ロクロ首子
祈りも終わり、痺れが収まるまでそれぞれが思い思いに足を伸ばしたりなどして、一息ついた。しかし目の前の塔を前にして、冷静でいられたのはジジェイだけで、他3人は内心震えていた。ヤッキーにしても部室に入った際、刃を磨く彼女の姿を目の当たりにして立ち尽くしてしまったのだ。自らが上履きを履いていないことを彼女に咎められることなど気にする余裕もなかった。足子も自らの古傷をさらにえぐられるようで、気づけば自分の首の傷を掻きむしっていた。ニアは興味深そうに腐りかけた木の骨組みや今にも千切れそうにピンと張った古い紐、そして今にも壊れそうな錆に覆われた滑車、そしてキラリと光る刃先に連なる重厚な金属の板をじっくりと観察した。
「これ、本物なのか?」
「ええ、そうよ?演劇部の小道具部屋からやっとの思いで運んできたんだから?」
「へぇー。」
足子は堪らず、ジジェイに迫った。
「これ、どうする気なの?人を殺してしまうの?」
「ま、まぁまぁ落ち着きなさいよ。首を斬られるのは私。」
「え?」
「でさぁ?あんた、いろんな能力があるって言うじゃない?もしかしたらあんた、生首になった私を生かしたままにできるんじゃない?」
「うん。でも何がしたいの?」
「生首の気持ちを確かめてみたいのよ!」
周りの皆が、思わず身を引いてしまった。足子は困惑を隠しきれないまま彼女を諭す。
「首を刎ねられるって本来、死を意味するのだけど、それ抜きにすると単なる大道芸になるような気がするし、私もあなたを生かせられる保証なんてないよ。こんなこと初めてやるし。」
「だ、だったらちょうどいいじゃない?私が死ぬかどうか、ここで試してみようじゃないの?」
ヤッキーはすかさず彼女を咎めた。
「お前には命を大切にするって気持ちがないのか?」
「え?もちろんあるわよ?だから楽しいんじゃない。私は足子に身を委ねるよ。あなたもやるかしら?」
「ぐ、そういう問題じゃないだろう。」
彼が戸惑うのを他所に、気品に満ちた悪役令嬢のように自らギロチンの前に跪き、首を伸ばして枷に置き、顎を引いた。
「誰が縄を切ってくれるのかしら。」
「おい!本当にやる気かよ!」
それでも、彼女は動く気配はない。ニアも息を呑んだ。刃は彼女の首の上で静かに今か今かと待ち望んでいる。数百年間の時を経て、自分の役目を果たす喜びに満ちているのである。足子はずっと葛藤していた。ジジェイの欲求と自身の道徳の間で揺れ動いていた。ついに時を止めるに至った。自分の中の天秤が、どちらに傾くのか分からなくなってしまい、ついに自分の意志とは無関係に体は動き出した。ジジェイの耳元で呪文めいた何かを囁やいた。次の瞬間、刃を支えていた縄が千切れて気づいたら、首枷は金属の板で遮断されていた。ジジェイの頭は髪を乱しながらマットの外まで転がり落ちた。血が一筋の道を作り、その先で上履きを赤く染めた。身体からは止めどなく血が溢れ、マットに滝のようにこぼれ落ちた。
ヤッキーは狼狽えて、腰を抜かしてしまった。ニアは立ち尽くす他なかった。足子は我に返り、ジジェイの首を両手で拾い上げた。彼女は何の反応もなかった。足子は背筋が凍り、その場で腰を下ろして、ただ首を抱きしめた。そして、表情を変えず早口で小さな声で呪文を繰り返し繰り返し発した。マットから流れてくる血で足が汚れても気にすることもなかった。自分自身がその様子を覗くかのように無心になった。自分の頭がジーンと重くのしかかった。もう何十回、何百回と同じ呪文を繰り返したとき、ジジェイは目を開けた。それを見た足子は反対に、足子は気が抜けて、そのまま気を失ってしまった。




