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1話 可愛くない?

ゴツゴツした岩が剥き出しの洞窟。

一度は来てみたいと思っていたある意味憧れだった場所だ。

え?どこかって?

冒険者なら誰もが夢見る場所、ダンジョンだ!

私はその入り口を入ったばかりのところを歩いていて、そいつに出会った。


『きゅぴー!』


緑、赤、水色の丸っこい体でぴょんぴょん飛び跳ねている魔物。スライムだ。

6体くらいだろうか。各々ぴょんぴょん飛び跳ねてぽよんぽよんしている。


「め、めっちゃかわいぃ!!」


私は初めて見たその姿を見てあまりの可愛さに虜になった。

そっと…そぉっと前に進んでしゃがむと、右手を前に伸ばしながら、可愛さでにやけそうになる自分の顔の筋肉を必死にこらえていた。


「す、スライムやん…弱いけどあんなかわいいんだから全然よくない!?」


「きゅぴ…きゅきゅ」


一番手前にいた水色のスライムが全身をぽよんぽよんと揺らしながらゆっくりと進んできた。

自分の鼻息が荒くなるのがわかる。ドキドキしてきた。


「怖くない…こわくないよ~。だいじょうぶだよ~」


緊張でぷるぷると小刻みに手が震えてきた。

もう少しで手が触れそうなスライムに必死に優しい笑顔を送ってみる。


「きゅぴきゅぴ!!きゅぴーー!!」


突然大きな声を出したと思えば、スライムは一斉に逃げ出していった。


「あっ!ちょっと待ってよ!!」


逃げ足が思ったよりも早く、ドンドン散り散りに分かれてダンジョンの中に散らばっていく。

緑…赤…水色…。追いかけながらどのスライムを捕まえたい。もとい触りたいのかと考えていたが、やはりここは王道の水色スライムがいい!

横道に逃げて行く緑や赤には目もくれず、私は水色スライムを追いかけた。


けっこう走ると、少し大きな場所に出た。

ダンジョンなのに、小川が流れていて、太陽…空が見えている。ここは洞窟の外らしい。

私が一瞬部屋の様子を見て周囲を見渡していると、水色スライムはぽよん、ぽよんと大きく弾んでドンドン進んでいた。


「ま、待って!怖くないから!何もしないから!」


大きく弾むスライムを捕まえようと追いかけるも、スライムはすぐに川の中に飛び込んでしまった。


「ど、どこ!?どこ!?」


「…」


返事がない。

川まで走って行ってのぞき込んでみるも、水の色に溶け込んでしまって全くわからない。


「逃げることないじゃーん、せっかく初めて見たスライムだったのに」


私はその場に座って大の字に横になった。


「あーあ。また独りぼっちじゃん。つまんな」


大きなあくびをしながら空を見た。

今日で何日目だろ。城を飛び出したの。勉強をしろ、頭が悪い、ちゃんと勉強しないと後が大変!とお姉ちゃんに言われて嫌になって私は城を飛び出した。いわゆる家出ってやつだ。

いつものお気に入りだったホットパンツとシャツ、ローブを羽織って手ぶらでこんなところまで来てしまった。

お姉ちゃんがあまりにもウザくて家出をしてしまったが、ちゃんとパパには家出するって言ってきたし大丈夫でしょ。帰った時がちょっとめんどくさそうだけど…。


「あー!もうイヤだ!おなか減ったしつまんないし…誰も話し相手にもなってくれないし!鳥も逃げたし、狼も逃げたし、あの豚みたいなのも逃げたし……なんなの!?私なんにもしてないじゃん!」」


ここに来る途中、何回も魔物に遭った。私は一人で旅するのが寂しかったし、誰か話し相手が欲しい、癒しが欲しい!と思って途中で遭遇した魔物全員に手を差し伸べてきたのに、…。


みんな逃げてく。


どうして?殴ってもないし、優しくしてるし、仲良くなろう?って声もかけてる!

それなのにどうしてか魔物みんな逃げてくんだよね。


「はぁー。家出って思ってたよりもつまんな。もう帰ろっかなー。でも…いやだなぁ」


空を見ながら悩んでひたすらにゴロゴロと転がっていると、奥の部屋で太陽に照らされている宝箱を偶然見つけた。

一瞬何かわからなかったけど、それが宝箱ってわかると、私は一瞬で飛び起きて宝箱へダッシュした。


「は、初めて見た!これが宝箱か…。ふぅーん…ふぅーん」


叩いたり、蹴飛ばしてみたり、クルクルと回りを見渡してみたり、臭いをかいだり…。特に何か異常はなさそうだ。昔どっかで、ダンジョンにある宝箱は人食い箱の可能性もあるから調べてから開ける方がいい。と教えてもらった気がする。早く開けたい気持ちを抑えながら、一通り調べ終わって、問題がない事を確認すると私は宝箱を開けた。


ぎぎぎ…


軋む音を出しながら宝箱を開ける…。


「え?え?え?」


宝箱を開けると木の棒が入っていた。

そっと持ち上げてみると、片手で握れるくらいの太さ。何かを殴るにはちょうどいい大きさの木の棒。


「これってなに?人間は木の棒が宝なの?は??は??」


何度かブンブンと振り回してみるも、お金が出てくるとか、アイテムが飛び出してくるとかという事はなかった。単純に木の棒らしい。


「はずれやん」


ガックリと肩を落として木の棒で地面に落書きをしていた時に、どこかで音が聞こえた。


(ぶつかっているような…人の叫ぶ声?なんだろう?)


耳を澄ましても小さな音は反響してどこから聞こえているのかがわからなかった。でも、前か後ろならわかる。


「もっと前だ!」


木の棒を持って私はダンジョンの奥へ向かった。




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