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ニアの本音

ヤッキーはニアとともに玄関をでた。ニアはスポーツ系の簡素なサンダルを履いていたが、女子なら何でも似合うのか、特に違和感など感じなかった。ヤッキーは、素脚で自分が履いてきたローファーを履く他ない。

ニアとともに駅まで歩いていても特に会話が生じることはなく、彼女はただ森を眺めているだけだった。気まずくなった彼は彼女に話した。


「なぁ、今日は晴れててよかったな。」

「ん?まぁな。」


ただそこで会話が途切れてしまった。彼女は歩くペースが速いものだから、ついていくのに必死だった。


「普通さぁ、この場合ってなんか色々話すもんじゃないのか?」

「ふつーって何?」


彼女はこちらを見向きもせず、ぶっきらぼうに答えたので困った。


「まぁとりあえずさ、今日はどういうの探そうかとか、色々あるだろ?」

「あーそっかぁ。まぁヤッキーならそういうの気にしないで、のんびり歩けるのかと思ったけどね。」

「お互い異性同士だから気にするさ。」

「そんなもんだよなぁ。私、中学の頃も男が鬱陶しくてさぁ。かといって女子とも特に話したりとかはしなかったしね。」

「お前も色々悩みはあったんだな。」

「当たり前だろ!」


ニアに肩をバシッと叩かれた。まるで彼女に煩悩を見抜かれているようで、気恥ずかしくなったが、それ以降、特に何か会話が起こることもなく、駅のベンチに隣同士で座り、電車が来るのを待った。ニアであろうが女子が隣にいるのは、彼にとって癒しで、ずっとこのままで居たかった。一方のニアも似たような境遇に居たかもしれない。二人だけの甘い時間を無言のまま過ごした。

ふと、ホームから案内が流れ、まもなく電車が到着したので、2人は乗り込んだ。ちょうど2人分座れるだけの席が開いていたので、身体を密着し合いながら座った。そのまま電車に揺られていると、ふとニアが口を開く。


「私、実は話したかったことがあるんだけど。」

「ん?なんだ?」


すると、彼の耳元で囁やいた。


「(ジジェイの首が落ちる瞬間、興奮しちゃった。)」


彼は目を見開いた。そして彼女に一体何を語りかければよいのか分からなかった。彼女の性質上の話だから仕方がないのか、それでも何か言っておかなければならないのか。そもそも興奮したという事実を暴露したということは、何か自分に気があるのではないか。ふと彼女に振り向くと、目を閉じて口角を緩ませていた。彼は、大勢の人が行き交う密室的空間で、目的の駅に着くまで、じっと座っていた。

駅に降りようとした瞬間、ニアは誰かにサンダルの縁を踏まれて、ホームの隙間に落としてしまった。ヤッキーがそれに気づいたのは、ニアが駅の端に立ったときだった。


「おいニア、なんで片方裸足なんだ。」

「あ、ホームに落としちゃった。」

「あーまったく、駅員に聞いてくるか?」

「いや、このままでいいよ。安いサンダルだし。」


彼女は、もう片方のサンダルを駅のゴミ箱に捨てて、なんら気にする素振りを見せずに、裸足のまま、階段を登っていく。彼は居てもたってもいられず、ローファーを脱いでバッグにしまい、ニアに付いていった。


「お、ヤッキー男気あるじゃん。」

「実はな、こういうのは慣れてるんだ。」

「お前にも野生の本性があったとはな。」


彼は以前に足子と裸足で帰ったことを思い出した。その何とも言えないスリルを共有している気持ちよさをここでまた味わえるとは思えなかった。雑踏の中、二人はたったっと、裸足で地面を踏みしめた。彼は小股で自分の足元に目を落として歩いていると、彼女は手を握ってきた。


「緊張するなって!誰も私たちのことなんか見てないんだし、堂々と歩こうよ!」

「あぁ、そうだな。」


ふと、彼女の足を見たとき、家にいるかのように踏み出していた。アパート内では、何ら気にも留めなかった。彼女の足は大きく、指先まで男らしく一本一本が太く切り立った岩のようであった。似たような背の裸足の男女は、足の裏を晒しながら、改札を出て、駅舎に地続きのショッピングモールへと吸い込まれていった。

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