↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/18

解けないピース

何してるの?早くきなさいよ!


生まれるずっと前から根を張っていたであろう巨大な幹に覆われた森を感慨深く見回していると、神社の前にニア、足子さんとともに立つジジェイに咎められたので、急いで向かう。


まずね、ここへ来る時は二礼二拍手一礼!当たり前のことよ。


前髪の奥から真剣な眼差しを向けられたヤッキーは、神社の前を向き、2回深々と礼をした。それに彼女たちは続き、思い思いに拍手を2回し、最後に1回深々と礼をする。頭を上げると、3人はいまだに頭を下げていた。何か思い詰めているのか、女性はそうやってスピリチュアルを信じたがるのか、分からないが、ただヤッキーは立ち尽くすのみだった。そして、全員が頭を上げると、ジジェイが口火を切る。


早速だけど、足子!あなたの見ているもの、見せてちょうだいよ。


その言葉に足子さんは神社の前に立ち、手をかざした。すると、自分たち以外の存在が輪郭だけに変わった。唐突な変化に、ヤッキーは地下深くまで落ちてしまいそうな恐怖に襲われたが、その場に経っていられた。辺りを見回すと、どこまでも構造物しか存在しないこの空間に、永遠に振りかかるような得体のしれない不安に襲われた。ふと、ジジェイを見ると、汚れた足をワナワナ震わせていて、さらに巨大なヘビが纏っていた。


ジジェイ!そのヘビは!?

あなた、見えるの?これは私の眷属なのよ!

違う!


足子さんが険しい表情で否定した。ヤッキーには初めて見る顔だった。そして、興味深そうに、歩き回って観察しているニアに向けて手をかざすと、金縛りにあったかのようにその場で硬直した。足子さんは語る。


この世界は、私が生み出し勝手に増殖した構造体。このスケルトンに触れると現実と干渉を起こして、また厄介なことが起こる。そのヘビも私が探していた現実との不整合の一つ。

い、嫌だ。これは私の守り神なの!

違う。ヘビは私自身だ。


ジジェイは、ふと過去のことを思い出した。退屈で一人で山に登ると、自分と同じくらいの歳の女の子が立っていた。彼女は二礼二拍手一礼を教えてくれたので、一緒にやった。二人はどんぐり拾いなど、森の中で楽しく遊んだが、一人の男が登山口から登って来るとあめ玉をくれた。しかし、彼女は私の手を掴み、首を横に振った。その様子に男は急に掴みかかろうとしたので、身を守ると、彼女は蛇の姿にかわり男を丸呑みにした。その後、自分の中へと吸い込まれていった。あまりの激しさに、圧倒されその場に尻餅をついた。その後何事もなかったかのように静まり返り、急に怖くなって大声で騒ぎながら山を駆け下りた。その後、ことあるたびに自分の中にある蛇にお願いをすると、夢に蛇が現れ、夢を叶えるなら行動しろなど、かならず何かしらの助言を貰い、そのとおりに行動すると全てうまくいった。自分の中ではスピリチュアルとは真実なのだった。しかし足子の言うことがにわかに信じがたかった。


い、いったいどういうことなの?

私はかつて幼少期まで遡って、ピース集めをしてたのだけど、この神社であなたと出会ったの。さらに想定外の出来事が起こったから、私の意識の一部を蛇に変えて、あとには引けないからあなたに宿した。だから、そのヘビ、私に戻してほしい。

い、嫌に決まってるでしょ!ヘビがずっと私を守ってきたんだから!

守ってなんかいないよ。私は助言するだけ。


足子さんは手をくいっと自分に向けると、ジジェイに纏った蛇が、足子さんの方に動き出し、食いつくように飛びかかると、身体に吸収されていき、消えた。そのとき、ジジェイの中に深い喪失を覚えてその場で膝をついて泣き出してしまった。ヤッキーは彼女に近寄り、大丈夫、足子さんがいるから、と一声かけると、涙もすぐ止まり、すくっと立ち上がると、足子さんの目の前に立った。するとその場で、跪き頭を下げた。


足子様!一生あなたに付き従います。


足子さんは困惑した表情を浮かべたので、ヤッキーはまぁまぁ、新しい友達ができたんだからいいじゃないと、なだめると、まんざらでもない様子で、ジジェイの手を引っ張り立ち上がらせた。ジジェイは足子さんに羨望のまなざしを向ける。ただ、足子さんにはまだ解決していない問題があり、問いかけた。


まだこれがすべてじゃない。あれを見て。


ヤッキー、ジジェイは、足子さんが指さした方向を見ると、鳥居に黒い影ができていた。そして、足子さんは話す。


あれは、この世界でどうしても埋まらないピースなの。私はあのピースを探している。

ピースってなんだ?

それは思いがけないもの。たとえば、この神社の狛犬のスケルトンを、あの影に当てはめてみたことあるのだが、すると謎の男が現れる。私がワームホールで元の位置に返したが、あの怪奇現象を何とかしようとすると別の怪奇現象が、増殖してしまう。その解決法が困難だから、今は放置しているのだが、年々大きくなっているように見えるのだ。それが不安なんだ。

それが大きくなるとどうなるんだ?

私には分からない。ただ、思いもよらない出来事が立て続けに起きるのは間違いない。

冗談だが、自分自身ってのはどうなんだ。

それも不明だ。仮に私がピースだとしても、この世界の観測者が消える。そうなると世界は崩壊する。

それは困るな・・・。

ともかく、これを見てくれただけでも嬉しい。


足子さんは手を振り上げると、元の神社に戻った。黒い影も消えていた。ニアもハッと我に返り、こちらへ向かってきた。


ヤバかったな今の!

あぁ、何だったんだろうな。

それよりも上履き。

私もついていきます!足子様!

いや今日は帰りなさい。いいことが待ってるよ。

本当ですか!では、失礼いたします。


ジジェイは、深々と頭を下げると、一目散に山を下りていった。ニアも背伸びをしながら着いていった。ヤッキーは、黒い影のことが気がかりだったが、どれだけ気にしてもどうしょうもないことなのだと捉え、足子さんとともに上履きを買いに行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。