬美也はと言えば、項垂れっぱなしだ。

 教室で机に凭れる冬美也を見てゼフォウが言う。

「会い行けば良いじゃん」

「……会いたいけど、言った手前と言うか」

 やはり、あの時のバートンと理美が脳内でチラついて上手く言い表せない。

 こんなまどろっこしいとは思わなかったゼフォウはつい言ってしまう。

「まっ、良いけど、そんな風になあなあにしてたら、掻っ攫うよ」

「コロスぞ?」

 殺意むき出しの冬美也を見て、ちょっと引いた。

「顔怖いって」

「前も言ったけど、やっぱりバートンがムカつく」

 やはりバートンかと、ゼフォウも納得する。

「あぁ、それで。でも相手は大人だぜ? ほっとけよ」

 無視したいし距離だって置きたい。

 でも自分がやっている同好会にバートンが顧問、挙句理美の担任、否が応でも会うのはキツイのだ。

 冬美也はそういえばとゼフォウに言う。

「お前、なんか泣いてなかったか? 壁ドンどうのこうのって言って」

 やられた本人は既にケロッとしていた。

「あれ覚えてた? そうなんだよ、なんかバートンって俺らの事嫌いみたいなんだよねぇ、と言うか調べても無駄? って感じ」

「無駄って身辺調査だろ? ……なんかヤバい組織の?」

 心配な冬美也をよそにゼフォウは結果を教える。

「んな事なら全て調べてます、実際なーにも出ませんでした。全くのゼロ」

「白じゃなく?」

 どういう意味と聞く前に先にゼフォウが言う。

「白じゃなくゼロ、何処の出身も分かりませーん」

「……えっ何それ怖っ」

 思い出したようにゼフォウは更にこんな事まで言った。

「だから忠告無視したから、俺、近いうちに消されるかも」

「怖いわ!」

「もしそうなったら、お前の悪運対処誰がやってくれるのか心配で心配で」

「おいっ、何処の母さんかよ!」

 仮に本当だったにせよ、今行方不明者出ているのにやったら、バートンが1番怪しくなるから多分大丈夫なのではと思ってはいるが、たまに本気でどつきたくなる。

 そんな時、何処のクラスの女の子かが声を掛けてきた。

「あ、あの神崎先輩はここですか?」

「……はい?」


 廊下ですぐの事だ。

「神崎先輩の事が好きです! 付き合って下さい!」

「ごめん、オレ――」

 ちゃんと断り、後はいつも通りで、でも正直もう少し考えて、と言うほぼほぼローテーションの流れになっていた。

 本当に申し訳ない気持ちだ。

 でも急に女の子の態度がガラリと変わり悪意に変わった。

「……先輩、やっぱり好きな人いるんですか? 会いにも来ない子が?」

 多分、言った本人が分かっていない。

 冬美也は声を荒らげそうになる。

「はっ? 来ない子ってまさか、り――」

 だがゼフォウが割って入った。

「はーい、そこまで、そもそも3年のクラスに1年生が普通来ないでしょ? 君も普段来ないのにそんな事言っちゃダメだよ」

 諭された側はすぐ我に返る。

「ご、ごめんなさい……! ただ悔しくて、ううん、分かってたから告白を急いで、でも」

 宥めるのも本当に上手い。

「はいはい、分かってるよ、好きな子がいるんですよねって言いたかったのに棘ある事言ったら、友達にも顔見知りにもなれないもんね」

「ひぐっ……ひぐっ! わぁぁぁ」

「あっ大丈夫だよ、とりあえず保健室行こうね、冬美也は教室で大人しくしてなよぉ」

 冬美也もあれぐらい出来たらなと関心と申し訳なさでいっぱいなのに、ゼフォウがそれを無に返す。

「お、おう、いつもすまん」

「貸し2つ」

「なんでだよ」

 ゼフォウが女の子を保健室まで送る間、冬美也は教室に戻る。

 自分の席に座って、再度あの光景が過ぎり項垂れた。

「……辛い」

 情けない自分に距離を置く事で逃げているのをなんとなく分かっているのに、救い出せなくて助けられなくて本当に辛かった……。


 そうして放課後になり、理美は帰る準備と兄、颯太が玄関口で待っていると連絡が入っているので急いで向かおうとした時だ。

 バートンがやって来た。

「理美、後はあなただけ部活入部届がまだなので今週末までですので忘れずにお願いします」

「はっ……! あります、ここに」

「勉強同好会ですね……美術部か家庭科部辺り入りそうだと思ってましたが」

 美術系が好きとかもの作りが好きとか言ってないよなと考えるも、前に見て感じた事をそのまま伝える。

「家庭科部はともかく、美術部は雰囲気が合わないと思って」

「まぁあの辺は偏見強い人が顧問やってるので仕方がありませんね」

 周りに居たクラスメイトが驚いた。

『ズバッと言いやがった!』

『皆、言わないだけで思ってたの言いやがった!』

 誰もが美術部辺りは入ろうとしないのはもはや、顧問の偏見一択だ。

 ちなみに後から知ったのだが、家庭科部はただ単に冬美也に告白した子が部長しているので確実に無理。

「それと、最近忙しくなるとは保護者から聞いてますので、無理せずに」

「はい、分かりましたありがとうございます」

 ほかの女子生徒が言う。

「先生、嘉村さんに甘すぎませんか!?」

 確かに言われてみれば、そうかもしれない。

 なんかあの件もあるが、少々甘い気がする。

 しかし、バートンは否定し、前々からの学院とのやり取りにより、大体把握しているから言えるのと、今後の話もした。

「いえ、合格時に連絡があり前々からやり取りしてたのと、まだ二学期からなのですが、皆さんそれぞれイベント参加や用事による参加を申請すれば参加可能になります。もししたいのであれば、先に保護者からの許可をお願いしますが?」

 勿論、親が許可したらの話らしいが、自分達もやりたいなら相談するようにとも言う中、やはり女子生徒は納得していない。

「それでも先生がちょっと甘やかし――」

「あなたはちゃんと話を通しているかによります。先も言いましたが、前々からの相談はあなた方以外の生徒の保護者から連絡、相談を受けてます。アレルギーの他、何か欠点なども含め相談を受けていますが、最初に保護者会で先に必要な話を事前に受け入れしていたのですが?」

「……すいません」

「よろしい、今回の件が無ければ平等にするべき所はする形でしたがね」

 そう言ってバートンは出て行く。

 これはこれで放置しないでほしい。

 さっさと行ってしまおう。

 理美は荷物をカバンに詰め、そそくさと出ようとした。

「ちょっと、嘉村さん」

「……は、はい?」

「あんた、なんで」

『げっ! 嫌味言われるしかも直で』

「美術部入らないの? イラスト同好会もあるのに?」

「い、いや、あの空間でやりたい人いる?」

 直後、回りも顔を合わせ、皆が皆、頭を振る。

 あのあからさまな空気はやはりいたくはない。

 自信満々に言おうとした女子生徒も途中から暗くなって拒否をした。

「わたしは……やだ」

 今年の部員絶対不作だろうなと感じ、理美はとりあえず行こうとしたが声を掛ける。

「それじゃ私、急いでるから、えっと」

「高倉瞳よ、覚えなさいよ」

「名前覚えるの苦手で、じゃまた明日」

「全く」

 偉そうぶる瞳に対し桜夜が言う。

「で、嘉村さんの下の名前はなんでしょうか、普通にさっき答えあったど」

「……」

 急に目線を反らし黙り込む瞳を見て黙ってしまった。

「お前も苦手なのにのぅ」

 完璧に桜夜の手の内だ。


 理美は玄関口から出ると待っていた颯太と合流、そのまま車へと乗る。

 あの時の騒動の話から他愛のない会話までした後の事、颯太が気になる事を言った。

「こっちも最近、会計が合わないって経理の人が愚痴ってて、会計士も居るから見ては貰っているんだが微妙にズレていて才斗さんも困っていてな」

 もうこれはと思ったが、人間間違いはあるもの、それで簡単に不正とはならない。

「合ってないって横領」

「まだ決まった訳じゃないから、一応調べてるから」

「でも微妙なのも怪しくない?」

 颯太からすれば、4月初めもあり、今落ち着きがない時期、そのせいでたまたまと言う可能性もある。

「だから、何処から間違ったかを確認中、まぁ新入社員もいるだけじゃなく、中途社員や移動で来た社員もいたしで引き継ぎ上手く行かなかったかもだからな」

「それなら良いけど……」

 理美は今日の会議に目を通す。

 ほとんどあと少しで纏まると言う詰めるだけの話、来週の告知に載せるイラスト等、料理写真を見る為の最終段階だ。

 ただ理美には分かる。

『このままで良いのにやっかみ野郎が噛み付いてまた終わるのが遅くなるヤツだ。無理矢理通しても1時間オーバーだ』

 そう思ったら、本当にグダグダになり、案の定要らぬ所で煩いのが言い出して話も1度おかしくなるが何とか戻って最終決定となった。

 ようやく終わって、さて帰るかと颯太が理美を送ろうとした時、才斗が少し焦ったような雰囲気を醸し、早足で駆け寄って来た。

「社長」

「どうした?」

 颯太の耳元で才斗が何かを話せば、血相を変える。

「実は――」

「……分かった、ちょっと目を通させてくれ、理美、あっ今日琴さん居ないんだった。一緒に来てくれ」

「どうしたの?」

「良いから」

 一体どういう事なのか分からず理美はついて行くしかなかった。


 何故か社長室に来て、早々に颯太と才斗がパソコンを覗く。

 理美はと言えば、なんとなく気配が無いか社長室の扉を警戒していた。

「……うわぁマジかよ3年前から少しずつ抜かれてたのか」

「会計士にも見て貰ったんですが、改ざん跡もある事から、悪質な犯行、横領で間違いありません」

 颯太は才斗に自身の両親にこれについて話したかを聞く。

「親父には?」

「友吉様にも晴菜様にもまだ報告は」

 はっきりと分かった辺りで、今知っているのは会計士と自分達だけだ。

 ことを急いで表沙汰になってはいけない。

「理美」

「何?」

「この事は内密に」

「あっ、秘密ね」

 話を半分しか聞いていないが、なんとなく車で話していた内容だろう。

 察しがついたので、言ったところで誰が信じるのか。

 そう思っていたら、何か変な違和感を感じた。

 一瞬だがはっきりと何かが居た。

 理美は驚いて扉を開けるが誰もいない。

「あれ? 居ない……?」

「ちょ、何かいたのかよ?」

「うん、気配が」

「おいおい勘弁してくれ、社長室には社長のIDカードか秘書のIDカードが無いとまず出入り出来ないんだ」

「でもここは秘書室だから誰でも」

「秘書のIDカードも社長のIDカードが無くては入れない」

「まぁこの時間ならIDカード無いとなって話だから日中ずっとここに潜んでいたら」

「潜んでたら?」

「才斗さんの一本背負いか逆十字固め辺りが炸裂するぞ」

「後半って柔道じゃなくてプロレスでは?」

 実際理美は分かっていないまま返しています。

 才斗が何かを感じたようなしぐさで何も見ずに颯太に言う。

「もういい時間ですし理美様帰した方が」

 颯太は言われて腕時計を見れば、あの会議の影響もあってか本当に良い時間だ。

「それもそうだな、軽く食べてから帰るか」

「うぃ、モッティバーガー食べたい」

「そっちか、いいぞ」

 もう緊急事態だろうに平和な会話をし、社長室を後にする。

 才斗は最後に辺りを見渡し、退室時、社長室もその通りにある秘書室も鍵を掛けて出て行った。

 電気も消えた真っ暗な部屋に何かの気配が動く。

「……」

 そうして何事も無かったかのように秘書のパソコンの1つを勝手に開け、何か操作を始める。

 先程見ていた経理等の書類ファイルを見つけ、何か仕組んだ。


 次の日、会社で騒動が起きる。

「はぁ!? 一部のデータが消えた?」

 颯太が他の秘書の1人の報告で驚いていた。

 じっとパソコンのデータを見て確認し続けている才斗が言う。

「それもあのデータだ」

「まさか、犯人が?」

「可能性がある」

 丁度そこへ琴が来た。

「どうかしましたか?」

 今にも泣きそうな秘書の1人が説明する。

「経理のデータの一部がぶっ飛んでいて見れないんです」

 琴は才斗が座っていた椅子を借り、そのままパソコンを流し見、簡単なプログラムを確認してからの復旧を試みる。

「ちょっと良いですか……なるほど、これハッキングとかではなく、こっちで弄ってますね。少し面倒ですが復旧出来るか試してみます。それとバックアップ持ってるエンジニアを捕まえてもらって、そこから引っ張れるかも確認をしてもらって、それと私はこれをやっておきますのであなたは私の仕事を引き継いでもらって――」

 それだけでなく、色々なプランを考え、なおかつ自身の仕事がままならなくならないように簡単な仕事を引き継いでもらいながら復旧を急ぐ。

 皆に感心され、冷静で頼もしいとまで言われていた。

 だが、琴にはすぐにこれの原因を突き止めている。

『まがい物気配、しかも綿密に消されている』

 下手したら今回のまがい物の件は一筋縄ではいかないかもしれない。

 

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