崩壊
三人が朝日山口駅に着いたころ、まだ正午過ぎであった。足子は、二人に挨拶するとスタスタとホームへ行ってしまったのでついていこうとすると、久美子が手を引いてきた。
「うん?なんだ。」
「汗かいたでしょ?あなた、帰る家がないって聞いたし、今日は寄っていかない?」
「親はいるのか?」
「だいたい帰ってこないのよ。だから大丈夫。」
彼はその言葉を信じて、アパートに案内してもらった。彼女が靴を脱いで裸足を露わにし玄関へ上がった。
「やっぱり靴下履かないのか。」
その言葉に返事をすることもなく、その場で服を脱ぎ始め、裸になった。
「お、おい。どういうつもりだ?」
それにも反応せず、着ていたものを洗濯機に放り込み、バスタオル片手に風呂場に入り、シャワーを浴びる音が響き、間もなく廊下へ全裸で出てきた。
「むつみ、なにやってるの。さっさと上がりなさいよ。あとバスタオル準備してあるから、部屋で待ってるね。」
そのまま、自室と思われる部屋のふすまを開けて入っていった。彼は、スニーカーを脱ぎ、裸になってシャワーを浴びて簡単に汗を流し、用意されていたバスタオルで身体を拭き、彼女同様に着ているものやバスタオルをすべて洗濯機に入れた。そして、彼女の部屋へと入ると、ベッドで仰向けになっていた。おもむろに彼女に近寄ると、無心になって彼女に覆いかぶさった。
「こ、これが男の臭いなのね。」
「お前が悪いんだぞ。」
彼女を抱きほぐしてやると、初めは抵抗していた彼女も受け入れていった。
「はぁはぁ、私をいたずらした人、知ってる?」
「あぁ、あの、山で見たあいつか?」
「もう一人、いるわ。」
「そいつは、まさか。」
「ニア。」
急に彼は、自分の行っていることが気持ち悪く思えた。彼女が襲ってきたかに見えて、まんざらでもなく受け入れてしまう自分。どっちつかずの自分。足子を裏切っている現実。それでも柔らかい裸体を前にしたとき、身体が勝手に動いてしまう自分。それが嫌だった。ただ嫌悪すればするほどに、目の前に集中することでしか満たされなかった。彼はただ夢中になった。彼女も受け入れた。
「ねぇ、あなたで私を上書きして。」
「あぁ、やってやる!」
ただ、何か違和感を感じた。彼女が次第に豆腐のように崩れ始めているのだ。彼女の顔にはシワができ始めたが、彼女は目を閉じていて、自分の状況が理解できていなかった。
「あぁ!これが愛!溶ける!溶ける!」
彼は怖くなって目を閉じた。すると、彼女の身体を貫いたような感覚があり、不意に目を開けてしまった。彼女の首が落ちる瞬間が脳に焼きついた。そしてベッドから何かが落ちる音がした。そして、彼は空っぽの何かに出した。彼女がどうなったのか、怖くて見たくなかった。しかし、どうしようもないからゆっくりと目を開けると、彼女の肉体は消え失せ、白い骨格が見えた。彼は、とっさにその場から離れる拍子にベッドから転げ落ちた。そのまま、茫然自失となった。しばらく立ち上がれなかったが、落ち着きを取り戻して立ち上がったとき、彼女の身体が骸骨と化しているのをハッキリと見た。我を忘れて、ベッドの脇に落ちている頭蓋骨を拾ってバッグにしまい、下着も着ないままに制服に着替えると、アパートを後にした。




