休み
1年生にとって初めての休み、皆は1泊だけでも帰る生徒に休みを謳歌する生徒、それぞれだ。
理美はと言えば、この間皆で話していたジュリアの家へ遊びに行く事となっていた。
仕事があるにしても所詮はお飾り社長、いちいちイベントへ足を運んでまで挨拶回りなんてものもない。
あるとすれば、家族で挨拶に行くほどの重要なイベント位だ。
そして昨日の夜のことだ。
loinにて藤浦にストーカー扱いされたと言う内容が送られてきたのと、今後はド直球で言わないようにと隠れないで一緒にいて欲しいと書かれていた。
申し訳ないと今後気を付けますとだけ書いたが、やはり冬美也を放置して遊びに行くのはと思い、誘ってみようかと考えるも、友人宅に男を連れて来たら驚いて動揺されても困ると考えてしまう。
「距離を置くとは言ったけど……なんか心配だなぁ」
一応ジュリアに聞いてみようと思い、聞いてみたが駄目だった。
「申し訳ないです、流石に日向さんは男子と言うのを嫌っていて」
「いやいや、こちらこそ申し訳ないです。でもどうして?」
「松平君がやらかして」
「あぁ、広樹君と机持ってきてくれた1人だよね?」
「何したの?」
「大事な日向さんの刀コレクションを一口壊しまして」
刀、ピンからキリまであるが、基本安くて数万高くて何億の世界。
一本一本がオートクチュール、壊せば直る事はまずない。
それを壊したのだから怒らせても無理からぬことだ。
「ひょぇ!」
青ざめる理美に対して、ジュリアは冷静に話す。
「ケガとかしませんでしたが、落とした拍子に壊れてしまったのです。あれのせいで男の子は禁止になりまして」
「冬美也、そんなことしないよ?」
「分かります、一度会えば理解してくれます。ですが触らせないようにしてたのに松平君はいつの間にか、勝手に開けたのもあってそれ以降は信用出来る相手かを外で見るとのことです」
「あぁ……」
謝ったのか、賠償責任レベルで幾らしたのか少々気にはなったがこれ以上は聞けないと判断し、結局冬美也を誘うことは出来なかった。
ゼフォウにもloinで心配の胸を伝えると、一緒に行動をするから大丈夫と言われたので、とりあえず安心だ。
そして今日、ジュリア宅へと皆と共に行く。
まさかの高級住宅地、理美は驚いて緊張してしまう。
「何緊張してんの?」
「だって、ここ来ないし、緊張するし」
「言っておくが、あたしらはここに住んでいる住民だべさ」
「と言うか、ジュリアちゃんとほぼ近所だよ?」
「あーしは少し離れたマンションだけどね」
それでも高級住宅地内ではある。
流石私立に通う人間達は違うと言う顔になるが、実際理美も変わらない。
美空は父、才斗が理美の親の会社で働いているので分かっている。
「セカンドハウスとかありそうだけど」
そう絶対に会社の近くに住まいを置いてい無い筈がない。
理美だって分かっている。
「颯太兄のマンションとかお父さんの住んでいるマンションは別々だから」
「既にあるんじゃん」
でもそれは一人立ちした人間とほぼ単身赴任用のマンションだ。
桜夜は気になって聞いてくる。
「理美っちょは⁉︎」
勿論、実際にはあるが、行きたいとか言い出しそうで正直面倒だ。
『あるけど、煩くなりそうだから黙っておこう』
嘘は言わないが、とりあえずはぐらかす。
「受験の時もだけど合格した時もホテルだったし」
元々海外出張中の兄と父の家に入るのはと言う話と一度泊まってみたいホテルだったからのもあれば、受験時も家よりホテルの方が幾分か楽だったからだ。
急に笑いが起き、美空と桜夜はもう冗談だよと言いたげに笑い続ける。
「あはは、そりゃ無いか」
「流石に子供にマンションや、まして一軒家なんて与える親がいるわけないでしょ?」
実際、寮ではプライベートや趣味の継続は難しいだろうと言う理由で用意されていたなんて死んでも言えない。
そうしている内に、ジュリアの家に到着した。
かなり大きな一軒家だ。
ジュリアはすぐさま、門の隣にあるインターフォンを鳴らす。
楽し気な声が止むと、誰かが来た。
本当にあの時の日向だ。
なんか気持ち会いたくなかったが、付き合いと言うもの分かるだろう。
「おかえりなさい、ジュリアといらっしゃい美空ちゃんと桜夜ちゃんに……」
日向としても会っているから名前を言うなんておかしくなるのは分かっていた。
もちろん理美もだ。
「は、初めまして嘉村理美です」
一度会っているなんて言えない。
美空と桜夜がそのあと挨拶をする。
「こんにちは日向さん!」
「こんにちは!」
「はい、こんにちは、日向光秀です。さぁ入っておやつ用意してますよ」
そつなく熟す日向を見て、やはりそれなりに生きていれば上手いのだろう。
皆嬉しそうに家へと入っていった。
本当に広いリビングとⅬ型のソファーに皆が座り、遊びながらもテーブルには宿題のノートと教科書が広げられている。
理美は借りてきた猫状態で固まったまま動かない。
何よりも日向が怖くて動けないのだ。
キッチンの方で1人椅子に座って何かスマホをいじっているのだが、凄い険しい顔をしている。
怖くなった理美は意を決してジュリアにこっそり聞く。
「ねぇ……先ほどと打って変わって怖い顔してるの?」
「あぁ、実はお友達にソシャゲのお誘いを受けて、今までは歴史系のゲームはすべて断っていたのですが、今回バーサーカーだけは受けたそうですが、なかなか進まなくってもう止めるかクレーム入れるかの二択だそうで」
「そうなんだ……なら」
理美は何を思ってか日向に近づく。
「どうした? 管理者のことは忘れて、せっかくジュリアからの誘いを受けて来たんだから遊んで」
「バーサーカーのレベルとアイテム見せて、楓太兄ならアイテム次第で大体なんとか出来るようにしている筈だから」
「はっ?」
何を言っているんだと思いはしたが、とりあえず見せてみる。
見た理美がある事を言う。
「キャラ立てよりもまずアイテムボーナス生かせてないです、まずはこれとこれを繋げればコモンだけどボーナスが使えるのでレア等々とあまり変わらない強さになるんです、説明もあった筈ですけど、でも対戦相手のフラグと自分のフラグをちゃんと見てないとそれから天候と風向きも」
一応知っている限りの話をし、いざ対戦に入ったら、あっさり勝ててしまった。
それを見て、ふとある事を思い出した日向の額に皺が寄る。
「……一、後で覚えとけ」
何をしたかは聞かないが、多分、適当な事言っていきなり入らされた人間なんだろうなと感じた。
理美が戻るとジュリアはどうしたのかと聞く。
「どうしたんですか? 急に離れて」
「いや、ちょっとね。それよりも宿題教えてほしいなと」
なんとなく、桜夜にだけは教えたくないだけだ。
嘉村グループのソーシャルゲーム部門でバーサーカーが作られていると教えてしまうと下手すればしつこくなりそうで怖い。
と言うよりも、ファンの一線を越えられたら友達として接することが出来なくなるからだ。
美空は日向の様子を見ていたようで、流石にそこは言われてしまう。
「でもなんか、さっき凄い形相になったよね?」
「分からない、私、分からない」
ただの親切だったのだが、まさかのあれだったので本当に分からない。
これ以上話を振らないでくれと願っていると、美空が急にジュリアに聞く。
「そういえば、お姉さん元気?」
「はい、元気ですよ、夏休み辺りでこちらに来るそうです」
理美も入れそうな話だ。
「お姉さんいるんだ」
「理美ちゃんと一緒で養子縁組した人なんだよ」
「へぇぇ」
そんな会話をしていると、何か料理でも出来たのか日向が持ってきた。
「ほら、このまま昼食を取るだろ?」
置いたのはいつ作ったのかいろんな種類のサンドイッチだ。
「ありがとうございます、日向さん」
日向の先ほどの雰囲気が変わっていたのに美空が気が付く。
「あれ? 急に機嫌よくなってますね!」
「少々手こずってたのが上手くいったんでもう少し続けようと思っている」
やはり少し難しいのかと理美は思い、義理の兄である颯太にもう少し簡単に出来ないか相談してみようと考える。
ジュリアが気になって聞くもはぐらかされてしまう。
「何かしてたんです?」
「内緒だ、いちいち話すとキリがなくなってしまうんでね」
「えぇぇ理美っちょいったい何を話したん⁉︎」
「絶対言わない」
そう、下手に言うと今後イベント時にいちいち話を振ってきて面倒になってしまうのが目に見えて分かるので絶対言わない。
なんだかんだで夕方までほぼ1日いた感じだ。
「お邪魔しました!」
「ご飯ありがとうございました」
「では、来週また帰ってきますので」
皆それぞれ挨拶をし、日向もまた友達を連れて来るなら連絡をと言った感じで言う。
「分かった、また連絡してくれ」
「はい」
理美もなんとか1日送れたと思い、お礼がてら早々に帰ろうとした時だ。
「ありがとうございました、また」
「そうだ、これ持っておいてくれ」
「これは?」
何故か自分にメモを渡すのかと思っていると、日向はこんな事を言う。
「一応連絡先だ、ジュリアに何かあった時連絡をくれ」
「分かりましたありがとうございます」
「もう子供じゃないんです!」
頬を大きく膨らませるジュリアを見て、日向も理美も苦笑い。
まぁ一応連絡先位入れるのが礼儀だろうと確認すると、何か書いてある。
“今日の深夜1時に管理者の集会あり、地図の所に集合”
連絡と共に管理者の集会に集まるように書かれたメモだった。
『どうやって抜け出せばいいんですか!?』
ひっそりと確実に困惑した。
寮に戻った時、皆それぞれ他愛のない話をし、深夜12時を回れば皆静かに眠っている。
明日も休みなのだから皆起きていそうなものだが、なんだかんだ疲れたのだろう、あの桜夜も寝ていた。
「……おかしい、普通は起きていそうなのに」
流石の理美でも疑いはする。
にょきっとメリュウが桜夜を見てある事を言う。
「もしかしたら、これも幻覚とか?」
「えぇぇ起きてるの本体?」
自分だけそう見えていると思ってしまったが、アースがそれに対して突っ込んだ。
「そうじゃないと思うわよ。桜夜ちゃんの方を深夜回ったと錯覚させたのよ」
「正解だアース」
急に部屋の通路側から声がし、すりガラスから顔が浮かび悲鳴を上げてしまう。
「ひゃぁぁぁぁ!!」
「理美、私だアダムだ」
恐る恐る、扉を開けるとアダムが立っていた。
「な、なんだアダムか、心臓が未だにバクバクなんですが」
「す、すまん」
流石に驚かせてしまった事を謝罪した。
「なんで、日向さんあの時は納得がいかない時は、今の人生をとことん満喫或いは納得行くまでこちらとはあまり関わらない方が良いって」
「まぁ、そうだろうが、現状が変わったとも言える。寧ろ関わらせた方がより考えられるようにと」
なんだろうか、まさかまがい物の件で状況が早まったのだろうか。
どちらにせよ、あまりいい方向ではないのが理美でも分かった。




