孤独の教室
学校へ来れば、ヤッキーは気持ちが落ち着いた。もはや家に居場所はなく、学校にそれを求めてしまうなど夢にも思わなかった。そのために、昇降口に着いたら、上履きを履かずにペタペタと我が家にいるように振る舞った。もはや周りも自分のことなど見てはおらず、ここは自分たちだけの場所なのだという類の開放感を味わった。
教室へ入ると、足子が既に席に付いていた。
「足子、おはよう!」
「あ、おはよう。ところで、なんで裸足なのかな?」
素直に僕の身なりを聞いてきた。まるで初めて彼が彼女に話しかけたことを再現するようであったので、薄っすらと笑みを浮かべ、答えた。
「日本人なら裸足でいるのが普通だろ?」
「まぁその通りだが。」
彼女は、彼から視線をそらした。おそらく過去の発言を思い出して、恥じらいを覚えたのだろう。彼は、彼女と初めて会った頃と比べて人間味が増していることがただ嬉しかった。人と接することの温かみを彼女が覚えたのであれば、彼女の人生にとって大きな前進であるというのは間違いではないと彼は信じた。ただ、彼はここが自分の城であるという感覚が強くなって調子に乗り、性懲りもなく、彼女に問いかけた。
「なぁなぁ今日は授業サボって屋上でのんびりしようぜ?」
ただ彼女は頑なに答える。
「それはしたくないと昨日話したはずだよ。」
それでも彼はこの鬱屈とした空間に閉じ込められて、ただ黒板に向かってペンを取るだけの時間が苦痛に感じられたので、なんとか説得したかった。
「なぁなぁ、授業内容もさぁ、あとから記憶するって能力使えたりしないの?そうすれば首都地域の大学とか余裕じゃん!」
「そうやって大学に入ってもあとから後悔するかもしれないから私は今こうして頑張っているの。いつまでも君と一緒にいられるわけじゃないかもしれないしね。」
彼女の言葉に、彼は焦燥を覚えた。彼女が自分を巻き込んだのに、自分のことを突き放すような言い草がどうしても気に入らなかった。そのため、彼は一人で黙って教室を出た。彼女は困惑したが、引き止めることができなかった。彼はただ無心で足跡を残しながら廊下を歩き、屋上へと向かうと、雨が降っていた。朝は晴れていたからこれも彼女の仕業だと思うと余計に腹立たしくなり、近くの誰もいない閑散とした薄暗い空き教室で、ただ一人で椅子を並べて寝転んだ。彼は虚しかった。ここまで孤独に苛まれるのは初めての経験で、静かに涙がこぼれていた。それすら鬱陶しく思えた彼は服で目をこすり、イヤホンで音楽を聴いた。そうすれば嫌なことも全て忘れられるような気がした。彼は足を伸ばして気が済むまで、惰眠を貪った。




