足子への思い
しばらくして目が覚めると、雨も止んで、一面曇り空であった。一度寝れば、自分の気持ちがなんとなく整理されてきたようであった。イヤホンをとり、自分の行いを内省した。寝不足であったのかもしれないが、彼女の気持ちを推し量ろうともせず、衝動的な行動に走ってしまったことを強く後悔した。時間を巻き戻せるなら、あのときに戻って、軽く受け流せばよかった。しかし、自分にはそのような能力を持ち合わせていない。彼は彼女のことがとても心配になった。もし、彼女がひどく心を痛めていたら、自分の首を切り落とすのではないか、彼女の首の傷がまざまざとイメージとして表れ、いても立ってもいられず、空き教室を出て、廊下を走り抜けた。家族に見放され、さらに彼女もいなくなってしまうと思うと、とても恐ろしかった。今の自分には足子しか頼れる人がいない。彼女を求める心の奥からの叫びが、ただ私を動かした。今の私に意思などなく、疲労や不安、すべてを忘れ、ただ勝手に足が動いた。そして、教室へ戻ると、彼女は普段通り授業に集中して教師の言葉に耳を傾けていた。しかし、彼はお構いなしに、自分の椅子を彼女の前に向け、目の前に座った。彼女は、筆を止め、また困惑した表情を浮かべていたが、気にせず彼女の首の傷に手を当て、おもむろに指で撫でた。彼女は身を引いて、顎を上に向けつつ、怪訝な顔で彼を見つめたが、彼は彼女に言った。
「お前、首繋がってるよな?」
「う、うん。急にどうしたの?あと、いままでどこに言ってたの?」
彼女は何食わぬ様子で平然と話したので、彼はむしろ安心した。いつもの足子がここにいるのだと思うと彼は堰が切れたかのように、涙を零した。
「ヤッキー、授業中だよ。前向かないと。」
しかし、彼には彼女の言葉も顔を分からず、ただ涙を流し続けた。その涙は、自分の不安や恐怖、後悔の念をすべて洗い落とした。彼女は彼の様子にただ何をすればいいのか分からなかったので、手を触れた。すると、余計に彼から涙が溢れたが、彼女はじっと彼を見つめるのみであった。ただ、彼女は、超能力を使わずとも自分に対する言葉にならない思いを感じ取ることができた。まさか自分の頑固さがこういう結果を生んだとは知る由もなかったが、彼の自分に対する強い思いを感じ取ることができたので、彼に対して癒しの波動とともに、これまでの授業の内容を彼にテレパシーで送った。お互いが不器用ながらも、手を触れれば分かり合えることを二人は感じ、それが心の支えになった。しばらくして、一旦、彼女は手を離し、自分の首に触れた仕返しにと、ハンカチを取り出し彼の涙を拭いた。それを彼は素直に受け入れ、次第に落ち着きを取り戻していった。




