盟友たち祈り
夕日が教室を紅蓮に照らす放課後、足子とともにオカルト部室へ出向こうとしたその時、ニアが後ろからお互いの肩を抱き寄せるように組み、間に入ってきた。
「やぁ、ラブラブのお二人さん!今日もデート?」
「いや?ていうか、お前は僕たちが見えるのか?」
「あ?お前らの関係なんてそんな興味ねぇし。」
「そうじゃない。朝に話しただろ?みんなが無関心だって。」
「あーそういうことか。」
ニアは授業の合間、ずっとまどろみのなかにいたため異変の実感がなかったのだ。しかし彼はニアも自分たちとともに同じ時を共有できたことは、心強かった。そこで足子に一つ提案をしてみた。
「なぁ足子、ニアもオカルト部に連れて行ったほうがいいんじゃないか?」
「うん。悪くないと思うよ。」
ニアはキョトンとした顔で、二人の顔を交互に覗いたので、彼は事情を説明すると、目を輝かせて快諾した。ニアにしろ、マンションに帰ってもただ一人テレビゲームに勤しんで、寝たいときに寝るだけの日々は虚しいだけであるはずなので、当然の選択なのだろう。ヤッキー一行を中心に女の子2人が両脇に従え堂々と廊下の真ん中を歩いた。ニアは茶化すように声を張り上げる。
「おーい。ヤッキー殿下のお通りだぞ!」
「バカ!お前!」
ヤッキーはニアを小突くとこちらを覗きながらニヤニヤして話し続ける。
「周りは私たちのことなんか見えてないんだからいいじゃん!それにお前、女の子2人も携えて、贅沢だと思わないのか?」
「そりゃまぁ。」
「それは違う。」
無口な足子は急に口を挟んで、さらに語り続けた。
「私たちは運命共同体として、この謎に挑まなければならないの。だから、男だとか女だとかは関係ない。」
「そういうのを、愛し合ってるって言うんだろ?」
ヤッキーは顔をしかめて無言でもう一度ニアの脇を小突いたら、くすぐったそうに体をむずっと動かして、あん、といやらしい声を上げた。足子は、ニアの一言にただうつむいていた。ただ、どこか自分の言ったことに対する後悔や恥の念を隠すように見えた。
そうこうしているうちに、オカルト部の前まで着いたので、ガラッと部屋を開けると、マットの前に上履きが脱いであり、すでにジジェイは胡座をかいて待っていた。ニアはヤッキーに先導されるように恐る恐るあたりを見回しながら、お邪魔しますと、静かに挨拶をして2人に従って上履きを脱ぎ、それぞれが裸足になってマットの上に乗った。ジジェイは見知らぬ顔が現れたので髪の奥から目をまん丸にして、問いかけた。
「あら、あなたは?」
「あぁ、ニアって言うんです。2人に連れてこられました。」
「ふーん。まぁいいか。さっそく、足子。私のところに座って。」
足子は、言われるがまま、カーテンの目の前にこちらを向くように正座をさせられると、他三人は、ジジェイを真ん中に彼女に向くように同様に正座した。彼女は目の前にお香とお輪を用意した。全員が裸足であるのは思わぬ偶然であったが、そのせいで、部屋には足のニオイがこもり始めていた。ジジェイはお香の蓋を空け、おもむろにライターを取り出すと、複数の線香に火をつけ蓋を閉めた。幸い彼女にはタバコのニオイが感じられなかったのでホッとしたが、次第に、ほのかな杉の香が部屋を包み、足のニオイを消してくれた。ただニアは我慢できなかったのか、ジジェイに、いつまでこうすればいいんだ?、と問いかけたが、それを無視し、足子に向かって透き通った声で呪文を唱える。
「山を喰らい、川を呑み、人の罪を喰らいたまえ。我、ここに願い奉る。我、ここに捧げ奉る。されば御怒りを、我らより外したまえ。南無蛇神、南無蛇神」
そして、お輪を一度響かせると、足子に向かって手を合わせて目を閉じたので、ニアとヤッキーも彼女に倣って同じく手を合わせた。音は部屋中にこだまして、息を呑む静寂をその空間にもたらした。その間、足子は、またも困惑の表情を隠しきれずにいた。音が消え去ったあと、ニアは途中目を開けてそぉっとジジェイを向いたが、ずっと目を閉じたので、仕方なしにずっと目を閉じ続けることにした。ふとジジェイは大きく手を叩いて、はい終わり!と一声かけたので、ヤッキーたちは楽な姿勢を取った。ジジェイは、お香をそのまま六芒星の中心において、お輪だけ棚の上に置いて、適当な場所に腰掛けた。




