最強
足子は上履きを脱いで足を弄びながら物思いにふける。いつものように授業は身体に任せ、思考の世界に沈む。
この世は本当にピラミッドでできているのだろうか。確かに人間は高度な知識をもつ。しかし、ウイルスや猛獣には勝てない。それは、人間の持つ傲慢さだろう。猫なら人間とともに生きるすべを持つ動物としてならピラミッドの頂点だろう。だから無意味なのだ。何が頂点なのか、何が最強なのか決めるのは。本当は無限角形の繋がりの中のごく一部に過ぎない。ただ特異点はある。たしかに、ヒーローは強い。でも次のヒーローが現れたら?そのヒーローよりも強いヒーローでなくてはならない。その繰り返しによって、数値のインフレーションは起こるのだ。しかし実体と乖離しているはずだ。なぜなら、やっていることは敵を倒すという一点にとどまるからだ。
そこで、数値無限の最強ヒーローを出してみよう。彼はどんな怪獣でも一瞬のうちに葬り去ることができよう。しかし女を殴ることはできるのだろうか?仮にヤッキーが私を殴ったら、私は彼を永遠に憎むかもしれない。彼のような実直な人が?私と分かり合える人が?その関係性を思えば、最強などその場その場で移り変わっていく万華鏡なのだ。そう思うと最強論は虚しい。だから私は最強に憧れることを辞め、自分を突き詰めることにしたんだ。
目の前には地球を飲み込むほどのグロテスクな肉の塊。こいつをどう処理する?地球発の小さい私に何ができる。やつの一振りは隕石級だ。大気圏外でこいつを見ると、まるで太陽が今にも地球を飲み込まんとするほどだ。ふとこの化物が静かに収縮し始めた。その巨大さから異様にのろく動いているように見えるが実際は、とてつもない量のエネルギーを蓄え始めている。地球を周回している連中は、我先にと最期は故郷に帰りたいと地球に降下している。地球を守るのは私だけ。そこには、愛する家族も、仲良くしてくれた友達もいる。でも、ヤツの攻撃を受けたら最強の私一人だけが孤独とともに宇宙を漂うことになる。それだけは嫌だ。だったら私は行く。
いっけぇぇぇぇ!!!!!
私はその塊と差し違え時空ごとワープした。そのまま、ブラックホールが発生し化け物とともに消えていった。
気がつくと教室にいて、皆が足子に注目していた。足子の叫び声は、現実世界に干渉していたのだ。ヤッキーは、今どこのページの何行目を読んでいるのか静かに諭すと、彼女は何事もなかったかのように取り直して授業に集中した。




