電車内にて
3人は、1つの頭を連れて、到着した列車に乗り込み足子はロングシートの端に率先して座り、ヤッキーは座席側に、ニアはその間に座った。ニアは呟いた。
「別に他人なんて気にしないけどなぁ。」
「そういう考えが身を滅ぼすんじゃないか。」
「今回は君に甘えるよ。」
「・・・。」
電車は、奥野森駅までの快速であった。颯爽と駅を通過し、気づいたらヤッキーが乗った駅をすでに通り過ぎていた。そのまま学校のある町を抜け、林を走り、車両基地を通り過ぎ、各駅停車を抜き去り、だだっ広い田園の中で風を切った。
大きな川を越え、住宅街に侵入した時、列車の到着案内がして、まもなく列車は止まった。すると、別の高校の男女の学生が向かい側のロングシートに足を組んで座り、空間を響かせるようなおしゃべりを始めた。するとニアが歯ぎしりを立てて俯き、足の指に力が入っているのが見えたので、彼はとっさに足子に気づかれないように、ニアの腕を組み手を握った。するとニアは彼の手の平を爪でひっかいたり、関節が鳴るほど握りしめたが、なんとか耐えた。しばらくして、ビル群に囲まれた駅で彼らが降りた時、電車内は静かになった。ニアはふぅと息を吐き、天を仰いだ。ただしばらく手を握り続けていた。
都市を抜け、再び田園風景となり、人もまばらになった頃、ニアの緊張もようやく解けた。ふとニアはヤッキーに向かって、呟いた。
「私をいじり回した男の一人。足子に関心を消されてせいせいしたぜ。」
すると、以前私に耳打ちしたときと同じく、目を閉じて、ニンマリとした。しばらくして、前方に山が見え始めた頃、ニアは彼の腕を振り払って足子に問いかけた。
「なぁ、こういう風景も全部足子が作ったんだろ?すごいよな。」
「厳密には違うんだけれども・・・。」
「太陽に月に宇宙にさぁ、それはもう壮大だけど、それに細胞、そして生殖。さらに裏切りに殺人まで。創造主の業は深いよねぇ。」
彼は思わず彼女らの顔を覗いたが、足子は素っ頓狂な顔を浮かべて、答えた。
「まぁ生命ってこんなもの?かな?」
「ちなみに私はちょっと別行動したいんだ。」
「あら?何か気でも触れたかしら?」
バッグのなかで首子は反応したが、ヤッキーはニアにも事情があるのだと答えたら、このあと誰もそれといった反応は示さなかった。ふとニアは、おもむろに首子を手提げバッグから拾い出した。
「な、なにするの?周りに見られたらまずいでしょうが。」
「誰も無関心なんだからいいんだって。それに、おしゃべり人形にしか見えないだろ?」
「な、なんですって?身体を取り戻したら、ただじゃおかないわよ?」
「まぁまぁ。」
ニアは首子のこめかみを両指で優しく揉んでやると、ムスッとした顔を浮かべながらも彼女はおとなしくなった。さらにニアは、足子に尋ねる。
「ここで裸になってもさぁ。誰も私たちを咎めないでしょ?」
「それは、やめて。今日は森に行くんだし。」
「まったくニアは放っておくと危険だなぁ。」
ヤッキーがため息をつきながらそう言い放つと、ニアは、いきなり膝を開いて、首子の顔をその下に埋めた。
「うっ!あ、あんた相当の変態よ!」
「ふふふ!その首飾りの礼くらいしてくれよ。」
すると、ヤッキーは首子を取り上げ、彼女の肩を叩いた。
「いつまでもこんなことしてると、足子に消されるぞ。」
そう言うとニアはさっと膝を閉じた。足子はただ見ないふりをしていた。首子は眉をひそめ、口をつむぎ、じっと彼の膝の上で黙っていた。ふと窓を見ると、鬱蒼とした森の中を走っていた。途中、崖道スレスレの渓谷を走ったり、三角の小高い山々がどっしりと聳えつのが見えたり、長いトンネルを延々と駆け抜けたりするうちに、それぞれに少しずつ緊張が高まってきた。特に首子は今にも泣き出しそうであったので、彼は頭を撫でてやった。ふと終点に到着する案内がされたので、それぞれが立ち上がり、思い思いに身体を慣らした。車内には彼ら以外はおらず、すでに正午を過ぎていた。駅に到着すると、足子がカランカランと音を鳴らし歩くのを先導に、皆がついて行き、駅を出た。




