2話 スライム…握りつぶしちゃった。
音のする方へ向かって走ったけど、その音はすぐに静かになった。人間の叫び声については最初こそ聞こえていたけど、今では全く聞こえない。
ダンジョンの階段を降りて、2階層に入って少し進むと、その答えがわかった。
「何してるの?」
私は目の前の3人に声をかけた。
男二人、女一人。男は女が持っていた荷物を漁っているようにも見えた。
急に話しかけられて驚いたのか、身体を大きく揺らしてこちらに振り返るも、私の姿を見て男たちは顔を見合わせると、一人がゆっくりと近づいてきた。
「仲間がモンスターにやられちゃったんだ。それで回復させたいんだけどなにかアイテムがないか見ていたんだけど…お嬢ちゃんはなにか回復アイテム持ってないかい?」
水色の髪の男が近づいてきた。
「ん!これしかない」
先ほど宝箱からでた木の棒を渡した。勢いよく出された木の棒に驚きながらも両手で受け取ると、もう1人の…緑の髪の男と顔を見合わせると二人とも大笑いだった。
「こ、棍棒じゃ助けられないよ!これじゃとどめを刺すことになるね。回復薬だよ。ポーションとか、何かないの?それとも、楽にしてやれってことですか?」
「ない!!知らないよ!そんなの!」
大人が二人で涙を流し笑いながら渡した木の棒…棍棒を地面に捨てたのを見て、恥ずかしくなったのと、ムカついた拍子で思いっきり地面を踏みつけると、地震のようにダンジョンが揺れた。
「うわ!」
「なんだこりゃ!」
「ば、ばけもの!!いいから逃げるぞ!」
「………!!」
揺れたダンジョンの中、尻もちをついた緑髪の男が血相を変えて水色の髪の男に声をかけた。私は顔を真っ赤にしながら二人を睨みつけ、その場で道を塞ぐように仁王立ちになった。
(ぶっ殺す!!)
パパには人間をむやみに殺したらダメ、と言われてたけど我慢できない。こいつらはここで灰にしてやる…。
それを見た水色の髪の男は、なにかの魔法を使うと魔法陣が現れて二人の姿は一瞬で光に包まれて消えた。転送用の魔法らしい、私は使えないけど…あると便利だな。
消えた二人を見送って少しイライラする気持ちを抑えながら捨てられた棍棒を拾って残されている人間の様子を見に行ってみる。
「おーい?生きてる?だいじょぶかー?」
「…」
呼びかけても返事はない。かといって死んでもいなそう。
「おーい!お前のムカつく仲間、逃げてったぞー!!」
棍棒でつついてみても動かない…。見ている限り、血も出てないし怪我もしてなさそうなんだけどなぁ。
「きゅぴ!」
「す、スライムじゃん!」
棍棒でしばらく人間をつついていると、部屋の隅っこからスライムがでてきた。そのスライムは第一層で逃げていたスライムと違って、あまり弾むことなくコロコロと転がるようにして私の方に来た。
「お、お前、呼んでもないのに来るなんてめっちゃいい子じゃん!どうした!?おいで、おいで!!」
転がってきたスライムに満面の笑みで両手を前に差し伸べる。
警戒しながらも、ゆっくり、確実にスライムはこっちへ向かって来ていた。
来る…来る!…もうちょっと、もうちょっと!!
高鳴る心臓のドキドキを感じながら、スライムが私の手に来るのを待った。
近づいて、少し離れて、近づいて、少し離れて…。その時は来た。
「きゅい!きゅい!!」
初めてスライムが私の両手の上に乗ってくれた!ちょっとひんやりしたその身体。ぽよよんっとしたそのボディ…。愛らしい鳴き声…。どこを見ても素晴らしいペットだ。
「お前、怪我してるのか?」
手の上にいるスライムを眺めていると、薄汚れたところがあった。ぶつかったような、擦れたような…きれいな水色のボディがなんと可哀想な…。
「あいつ等…さっきの人間どものせいか?」
「きゅぴぃ…」
少し悲しそうに身体を動かしている姿を見て、言葉は通じないながらに、なんとなく、なんとなくあいつ等にやられた。と言っているように感じた。
「あのクソ人間ども…」
思い出すだけでもムカつく。せっかく私が初めて手に入れたお宝を困っていたから渡してやったのに、バカにして笑った挙げ句仲間の女を置いて逃げるとは最低なクズどもだ。思い出してもイライラしてくる…。
さっきのバカにされた笑い顔を思い出すと、自然と両手にも力がこもる…。
「ぎゅ…ぎゅぴ!!!!」
ブチっ!!
ボタボタ…。
「あ…」
スライム…握りつぶしちゃった。




