森へ
自室でヤッキーは念のため登山アプリをダウンロードしてみると、あらゆる地区の登山道が表示された。あらゆる経路を眺めるうちに、どういう景色を自分に見せてくれるのだろうかと、ふと猫殺しの好奇心が刺激され密かに山登りに興味を持った。しばらく辺りの名山をスクロールしたのち、今回登る山へと座標を合わせた。登山口はニアのマンションの目の前であった。標高を見ると、取るに足りない低山とも言えない小山だった。これなら自分でも登れそうだと、自分なりに登山なら持っていくべきであろう2Lペットボトルに水を満杯に入れて、長袖と長ズボンを準備し、就寝した。
翌日、待ち合わせの登山口に集合すると、足子さんは本格的な登山スタイル、ジジェイはなんと半袖に半ズボン、そして素足にサンダルを履いていた。さらにニアも制服姿でいた。
なんでお前がいる?
いやぁふと窓を覗くと、足子がいるなぁって思って、一応制服に着替えた。
ていうか、ジジェイは登山って感じじゃないだろ!
へぇ、これから登山か。まぁこの格好でいいや。
一方、ジジェイは、人を見下すように、答える。
私はこの山を司っている巫女なる存在なの。だから、神社に顔を合わせるときは、自然に近い格好でいると誓いを交わしたのだ。
なんだそれは!?
それはオカルト部に入れば全て分かるぞ?
まぁとにかくそれでいいなら山に行くぞ。
足子とヤッキーは手を繋いで登るのかな?
え?
ジジェイの唐突な一言に不意を突かれた。彼女は続ける。
あなたたちが、手をつないで歩いているところ、たまたま見かけたから。仲いいんだなって。
彼女の髪の裏からジトッとこちらを覗いているのが分かり、足子さんに事情を問うた。
存在を隠せるんじゃなかったのか?
あれは単に裸足でいることを隠しているだけだった。男女ならそれくらい当たり前だと思っていたが。
彼女のポーカーフェイスの裏に、うっすらと絆で結ばれているような温かみがヤッキーには感じられた。ただこの場ではそんなこと考えている暇はない。
そんなの些細なことだ。さっさと登ろうぜ。
ジジェイはプイっと森の方へ向いて、さっさと山で登っていった。ニアが続き、さらに足子さんまで森に入っていったので、ヤッキーも負けじと森に入っていった。急に辺りは暗くなり、辺りを見回しても木々に覆われているだけだ。さらに、なかなかの登道で、森林浴など考える余裕もなく、ただ一歩一歩進んだ。女子たちはたくましく、弱音も吐かずに、ドンドンと獣道を登っていくので、息を切らし、靴が泥で汚れるのも気にせず、ぐんぐん足を前に進めた。成長しきった枝をかき分け、藪を踏み倒し、目の前に現れた崖のような急登を足を滑らせながら、足場を見つけては、踏みしめる。登り切ると、すでに女子三人がすでに立っていた。
ヤッキー遅えぞ!男か?
うるさい!お前らがおかしいだけだ。
ヤッキーは声を振り絞って反論しつつ、息を整え熱が抜けると、辺りがよく見えるようになった。小さい祠の前に、コケに覆われたゴツゴツした石畳。辺りを見回りしても、鬱蒼と木々に覆われていた。だが、ヤッキーは、山を登りきった清々しさと同時に、これから起こる奇天烈な出来事に満更でもなくワクワクした。




